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別居することで離婚が成立するかどうか(離婚ができるかどうか)を考えるには,まず,どのような場合にどのような手続きで離婚が成立するのかを知る必要があります。
日本の法律の下では,離婚が成立する手続きとして,以下のものがあります。
この中で,両方の合意なく離婚となるのは,判決離婚だけ,つまり,裁判になって裁判所が判決を出した場合だけです。
したがって,別居期間が何年になろうとも,合意も裁判もなく離婚が成立することはありません。
離婚の裁判を起こしたときに裁判所が離婚を認める判決を出す場合の事由が,民法770条に定められています。以下の5つです。これらを「離婚原因」と言っています。
これら離婚原因の中には,「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」というものがありますが,別居期間が何年というものはありません。
別居期間が長いということに関係ある離婚原因として「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」というものがあるのみです。
平成8年に,法制審議会が,法務大臣からの諮問に対し,離婚制度の法改正を答申しました。
離婚原因に「夫婦が5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき」というものを加えつつ,「配偶者又は子に著しい生活の困窮又は耐え難い苦痛をもたらすとき」や「離婚の請求をしている者が配偶者に対する協力及び扶助を著しく怠っていることによりその請求が信義に反すると認められるとき」には,裁判所が離婚を認めないことができるとするものでした。
答申から25年以上が経過していますが,この案の法律が成立する見通しはありません。
したがって,現時点では,別居期間5年以上が離婚原因となるわけではなく,「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という離婚原因にあてはまるかどうかを裁判所が判断するときに,別居期間が考慮されることになります。
夫婦のうち,離婚原因を生じさせたことについて主に責任のある方を「有責配偶者」と言います。
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という離婚原因が存在する場合でも,その事由を生じさせた方が離婚請求をして,離婚が簡単に認められるようでは,社会正義に反します。
そのため,判例では,有責配偶者からの離婚請求は原則として認められないものとされています。
例えば,自分が不貞行為をして夫婦関係を悪化させて「婚姻を継続し難い」状態にしておきながら,「婚姻を継続しが難いから離婚したい」と離婚を求めるのは正義に反するので,許されないということです。
有責配偶者からの離婚請求が認められるのは,もともと社会正義に反するものが,社会正義に反すると言えない状況にまで変化したような例外的な場合となります。
最高裁判所は,「夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び,その間に未成熟の子が存在しない場合には,相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り,当該請求は,有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできないものと解するのが相当である。」(昭和62年9月2日最高裁判決)という判断をしています。
つまり,「夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと」をクリアすると,有責配偶者からの請求でも,離婚が認められる可能性が生じることになります。
この昭和62年の最高裁の判決の事例は,別居期間36年の事例でした。
その後の裁判例を見ると,他の事情とのかねあいもあって,別居年数だけを取り上げて何年経ったら離婚が認められるのかをお話しするのは難しいのですが,概ね,次のような状況となっています。
もっとも,別居年数だけを見るわけではありません。最高裁判決は,有責配偶者からの離婚請求を認めるかどうかを判断するにあたって,次の事情を考慮する必要があると言っています。
この5番目,時(別居期間)の経過によって諸事情がどれだけ変化(風化)したかも大事になります。
不貞行為後に家を出て行ったような場合でも,①謝罪して生活費(婚姻費用)を支払い,責任を果たし続けた10年間の別居期間と,②謝ることも無く逆に「おまえが悪い」と責任をなすりつける発言をし,生活費も払わない10年の別居期間では,①の方が社会的な評価は良くなり,離婚が認められやすい方向に働きます。
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」の発生について,夫婦のどちらに主に責任があるか定まらないことがよくあります。性格の不一致で一方の責任とは言えない場合,どちらも悪く夫婦両方共に責任がある場合などです。
有責配偶者からの離婚請求でなければ,離婚を認めることが社会正義に反するかどうかという裁判所の考慮はありません。
そして,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という離婚原因があるときに,離婚が認められることになります。(個人的な判断基準ではなく)社会一般的に見て修復が無理という事情が証明されれば,裁判で離婚が認められるということになります。
別居期間に関しては,長ければ長いほど,修復できなかった期間が積み上がることになるので,結果として「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があると認められやすくなります。
5年以上別居して修復に進まなかったのであれば,特殊な事情がない限り,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は認められるでしょう。
別居期間は説明・証明しやすいのですが,別居期間だけで,離婚が認められるかどうかが決まるわけではないので,別居期間だけを気にしすぎるのは問題です。
夫婦が別居するまでに至る過程には,同居を続けられないような事情がありますし,別居期間中に修復できなかった経過の中には,修復が困難な事情があります。
こうした事情を適切に説明・証明すれば,別居期間が短くても「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められることが多いものです。
当事務所で取り扱った事案でも,双方共に「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を発生させた責任があり,若干,訴えられた方の責任が重いと感じられるケースで,1〜2年の別居期間でも離婚が認められたことがあります。
「婚姻関係を破綻させた原因」・「別居になった原因」は何でしょうか,相手方の責任の程度はどうでしょうか。
離婚に詳しい弁護士は,ご依頼者から個別の事情をお聞きして,こうした事情を見つけ出し,主張・証明していく作業をします。
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