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現在の日本の民法では,未成年の子供の両親が夫婦として婚姻しているときは,父親(夫)と母親(妻)の双方が,子供の共同親権者となっています。
海外には離婚後も共同親権者のままとする制度の国もありますが,日本の民法は,未成年の子供の両親が離婚するときの子供の親権者について次のように定めています。
「双方又は一方を親権者と定める」ということは,次の3つの選択肢があることになります。



親権と子供の住居の関係は,例外はありますが,次のとおりとなります。
そのため,親権・同居の組み合わせとしては,次の4つの選択肢があり,父母の離婚のときには,この4つの中から1つを決定することになります。
子供が父親と母親のどちらと同居をするかを決めてから,単独親権とするか共同親権とするかを決めるのが,通常の決定順序となります。
子供が父親と同居して父親と一緒に生活するか,それとも母親と同居して母親と一緒に生活をするかの決定の方が,親権者の決定よりも,子供にとって重要であるからです。
離婚後に子供が父親と母親のどちらと同居をするかを決める方法に関係する民法の条文は次のとおりとなっています。
子供が住む場所は,この条文の「その他の子の監護について必要な事項」の1つです。
法律上は,子供が父親・母親のどちらと同居するか自体を決めるのではなく,子供が住む場所を決めるときに,父親の住所と同じ場所に決めたら父親と同居と決めたことになり,母親の住所と同じ場所に決めたら母親と同居と決めたことになるという仕組みになっています。
まずは,父母が,この条文にしたがって「子の利益を最も優先して考慮」して協議し,子供が父親と母親のどちらと同居をするかを決めます。
協議が調わないとき,協議できないときには,家庭裁判所に決めてもらうことになります。
家庭裁判所に決めてもらうことになったとき,家庭裁判所も,子供の利益を最も優先して考慮して決定します。家庭裁判所は,最近までは,次の各要素を総合的に考慮して決定すると言われていました。
令和6年に,裁判所の中で,次の4つのポイント(着眼点)を総合的に考慮して決定するという考え方が提唱され,この考え方を採用する裁判官が多くなってきています。
子供と同居する親が決まったら,次に,父母を共同親権者とするか,子供と同居する親だけを親権者(単独親権者)とするかを,父母が協議して決定します。
協議が調わないとき,協議できないときは,家庭裁判所に決めてもらうことになります。

裁判所が,父母を共同親権者とするか,同居する親を単独親権者とするかを決定するときについて,民法は次のように定めています。
条文の「一」「二」と「その他父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」を「必要的単独親権事由」と呼んでいます。これらのいずれかに該当すると,「父母の一方を親権者と定めなければならない」ことになっていますので,裁判所は,必ず,単独親権者とします。
必要的単独親権事由に該当しないときは,裁判所は,父母を共同親権者とするか,子供と同居する親を単独親権者にするかについて,「子の利益のため,父母と子との関係,父と母との関係その他一切の事情を考慮」して判断します。
共同親権が原則,単独親権が例外というわけではなく,どちらが子供の利益になるかという観点から判断されます。
裁判所の運用や裁判官個々人の判断になり,どのような場合に父母が共同親権者とされるのかの予測は難しいところです。
もっとも,父母を共同親権者とすることが子供の利益になるのは,基本的には父母が協力して円滑に子供のことを決めていけると言える場面であるところ,子供と同居することになる親が他方の親と共同親権者となることに反対しているようなときは,裁判所が無理に共同親権者と定めても父母の協力が見込めないことが多く,単独親権者とするより共同親権者と定めることの方が子の利益になると判断されることは少ないのではないかと思います。
この点について,法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」3-11では,以下の5事例を父母の合意ができなくとも子の利益のために父母を共同親権者とすることが望ましい場合に該当し得る事例として挙げています。
この事例を大きく分類すると,子供と同居する親だけに親権行使をさせることが子の利益の観点で不適切,不安な場合(事例1,事例2),支援があれば協力関係を築くことができる場合(事例3,事例4,事例5)が考えられていると言えます。
共同親権のメリットとして,「子供が両親から愛情を受けられる」「子供と別居する親にも親としての自覚が高まり,養育費の支払いが促進される」などと言われることがありますが,そのような一般的なメリットだけでは足りないと考えられます。
そのため,子供と同居する親が共同親権に反対している場合で,子供と同居する親の監護養育に特に不安がなく,支援があっても父母の協力が困難な場合には,裁判所が父母を共同親権者と定めることになりにくいでしょう。
事例1~5は,「子の利益のために父母を共同親権者とすることが望ましい場合に該当し得る」事例として挙げられているものであり,「該当する」事例と説明されているわけではありません。該当する場合も該当しない場合もあることになります。
事例1,事例2では,無理に父母を共同親権者と定めても,円滑に協議して子供のことを決めることは難しいと予測されます。父母を共同親権者とすることが望ましいのは,父母間の対立,紛争が生じるおそれなどのデメリットを考慮してもなお,他方の親を共同親権者として関与させることが子の利益になるという場合になるでしょう。
事例3,事例4では,父母に支援者・支援機関の利用を強制できるわけではなく,父母の双方に支援者・支援機関を利用する態度がない限り,父母を共同親権者としても子の利益にならないことから,現実には,子の利益のために父母を共同親権者とするのが望ましいと言えるまでの状況になることは少ないでしょう。
事例5は,調停手続で,裁判所や代理人弁護士の関与により父母が子供のために協力するようになったとしても,裁判所や代理人弁護士の関与がなくなると対立が再発する可能性が相当程度にありますので,裁判所や代理人弁護士の関与がなくなっても安心な程度に改善した場合に限られるでしょう。
子供の意向は,「子の利益のため,父母と子との関係,父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない」の「父母と子との関係」として考慮されることになります。
裁判所の運用や裁判官個々人の判断になりますが,子供の年齢が高いほど子供の意向が重視され,15歳以上の子供が真意で反対しているときには,子供の意向どおりの判断になると考えられます。
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