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面会交流調停・審判の約束が守られなかったときの対処法

最終更新日:2023年7月30日

子供がこちらを向いて近づけない

お子さんとの面会交流をしたい父親が面会交流調停を自分で進める方法を,弁護士木下貴子(弁護士歴24年)が連載記事「弁護士木下貴子の面会交流調停徹底解説(父親向け)」でお伝えしています。

連載第23回は,面会交流の調停が成立しているのに,あるいは審判が確定しているのにその約束を守ってもらえないときの対処法について解説します。

面会交流調停・審判の約束が守られるようにする確実な手法というものはありません。
また,面会交流調停・審判の約束を守ってもらえないといっても,全く面会交流ができていない場合と,約束どおりの回数・方法ではないものの面会交流ができている場合があります。約束どおりになされない事情も,様々です。同居親の性格も様々ですし,子供の年齢,性別,性格は様々です。
この記事で説明する複数の手法それぞれの効果とリスクを理解した上で,あなた,(元)妻,子供の状況に応じて最適な手順を考えて進めてください。

約束よりも優先すべき子供の利益

面会交流の調停・審判が定まると,そのとおりにしたい,すべき,させたいという思いになりがちですが,面会交流は別居親の権利ではなく子供の権利ですから,面会交流調停・審判の約束が守られなくなってしまったときにも,子供の利益のためにどうするのが良いのかを考える必要があります。

約束を守るよう求めることが子供の利益に合致しないことがある

子供が不満を感じている

面会交流は,子供が,別居親のあなたからも愛されていることを感じ,健全に成長していけるようにするために,実施するものです。
あなたが(元)妻に面会交流の約束を守らせようとの思いでした行為が,子供には,別居親のあなたから意地悪をされているように間違って伝わってしまうことがあります。

約束したとおりの面会交流が子供にとって負担になっているときには,回数や時間を子供の生活に合うように調整する努力をする方が,子供の利益につながることがあります。

理由の確認と阻害要因の軽減・解消の検討

約束が守られなくなった原因を誤解していると,対策を誤ることになります。まずは,冷静・丁寧に,(元)妻に対し,約束を守ってくれない理由を尋ねてみるのが良いでしょう。
面会交流調停後に,面会交流を難しくする事情(阻害要因)が発生・拡大したのであれば,阻害要因を軽減・解消することも必要です。

約束を守るよう求めるよりも効果的な手法を探す

言動に失敗した父親

あなたの子供に対する言動,あなたの面会交流時の失敗,あなたの(元)妻に対する言動がきっかけとなっているときには,あなたの努力だけで阻害要因を軽減・解消できる可能性が高いです。(元)妻に約束を守るよう求めるよりも,自分でできることをすぐに始めた方が,効果が高いでしょう。
あなたの失敗でなくても,あなたと(元)妻の対立が深まってしまって,面会交流の実施がつらいものになっているのであれば,対立を軽減するためにあなたにできることをしてみるのも良いでしょう。

対処法の種類

約束を守ってもらえないときの対処法としては,次の6つが考えられます。

これらについて詳しく解説していきます。

実現できている限りの面会交流に専念

約束どおりの回数・方法ではないものの面会交流ができている場合には,その面会交流の充実・成功に専念するという選択が考えられます。

子供に原因があるときの選択肢

親同士で面会交流の予定を決めたものの,子供が乗り気でなかったり,子供が友だちと遊ぶ約束を入れてしまったりして,面会交流がキャンセルになってしまう状況のときは,子供が面会交流に慣れてきて,面会交流を心待ちにしてくれるようになれば,キャンセルが減っていく可能性があります。

子供に言い聞かせることにより子供が苦痛を感じる

このような状況のときに(元)妻に対して約束を守らせようとする手法を選択すると,子供が苦痛を感じて逆効果になるリスクがあります。そのリスクを回避しつつ,できることに専念する選択となります。

効果が小さい場合

全く面会交流ができていないときにはできない方法になります。
また,子供に原因がなく,同居親である(元)妻に主な原因があるときには,この方法は効果が小さいでしょう。

履行勧告

家庭裁判所から,(元)妻に対し,面会交流の義務を履行するように勧告してもらう手続です。

手続きの利用方法

面会交流調停・審判をした家庭裁判所(面会交流審判に不服申立てがあって高等裁判所で決まったときは,第1審の家庭裁判所)に,申出をすると実施してもらえます。
費用はかかりません。
申出は,書面でも口頭でもよく,電話でも良いことになっています。
大阪家庭裁判所のウェブページに書面で申し出るときの書式がありますので,書面で申し出るときには,参考にすると良いでしょう。

