ご予約・お問い合わせはTEL.0572-26-9852
〒507-0032 岐阜県多治見市大日町21 大日ビル3号
(多治見法人会「法人会だより」90号から引用)
多治見法人会のウェブサイトの活動報告でも,ご紹介いただいています。
ご相談は要予約,初回相談料は5500円(30分・消費税込)で行っております。
弁護士への依頼をご希望の方には,ご依頼の内容に応じた費用のご説明をさせていただきます。費用をご了承いただき,委任の契約をした場合にのみ,手続きを依頼する費用が発生します。(事件依頼の手順については,「事件依頼の手順」のページをご覧ください。)
相談のみでも結構です。
お気軽にご相談ください。
弁護士は,全体像を把握した上で,自らの得意分野である法律分野の問題は自ら対応し,税務・会計分野の問題は他の専門家と連携することにより,円滑・確実な事業承継を支援します。
当事務所では,親族内承継・親族外承継ともに取り扱っています。
第三者によるM&Aについては,譲受先候補者探しは,M&A会社などを利用することになりますが,その準備やM&A契約内容に関するアドバイスができます。
法律分野の問題としては,たとえば,次のものがあります。
事業承継を進める第一歩は,承継方法の選択です。「誰に」承継するのか,親族なのか,親族以外なのか,親族以外の場合,従業員なのか,全く外部の第三者なのかなどの違いがあります。以下のような事業承継の実態,違いを考慮しながら方法を決めていきましょう。
事業承継には,大きく分けて,
があり,親族外承継の中に,
の形態があります。
その時期・方法の選択については,別記事「事業承継4つのポイント」に詳しく解説していますので,参考にしてください。
以前は多くの中小企業で息子,娘が事業承継していましたが,今は半数以下に減っています。
実態として,親族に承継者がおらず,親族外承継(他の役員,取引先への承継,M&Aなど)を検討する必要がある中小企業も多くなっています。
後継者が決まらない,決められないときにも,とりあえず取りうる対策があります。
詳しくは,別記事「後継者が決まらない中小企業が60歳から始める事業承継対策」をご覧ください。
事業承継の方法によって,取るべき対策も異なります。ここでは,その点を見ていきましょう。
法務課題解決の対策は,親族内承継と親族外承継で共通する対策もありますが,親族内承継の方が,対策の必要性が高く,対策方法の種類が多いため,事業承継方法による対策の違いと,親族内承継特有の対策について知っておく必要があります。
事業承継対策と言われるものの中には,
があります。
親族に適切な後継者がおらず,親族以外の者に会社を引き継いで(株式の買取りであったり,会社の合併であったりします)もらおうとすれば,経営者が生きているうちに株式を譲渡するわけですから,相続税対策,つまり,株式の相続税評価額を下げるという対策には全く意味がありません。むしろ,会社の株式の価値をできる限り高く評価してもらうことが必要となってきます。
親族以外の者に会社を引き継いでもらおうとしても,国内の株式会社では,法律に従った株主名簿を備え付けていない,株式が適法に譲渡されていない,形だけの株主がいるなどの問題点を抱えていることがよくあります。
定款上株券を発行することになっている会社では,株券を引き渡さなければ,株式を譲渡したことになりません。
実際には出資していない親族が,株主ということになっているような場合もあり,本当の株主は誰かという問題も生じます。
適法に株主総会を開催していないため,代表取締役・取締役が有効に選任されているといえない場合もあります。
出資者(株主)の地位を確実に承継できないような場合は,会社の買収をしてもらえない,買収してもらえたとしても安くしか評価してもらえない,ということになります。
また,代表者個人の財産が会社の事業に用いられていたり,会社の財産が代表者の私用に用いられているような実態があっては,会社を代表者一族から切り離して買収してもらうことができません。
このように,親族外承継でも,会社法上の問題点,財産上の問題点を,解消していく作業が必要となります。
親族内承継では,税対策(相続税対策・株価対策)と法務課題解決の対策の両方ともが必要となります。
株価対策は,税負担を軽減するための対策であり,「株式の相続税評価額を下げる」方向となります。
このように,親族内承継は,税対策(相続税対策・株価対策)と法務課題解決の対策の両方が必要となります。
しかも,法務課題も,相続問題がからむため複雑となります。
事業承継対策は,相続税のことだけを考えるのであれば,税務の専門家である税理士が得意とするところですが,弁護士は,課税をふまえた上で,法的な紛争を防止する対策(法務課題解決の対策)の構築を支援します。
法務課題解決の対策を怠ったときに生じうる法的トラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。
事業承継の課題の一つである経営権≒株式の承継について,問題となる事例を考えてみましょう。
株式会社○○商事 総株式数100株
代表取締役のAが60株,後継者予定の長男Bが40株所有
この状態で,Aが亡くなりました。
相続人はAの妻C 長男B 二男D の3人です。
この場合,Aの持っていた株式60株は,どうなるのでしょうか?
妻Cの法定相続分は,2分の1なので,30株,長男B,二男Dの法定相続分は,2分の1×2分の1=4分の1なので,各15株ずつ取得する。
その結果,Bは元々持っていた株式40株と合わせて55株,妻C30株,二男D15株となり,後継者Bは過半数の株式を取得し,会社の意思決定をできる・・・と思いませんか?
