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最終更新日:2022年10月16日
こんなとき,どう計算するの?「養育費算定表では分からない養育費の計算方法」シリーズ第6回
現在,裁判所の調停・審判では,「養育費算定表」に年収をあてはめて,簡易に養育費が算定されています。
「養育費算定表」は,ウェブで簡単に手に入るのですが,実際の事例では,養育費算定表を見ても,どのように計算したらいいのか分からない場合があります。
このような場合にヒントとなる考え方を連載してお伝えしています。
第6回のテーマは,子供が持病・障害がある場合,私立学校・塾・浪人中で予備校に通っている場合など「教育費・医療費に特別な事情がある場合の計算方法」です。
子供に持病・障害がある場合には,成人になってからも養育費が認められることがあります。裁判例でも,自閉症的症状があり,生来病弱で,入退院を繰り返し,現在も自宅で療養生活を送っているような事例で認めている例があります。
父母は,「未成熟子」に対して,扶養義務がありますので(民法877条),持病・障害のある場合には,成人になって扶養を必要とする「未成熟子」と考えられています。
子供に持病・障害があることによる支出に必要性が認められる場合には,養育費の加算が認められることがあります。義務者(養育費を支払う義務のある側)が支出に承諾していたか否か,義務者の年収に照らし適正な支出額かもポイントとなります。
婚姻費用の場合ですが,知的障害の軽度発達障害児専門の学習塾へ月42,500円の費用をかけて通塾している事例で,以前から通っていてそのときに義務者も承諾していたこと,職員や専門家の意見により必要性もあると認められることなどから,加算を認めた例があります。
通常の医療費については養育費の中に含まれていると考えられますが,特別な病気により高額の医療費の負担がかかるような場合には,別途加算が認められると思われます。
子供が生育してきた家庭の経済的・教育的水準に照らし,進学等が相当な場合には,大学生・浪人の間の養育費が認められることがあります。
裁判例でも,父は医師,母は薬剤師という家庭の事案で,現実に子供が大学に進学している場合に,認められている事例があります。
子供が幼い頃に養育費を決める場合には,将来の進学予定などがはっきりと分からないため,大学や大学院を卒業することを前提に養育費の支払い終期を裁判所に認めてもらうことは難しいです(父母で話し合って決めることはできます)。以前の成人年齢であったことから,一般的には,20歳まで認めるという取扱いが今でも多いと思われます。法改正により,令和4年4月1日以降,成年年齢が18歳になりましたが,養育費は20歳まで認めるという取扱いとなることが予測されており,今後も,そのような取り扱いが継続される,と思われます。
また,22歳まで大学に通うことになったというような場合には,それが確実になった時点で,養育費の終期の変更を求めれば,認められる可能性があると思われます。
高校卒業後に就職する,大学進学前に浪人する,大学進学後に留年するなどの事態を想定せず,「大学卒業するまで」養育費を支払う合意をした場合,子供さんが,進学しなかったり,何年も浪人したり,留年したりしたため,いつまで払い続けなければいけないのかと問題になった事例があります。このような場合もあることを頭に入れて,「何歳まで」と決めておくなど,注意して養育費の取り決めをするとよいでしょう。
算定表では,公立学校に通うべきことを前提に子供の生活費を見込んでいるので,私立学校に通っている場合には,状況により加算が認められることがあります。
裁判例では,義務者も私立学校への進学を承諾していたという事例で加算を認めたものがあります。
基準は明確ではありませんが,夫婦の経済状況,別居時点で既に私立の学校に進学していたのかどうか,別居後の進学であっても,進路について予め話があったのか(予測できたか)などによって,加算が認められるかどうかが決まると思います。
塾・習い事・予備校の費用がかかることによる養育費の加算は,一般的に非常に難しいといえます。
裁判例でも,私立学校の費用については加算したものの,塾の費用については加算していない例があります。
全く加算の余地が無いわけではありませんが,「学校の費用」に比べてより,厳しい基準で判断されることになります。義務者の承諾,収入,学齢,地位,従前の生活状況,現在の生活状況などから,負担させる余裕があると言えるような場合となると思われます。
一般的には,養育費算定表の養育費は,入学金,学童保育料,学用品・制服などの購入費が想定されて算定されているため,別途請求することはできません。
もっとも,父母の間で,これらの費用を,月ごとの養育費とは別に支払う合意をすることはできますので,必要があればそのような合意をしておくと良いでしょう。
この場合に,養育費とは別に「その他一切の教育に関する費用」を支払うと決めた事例で,塾・予備校などの費用も支払うのか,給食費も養育費とは別に支払うのかなどの争いが生じた事例があります。その事例では,塾・予備校などの費用も支払うべきとされています(給食費は,月ごとの養育費に含まれており,別途支払わなくて良いとされました)。義務者としては,学校に支払うべきお金は覚悟していたとしても,塾・予備校費用の支払いまでは考えていなかったとも思われますので,「合意の文言」があいまいな文言とならないよう,注意が必要です。
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