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最終更新日:2022年3月12日
「裁判所HPより詳しい離婚調停解説」連載の第24回
という,ご質問があります。
離婚調停で離婚が成立した瞬間に,法律上,夫婦の関係は解消します。
しかし,裁判所は,離婚調停成立の調停調書を作ることまでしかしてくれません。
その後にしなければならない手続きがあります。期限がありますので,期限を守って手続きしましょう。
連載第23回「離婚調停成立時の注意点」の通り,調停条項が「申立人と相手方は,本日,調停離婚する。」の場合には申立人が届出義務者です。「申立人と相手方は,相手方の申し出により,本日,調停離婚する。」の場合は,相手方が届出義務者です。
離婚調停成立の日から10日が期限です。調停調書の正本・謄本を受け取ってからの期限ではありません。調停成立の日が1日目で,10日目までに届け出る必要があります。期限を過ぎると,過料という金銭的制裁を受けることがあります。10日目が役所の閉庁日(土日祝・12月29日〜1月3日)の場合は,翌開庁日が期限となります。途中にどれだけ休日が含まれていても関係ありません。
年末やゴールデンウィーク前に離婚調停が成立すると,期限までに役所がやっている日がほとんど無いということがあります。令和元年12月27日(金曜日)に離婚調停が成立すると,令和元年12月28日(土曜日)から令和2年1月5日(日曜日)まで裁判所も市役所もお休みですが,10日目が令和2年1月5日(日曜日)となり,この日は日曜日ですから,翌開庁日の令和2年1月6日(月曜日)が届出期限です。
正当な理由があれば過料の制裁は免れますが,法律上の義務を最優先に行動すれば間に合う(裁判所に調停調書謄本を取りに行ってその足で市役所に行けば間に合う)ことがほとんどです。
裁判所が,離婚調停成立の日に調停調書を作ってくれることは少ないので,作ってもらってから届けるまでは,タイトなスケジュールとなります。本籍地以外に届け出をする場合には,戸籍謄本も必要になりますので,予め準備しておきましょう。
本籍地か届出人の所在地の市町村に届け出ます。住所地の他,一時的な滞在地も「所在地」に含まれますが,本籍地か住所地の市役所・町村役場に届け出ると考えておけば良いでしょう。郵送でも可能です(届出期限までに届く必要があります)が,この種の届出書は,記載ミスが生じがちなので,役所に出向くのが無難です。
証人は不要です。
また,夫婦双方が署名する必要はなく,届出義務者の署名だけで大丈夫です。
令和3年9月1日から押印が任意(不要)になりました。
通常は,届出用の省略謄本(届出に必要な離婚,親権の記載だけがあるもの)の発行を受けます。離婚調停成立時に申請しておきましょう。手数料を収入印紙で納付する必要があります。収入印紙は,郵便局か,印紙を扱っているコンビニなどで買えますが,裁判所の近くに売っているところがあるとは限りません。
書記官が調停調書の原本の作成を完了しないと謄本を作ることもできませんので,離婚調停成立後すぐに調停調書謄本の発行を受けられるわけではありません。調停調書謄本ができあがるのは,離婚調停成立の次の平日,次の次の平日といったところです。
完成次第郵送してもらうか,完成したら電話連絡をもらって裁判所まで取りに行くかの選択をすることになります。裁判所が,午後に作った郵便物を郵便局に渡すのは翌営業日,というのは普通のことです。離婚調停成立から調停調書謄本完成までに2営業日,郵便局に渡るまでに1営業日,その2日後に郵便が自宅に届くという状況は珍しくありません。郵送してもらうときには,祝日が無い週でも1週間後(調停成立の日から起算して8日目)に届くという状況を覚悟しなければなりません。
本籍地以外で届け出るときには,戸籍謄本(全部事項証明書)が必要となります。離婚調停の申立人は,申立のときに戸籍謄本(全部事項証明書)を取得しているでしょうから,同じことをします。本籍地が遠いと,郵送で取り寄せることになります。詳しくは,連載第8回「離婚調停申立に必要な戸籍・年金情報・印紙・切手の準備法」をご覧下さい。