手続きの概要

家庭裁判所調査官が母親に電話する

家庭裁判所の家庭裁判所調査官(法律上は家庭裁判所の裁判官も実施できるのですが,実際上は,家庭裁判所調査官が実施しています)が,義務の履行状況を調査し,履行されていないときには,履行するよう手紙を出したり,履行するよう電話で促したりしてくれ,その結果を報告してくれます。
家庭裁判所の勧告に従わないことに対する制裁はありません。
(なお,家事事件手続法には,制裁のある「履行命令」の制度の規定がありますが,面会交流には利用できない制度となっています。)

利用しやすさと効果の程度

この履行勧告は,費用がかからず,手間も少ない点で,利用がしやすいものです。面会交流の方法を具体的に定めていない場合にも利用できます。
他方,(元)妻へのプレッシャーが小さく効果が得られない場合が多いという弱点があります。
まずは履行勧告を利用してみて,うまくいかなければ他の手続を検討するという手順も考えられます。

間接強制

間接強制は,強制執行手続の一種で,裁判所に,「1回の面会交流の不履行につき,○万円を支払え」というような命令をしてもらうものです。不履行をすれば金銭(間接強制金)支払義務を負うという心理的強制によって,面会交流の履行を促すものです。

利用できない場合

間接強制は,面会交流の日時・頻度,各回の面会交流時間の長さ,子供の引渡しの方法等が具体的に定められているときにしか使えません。具体的に定められていないのに間接強制の申立てをすると,却下されます。

手続きの利用方法

間接強制の命令を得たいときには,間接強制の申立書を作成し,調停調書正本(調停・審判のときに「謄本」しか受け取っていないときには,申請をして「正本」の発行を受けることになります)等の必要書類を付け,面会交流調停・審判をした家庭裁判所(面会交流審判に不服申立てがあって高等裁判所で決まったときは,第1審の家庭裁判所)に提出して,申立てます。
申立書には申立手数料として2000円分の収入印紙を貼る必要があり,郵送用切手(金額・内訳は裁判所により異なります)を納めておく必要があります。

手続きの流れと概要

家庭裁判所の面会交流間接強制手続の流れ

あなたが間接強制の申立てをすると,家庭裁判所は,申し立てられた側の(元)妻に対し,申立書の写しを送り,反論等の意見の提出期限を通知します。
提出期限が過ぎるか,(元)妻からの意見が提出された後,裁判官が,間接強制の要件を満たしていると判断すれば,間接強制の命令が発せられます。裁判官の判断前に,(元)妻から提出された意見に対するあなたの意見の提出を求められることもあります。
間接強制が認められる場合の金額は,1回の不履行につき5~10万円程度のことが多いです。
不服があるときには,高等裁判所に不服申立てができることになっており,その場合には,高等裁判所が最終的な結論を出します。

効果の程度

間接強制が認められると調停・審判どおり面会交流がされるようになることは多いですが,間接強制金の制裁覚悟で約束を守ろうとしない同居親もいます。
間接強制の方法は,面会交流の日時や子供の引渡し方法等が具体的に定まっていないと利用できないものの,調停・審判の面会交流の約束が守られなかった場合の対策として考えられる手法の中では,最も効果のある手法になります。

リスクとデメリット

もっとも,間接強制は,強制力の強さが,子供の利益を害するおそれを伴うという問題があります。
「お母さんが困るから(お金を取られてしまうから),面会交流するしかない」と子供自身の自由を奪う結果を招いたり,「お金を取られてしまうから,病気でも面会交流に行かなければならない」と子供の健康を害したり,子供から「お母さんを苦しめ,制裁金で私たちの生活も奪うひどい父親」だと思われたりすることもありえます。その覚悟が必要となります。

大きくなった娘が親を拒否する

離婚が子供に与える影響に関する研究の第一人者であるジュディス・ウォラースタインは,アメリカにおける調査結果ではありますが,「私の研究では,裁判所の命令のもと,厳密なスケジュールに従って親を訪ねていた子供たちは,大人になってから一人残らず,親のことを嫌っていた。大半は,訪ねることを義務付けられていた親の方に腹を立てていた。彼らは皆大きくなると,無理やり訪ねさせられていた親を拒絶した。」と述べています(著書「それでも僕らは生きていく」(PHP研究所))。
間接強制を用いた後も,こうしたリスクがあることを意識して,子供や(元)妻への接し方を考える必要が生じるでしょう。

面会交流が約束どおりに実施されたかどうかだけで判断がされるわけではなく,面会交流の日時や子供の引渡し方法等が具体的に定まっていると言えるのか,同居親である(元)妻の責任と言えるのかなどが争われることがありますので,弁護士に依頼した方が良い場合が多いでしょう。弁護士に依頼するとなると弁護士費用がかかるのもデメリットと言えます。