ところが,実は,判例上,そのようには考えられていないのです。
60株は分割されるわけではなく,一株ずつを妻Cが2分の1の割合で,長男B,二男Dが各4分の1の法定相続分の割合で60株分,共有(準共有)することになります。
この場合,過半数の賛成で代表者を決め,その代表者が60株分の株式の議決権を行使できることになります。
つまり,後継者予定の長男Bが反対しても,妻Cと二男Dが賛成すれば,60株=会社の総株式の過半数の議決権が行使でき,取締役の選任,解任などができてしまうのです。
例えば,妻Cが長男Bと同居していたけれど,Bの妻とうまくいかず,B夫婦は出て行くことになり,Bに対しては良く思っていない一方,その後,深く交際するようになった二男Dの妻との関係は良好で,会社についても,Dにやっていってほしい,などと思っていると,本当にこのようなことが起こりかねないことになります。
この場合,長男Bが株式を取得しようとすれば,妻Cや二男Dと遺産分割協議をしなければなりません。仮に了解してくれたとしても,法定相続分を前提として話合いをするため,取得する株式の価格に相当する代償金などを支払うことになるでしょう。
また,そもそも,二男Dが代表者となりたいと思っている場合には,合意自体が困難となります。遺産分割協議には長期間かかったものでは,10年もかかるケースもあり,経営に多くの支障が生じ得ます。
もし,Aとしては,従業員や今後の会社の展望のため,Bに承継させたいと考えていた場合には,生前に「遺言書」を書いておくことが不可欠だったことになります。
では,株式の準共有状態を避けるため,遺言書を作成したケースで,次の問題を考えてみましょう。
親族内承継の典型的なケース,株式会社を後継者である長男へ承継させる場合を考えてみます。
「遺言者の有するすべての財産を,遺言者の長男○○に相続させる」という遺言書を作成したとしましょう。
遺言書があったとしても,法定相続人には,法定相続分の2分の1が遺留分として保障されています。遺言により取得できる遺産が法定相続分の2分の1未満となる場合には,法定相続人は,遺留分侵害額請求権を行使することにより,遺留分に相当する金銭の支払いを受けることができます。後継者である長男の立場からすれば,遺言を残してもらっても,遺留分侵害額請求を受ける可能性があることになります。
長男に支払資金がないときには,個人で借金をして用意するか,他の相続人の承諾を得て金銭の支払の代わりに株式を渡す(代物弁済)か,株式を第三者に売却して支払資金を作ることになります。株式を代わりに渡す方法,第三者に売却する方法では,譲渡所得税が課税される可能性があってその場合にはさらに納税資金を調達しなければならなくなりますし,長男の持株割合も減少してしまいます。
以前は,株式に対する遺留分減殺請求を受けると株式の共有状態が発生するという問題がありましたが,令和元年7月施行の民法改正により,遺留分は金銭の支払いで処理されることになりました。
これにより,遺留分相当額の金銭を支払えるようにしておくことが,対策として重要になっています。
金銭支払の見通しが立たないときに後継者である長男に安定的な経営を保障するためには,会社法の条文を駆使して議決権制限株式を発行したり,中小企業経営承継円滑化法を利用したりして,遺留分に配慮した遺言を残して,後継者の議決権割合を確保する必要があります。
親族内承継の場合に,どのようなケースでトラブルになりやすいか,具体的な事例で考えてみましょう。
A(先代代表取締役):小売業,製造業等数社のオーナー(資産総額は数十億円,内訳は現金の他,自社株式,事業用不動産,会社への貸付金等)
B:Aの長男。現在は代表取締役社長。
C:Aの二男。以前,グループ会社の経営をしていたが,多大な損失を発生させたために追放された。
この状態で,Aが亡くなりました。
相続人はAの妻,長男B,二男Cの3人です。遺言書は作成されていません。
この場合,どんな問題が起こりそうでしょうか?
まず,Aの持っていた株式は,1に記載した通り,共有(準共有)されます。
そのため,Aの妻と,二男Cが手を組むと,長男Bの経営権が奪われます。
このケースでは,Aの妻は長男Bが事業承継することで一致していたので,問題とされなかったとします。
しかし,「事業用不動産」と「会社の貸付金」が問題でした。Aが仮に6,000万円を会社に貸付けしていたとすると,その貸付金は相続によって,当然に分割されるとされています。
そのため,妻の法定相続分は,2分の1なので,3,000万円,長男B,二男Cの法定相続分は,2分の1×2分の1=4分の1なので,各1,500万円ずつ取得することになります(株式とは異なり,当然に分割されてしまう,と考えられています)。
Cはこの取得した貸付金を返すように請求し,会社は返済しました。
事業用不動産は,株式と同様に共有となりますが,売却されては困るため,会社が高額での買取りし,資金繰りが著しく悪化してしまった,というケースがあります。
承継する会社に対して,代表者の貸付金はありませんか?
代表者が個人資産として,事業用資産を持っていませんか?
この場合にも,生前に「遺言書」を書いておくことが不可欠だったことになります。
法的なトラブルはどのようなケースで起こるのか,その対策はどのようなことがあるのか,株式の承継,遺留分の計算方法で間違いやすい点,遺留分減殺請求のために承継したつもりの経営者としての地位,経営権が奪われないようにするための民法特例などについて,弁護士木下貴子のブログ記事「事業承継で経営権を握るために必要なこと〜遺産共有と遺留分」もご覧ください。
親族内承継で,子どもに事業を承継してもらうことをお考えの経営者の方は多いと思います。
子どもへの事業承継をめざすとき,失敗しないための大切な3つのポイントを別記事「親族内承継〜子どもに引き継ぐための3つのポイント」で紹介していますので,子どもに事業を承継してもらいたい,とお考えの方は参考にしていただけたらと思います。。
以上の通り,確実に経営権(株式)と事業用の資産を引き継ぐためには,法的な課題を見つけ,対策を取らなければなりません。的確な法務課題の発見と対策には,事業承継の全体像を把握するスキルのある弁護士に依頼することが適切です。
当事務所では,所長弁護士木下貴子が事業承継コーディネーターとして相談に応じた際の経験も生かし,事業承継の全体像を踏まえた上での法的対策のアドバイスをしています。