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「裁判所HPより詳しい離婚調停解説」連載の第16回。
というご質問がよくあります。
離婚調停手続きが離婚成立で終わるとは限りません。
実際,離婚調停手続きの半数程度は,離婚成立以外の終わり方をしています。
いつ,どのような場合に離婚調停が終了となるのか,どんな終了方法があって,どの終了方法をとったときに離婚手続きや生活自体が自分の望む方向へ進んでいくのか,などが分からなければ,どの「終わり方」をめざしていけばいいのか分かりません。
最善の終わり方ができないときであっても,次善の終わり方をめざさなければなりません。次善の終わり方を知らないのでは,これもできません。
「離婚調停の終わり方」は,自分である程度コントロールできるものです。
そのために,離婚調停手続きの終わり方の種類,いつどのようにして離婚調停が終わるのかを理解しておきましょう。
離婚調停の終わり方は,調停の席で何らかの合意をして調停が終わる場合(調停成立)と,そうでない場合に分けられます。
離婚調停は,すべての争点について申立人と相手方の合意ができれば,調停成立により終了します。合意内容は,調停調書に記載され裁判所に保管されます。
(なお,調停成立までにかかる期間については,連載第3回「離婚調停手続にかかる期間は?どんな場合に長期化するのか?」をご確認ください。)
合意がなされるのは,調停離婚成立のときだけではありません。離婚調停の正式名称は「夫婦関係調整調停」ですから,離婚ではない形で夫婦関係を調整する合意ができます。
離婚する場合は,離婚することとその条件が合意できれば終了となります。
離婚しない場合には,離婚しないこととそのための条件が合意できれば終了となります。
このような調停成立による離婚調停手続き終了には,大きく分けて次の4つの種類があります。
調停で合意はできていないけれど,これ以上続けても,離婚そのもの,または離婚の条件について合意ができないと裁判所が判断した場合には,離婚調停手続きは不成立(不調)により終了します。
また,離婚調停の申立てを取下げたり,当事者の死亡などにより,裁判所が離婚調停を続ける必要がなくなった場合や調停手続きをすること自体が不適切と裁判所が判断する場合にも,調停手続きは終了します。
これらの場合には,離婚調停の場で何の合意もせずに,離婚調停手続きが終わることになります。
調停成立によらない離婚調停手続き終了には,大きく分けて次の4つのパターンがあります。
申立人と相手方がめざしうる「終わり方」は次の通りということになります。
離婚調停が取下げや不成立で終了しそうなとき,婚姻費用の分担請求調停がなされていないと,何も決まらないまま別居が続くことになります。
婚姻費用の分担請求調停がなされていると,離婚調停は不成立だが別居期間中の婚姻費用の支払額の合意をする,離婚調停は不成立だが別居期間中の婚姻費用について裁判所に審判で判断してもらう,等の形の選択肢が増えることになります。
別居期間中の生活費が必要なときは,連載第7回「婚姻費用分担請求調停を離婚調停と同時に申立てるか?」をご覧いただき,追加で,婚姻費用の分担請求調停の申立てをすることも検討して下さい。
離婚調停手続きの中で,事実上,別居期間中の婚姻費用の分担について話をしていたような場合,離婚調停が取下げや不成立で終了してしまうと,婚姻費用について話し合う場所が無くなってしまいます。離婚調停終了後に婚姻費用の話し合いの場を残すには,婚姻費用の分担請求調停の申立てをするしかありません。
離婚調停と婚姻費用の分担請求調停は別の手続きですので,婚姻費用の分担請求調停をしているときには,離婚調停の終わり方とは別に婚姻費用分担請求の調停の終わり方も意識する必要があります。
特に,離婚調停が続いている間に婚姻費用の分担請求調停を先に終わろうとするとき,離婚調停が調停不成立となるとき,申立人が離婚調停を取り下げるときが,婚姻費用の分担請求調停の終わり方を考えるべき大事な場面になります。
婚姻費用の分担請求調停の「終わり方」により,申立人・相手方双方の経済的余裕・負担感が異なりますので,その後に進行することのある離婚自体の調停・裁判にも影響を及ぼします。また,子どもの生活への配慮の程度が異なりますので,養育費・面会交流の調停・審判にも影響を及ぼします。
離婚調停が何らかの形で調停成立に至ったときは,離婚調停の方で婚姻費用に関することも合意してしまうことが多くなります。方法として,2つの調停事件を1つの事件に併合してその事件で婚姻費用の分担方法も併せて調停成立とする方法も,離婚調停の調停だけを成立させて婚姻費用の分担請求調停は取下げで終了とする方法もありますが,結果は同じですので,裁判所の指示に従えば良いことになります。
申立人と相手方が,婚姻費用を分担することとその額の合意ができたときには,調停成立により終了します。
調停の場で合意をし,合意内容(調停条項)を調停調書に記載してもらいます。
調停調書には強い効力があり,合意内容(調停条項)が守られない場合には,給料を差押さえるなどの強制執行手続きをとることができるようになります。
調停成立後,決めた金額を支払ってもらえない場合,家庭裁判所から事情を聞いて支払うように促してもらう「履行勧告」という方法をしてもらうこともできます。
離婚調停と婚姻費用分担請求の調停が同時に申立てられている場合,同じ期日で進めていくことが一般的ですが,離婚調停の話合いが長引きそうな場合,生活費(婚姻費用)を決めてもらえないと生活が困窮しそうな場合,離婚調停に先行して,婚姻費用の合意だけを決めることがあります。
離婚調停よりも先に決めてもらいたい場合は,はっきりと積極的に求めましょう。
婚姻費用を分担すべきかどうか,分担すべきとしてもその金額についての合意ができないと裁判所が判断したときには,調停は不成立となります。
婚姻費用の分担請求調停が不成立となったときには,自動的に,審判手続きに移行します。審判手続き上に必要な手順を経た上で,裁判官が,婚姻費用の分担をすべきか,支払う金額はいくらが相当か,について「審判」の形で裁判をします。審判に不服の場合には,高等裁判所に対して不服申立(即時抗告)ができます(2週間の期間制限あり)。期限内に即時抗告が無かったとき,高等裁判所が即時抗告を棄却したときは,その審判が確定し,強制執行も可能となります。
到底,婚姻費用の分担の合意ができなさそう,と判断する場合には,審判になった場合に婚姻費用の分担は認められるか,その金額はいくらになりそうかなどを予め弁護士に相談するとよいと思います。調停を続けるよりも,審判にした方が良い結果が得られそうだという判断になれば,不成立にしてくれるよう裁判所に希望し,早期に審判手続きに移行してもらっていいでしょう。
申立人は,婚姻費用の分担請求調停申立を取り下げることができます。取下げがなされると,調停が終了します。
調停外で婚姻費用を支払ってくれるようになったとき,審判を経ても婚姻費用の分担請求が認められない可能性が高いとわかったときに,取下げることがあります。
取下げた方がいいか,取り下げてもいいのか,という判断について迷うことがあれば,弁護士に相談しましょう。
(弁護士 木下貴子)
弁護士木下貴子が,このページ「離婚調停はいつどのような形で終わるのか?」をYouTubeでお伝えしています。