相手方の場合は,初めての経験でしょうが,急いでやらなければなりません。
離婚調停成立後に郵送で取り寄せるのであれば,本籍地の役場宛の発送も返信用封筒も速達扱いとすることをお勧めします。
離婚調停の成立が見込まれる場合には,離婚調停成立前に事前に用意しておくという手段もあります。
婚姻のときに氏(姓・苗字)を変えた側が婚氏(結婚していた間の姓・苗字)を使い続けたい場合は,届出が必要です。
離婚から3か月以内に届け出る必要があります。離婚届の日ではなく,離婚調停成立の日から3か月であり,離婚調停成立の日の翌日から数えます。
離婚届と同時に戸籍法77条の2の届をすると,旧姓の戸籍を経ること無く,婚氏で新たな戸籍が作られます。
調停条項に年金分割の条項がある場合も,年金事務所・共済組合で手続きをしなければ,年金分割の効力は生じません。
離婚調停の対象とならない年金分割(3号分割)の期間がある場合にも,年金分割の手続きが可能です。
平成27年10月に被用者年金が一元化されましたので,年金事務所・共済組合のいずれでも手続きが可能です。
年金分割の手続きの期限は,離婚成立から2年以内です。離婚届の日ではなく,離婚調停成立の日から2年です。
離婚前の配偶者が死んでしまうと,離婚から2年を待たずに,死亡から1ヶ月以内が期限となります。死亡の事実を知らなくても,期限になります。2年と言わずに,早めに手続きをしておくべきです。
離婚によって子供の氏(姓・苗字)が変わることはありません。親権に関係なく,子供の戸籍はそのままで,氏もそのままです。
婚姻のときに氏を変えた側が子供の親権者となった場合でも,離婚届を出したときには,自分だけが戸籍から抜けることになります。
子供を自分の戸籍に移したいときも離婚届と同時に移すことはできず,その後に,新しく作られた自分の戸籍の戸籍謄本(全部事項証明書)と子の戸籍謄本(全部事項証明書)を準備し,家庭裁判所で子の氏の変更の許可の審判を得て,市役所・町村役場に「入籍届」を提出する必要があります。入籍届の記載方法については,札幌市のサイトにわかりやすい記載例があります。
離婚調停成立時に,家庭裁判所で,予め「子の氏の変更許可」の申立手続書類をもらっておくと良いでしょう。
配偶者の健康保険の扶養家族となっていたとき,離婚調停が成立したときに扶養家族の資格を失います。保険証を返す前でも,離婚届前でも,保険証は効力が切れているので使えません。国民健康保険加入手続きか,就職しているならば自分の職場の健康保険への切替手続きを取る必要があります。健康保険同士の切替えの場合,双方の会社の保険と担当者が直接話をして,切替手続きをしてくれることもあります。
また,すぐに新しい保険証が発行できない場合には,「健康保険被保険者資格証明書」を会社に記載してもらうことで,保険証の代わりとして医療機関で使えますので,すぐに医療機関で使用する必要がある場合などには,会社に相談して下さい。
健康保険の扶養家族から国民健康保険に切り替える場合には,(元)配偶者の職場から資格喪失証明書を受け取ることが必要となります。
なお,離婚前の別居期間中に,保険の切替えをする場合もありますが,別居時点に遡って切替えをすると,別居後から変更時点までに病院で使用した医療費相当分を返さなければならないなど,トラブルになることがあります。会社,相手方とも相談しながら,トラブルを防いで円滑に切替えをするようにしましょう。
国民年金の3号被保険者であり自分で年金保険料を納めていなかった場合,3号被保険者の資格を失いますので,国民年金の1号被保険者への変更手続きが必要となります。
この被扶養配偶者でなくなったことに係る届出は,健康保険に係る「健康保険被扶養者(異動)届」と重複するものなので,この資格喪失証明書を利用して,同時に手続きすることが可能です。
(弁護士 木下貴子)
弁護士木下貴子が,このページ「離婚調停成立後の手続きと期限」をYouTubeでお伝えしています。