再度の面会交流調停(再調停)

面会交流調停を再度申し立てるという方法もあります。

約束の変更に意味があるときに特に有用

間接強制ができないような調停・審判であった場合には,間接強制もできるような具体的な面会交流方法を定めてもらうために,再度調停申立てをするという手順が考えられます。
子供自身の希望や生活に合致していない面会交流の約束になっていることが約束違反の原因になっているときには,無理に約束を守らせても子供に負担となりますので,子供のニーズに合致した方法に決め直すことを考えても良いでしょう。

その他のメリット

再度の面会交流調停では,裁判所から(元)妻に対し,面会交流を実施するよう丁寧に働きかけてもらえる可能性が高いです。約束が守られなかった事情を正確に把握できることにもつながります。
再度の面会交流調停は,面会交流調停・審判の約束が守られなかった場合の対策として裁判所を利用する手法の中では,(元)妻との対立が小さめの手法と言えます。

リスクとデメリット

手続に期間がかかるのは避けられませんし,弁護士に依頼して再度の調停をすれば,費用もかかります。
再度の調停では,その調停時点の子供の利益に合致した面会交流の回数・方法を話し合うことから,前回の面会交流調停の合意よりも面会交流の条件が悪化してしまうおそれがあります。

慰謝料請求訴訟

調停・審判で定まった面会交流を実施しないことが不法行為に該当するという見解に立って,これにより被った精神的苦痛の慰謝料(損害賠償)を請求する訴訟を提起する方法です。

手続きの利用方法

訴状

訴状を作成し,地方裁判所(140万円以下の請求のときは簡易裁判所)に訴状と証拠を提出して訴えを提起します。
(訴え手数料や訴訟の流れの説明は省略します。)

効果の程度

50万円を支払えとの判決言渡し

慰謝料請求訴訟自体は,面会交流の実現をめざす手続ではなく,過去の面会交流不実施について慰謝料の支払義務があるかどうかとその金額を決めるだけのものになります。(元)妻が,何度も慰謝料請求訴訟を起こされて賠償額が増えていくことを恐れることにより,面会交流の約束を守る気になる可能性があるという副次的な効果に期待して訴訟をすることになります。
裁判所が認める慰謝料の額は決して高くないことから,(元)妻がお金に余裕のある生活をしていれば,効果が期待しづらくなります。

リスクとデメリット

慰謝料請求訴訟は,弁護士に依頼しないと難しい場合が多く,弁護士費用がかかります。
間接強制と同じで,子供の利益を害するおそれを伴うという問題があります。「お母さんが困るから(お金を取られてしまうから),面会交流するしかない」と子供自身の自由を奪う結果を招いたり,子供から「お母さんを苦しめ,損害賠償金を取り立てて私たちの生活も奪うひどい父親」だと思われたりすることもありえます。その覚悟が必要となります。

親権者(監護者)変更調停申立て

離婚後であれば子供の親権者を自分に変更すること,離婚前の別居中であれば監護者を自分に変更することによって,子供と自分が一緒に暮らす生活を目指すものです。

手続きの利用方法

家庭裁判所に親権者変更または監護者変更の調停または審判の申立書を提出して申立てます。
(申立手数料や調停・審判手続きの流れの説明は省略します。)

面会交流の約束違反以外の事情が整う必要性

子供の利益のために親権者・監護者を変更する必要があるときには変更が認められますが,様々な事情を総合的に判断するものであり,面会交流をさせないことにより子供の利益を害しているという事情だけで判断されるわけではありません。他の事情もふまえたとき変更が認められる可能性がないのであれば,この方法では目的を達成できません。

効果の程度

親権変更

変更が認められたときには,劇的に問題が解決します。

デメリット

親権者(監護者)変更調停申立ての手続は,弁護士に依頼すれば,弁護士費用がかかります。
また,(元)妻が最も恐れることを請求するものであり,対立を激化させます。子供が,あなたとの生活よりも,母親である(元)妻との生活を望んでいるときには,子供にも母親((元)妻)と引き離されるのではないかとの恐怖を与えることになりえます。
成功しなかった場合のデメリットが大きいので,この方法が適切な場合は限られていると思います。

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(弁護士 木下貴子)

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この記事を書いた弁護士

著者木下貴子

弁護士 木下貴子

多治見ききょう法律事務所所長

岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり25年目。
離婚事件を中心的に取り扱い,これまでに受けた離婚のご相談件数は1000件を超えます。ご相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーに対応しています。
離婚・夫婦に関する講演の講師も務めています。
著書の「離婚調停は話し方で変わる」(ききょう出版)はAmazonランキング法律部門第1位を獲得しました。

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