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この記事では,子供を連れた家出,別居後の子供の連れ去りに関する問題として,「別居開始時に子供を連れて家出された場合や別居後に子供を連れ去られた場合,また,自分が子供を連れ出した場合に,親権の決定にどのような影響があるのか,どのような行動が「親権者」の決定に有利・不利に働くのか」についてお話しします。
子供を連れての家出や別居後の子供の連れ去りに関し,次のような親権に関わるご相談もよくあります。
まずは,妻(夫)に子供を連れていかれてしまったとき,親権の決定にどのような影響があるのかをお話しします。
親権への影響は,
の2つに分けて考える必要があります。
普通は,子供を追い出すようなことはしていないでしょう。
妻(夫)が子供を連れて家出した行為が妻(夫)に不利に評価されれば,相対的に有利になるはずです。
妻(夫)に不利に評価されるのかどうかを検討する必要があります。
結論として,不利にならないのが通常です。特に,それまで主に子供の養育をしていた親(日本の現状では多く母)が子供を連れて出た場合には,不利になりにくいです。
夫婦が別居するときには,それまで夫婦2人で子供を監護していた状態を,どちらか1人の親による監護に変えざるをえません。
別居が避けられない状態になっている夫婦では双方にストレスがかかっていて,子供の心身の健やかな成長にも悪影響を及ぼしており,夫婦が別居することが子供にとっても良いことが多いです。どちらの親と住むかは別にして,別居は,「子の利益」にもつながることといえます。
子連れ別居を強行したとしても,やむを得ないこと,子の利益につながることをしたという面があります。
主に養育をしていた親がその後も一緒に住むことは,そうでない親と一緒に住むよりも「子の利益」になることが多いです。
したがって,主に養育をしていた親が子供を連れて別居したときには,さらに,不利になりにくいと言えます。
一方の親にDVやモラハラがあったり,子供への暴力(児童虐待)があったりするときには,そのような親から早く離れたことが,子供の利益を実現した行為ということになります。
もっとも,連れて出たときの状況やそれまでの経緯によっては,不利に働く可能性があります。
まず,子供の利益を考えないような行動は不利に評価される可能性があります。といった場合です。
また,話合いができたのに配偶者(夫,妻)と全く話合いをせずに急に子供を連れて家を出たという場合にも,不利に働く可能性があります。
以前はあまり問題とされていませんでしたが,最近は,同居して生活しているという「既成事実」獲得の目的で子連れ別居しているのではないか,そのような目的による子連れ別居を放置して良いのかという問題が生じています。
そして,日本がハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)を批准したことから,特にその問題意識は高まっていると思われます。ハーグ条約は,子供の連れ去りが,子供にとってそれまでの生活基盤が突然急変するほか,一方の親や親族・友人との交流が断絶され,新しい環境へも適応しなくてはならなくなる等,子供に有害な影響を与える可能性があるとの考え方に立っています。そのような子供への悪影響から子供を守るため,原則として元の環境へ子供を戻すべきものとしています。
そのため,話合いができるのに話合いを全くせずに,突然子供を連れて家を出る場合には,親権者としての適格性が問題になり,不利になることもあり得ます。
子供は,同居している親と精神的結びつきが強くなり,別居している親とは精神的結びつきが弱くなります。
また,環境についても,家出のときには,子供の生活環境が急変し,友人との交流が断絶するなどの悪影響があっても,時間が経つと,子供は新たな生活環境に馴染み,新たな友人もできていって,悪影響を取り除く必要が薄れていきます。逆に,再度,生活環境を変えることによるデメリットを考えざるをえなくなります。
そのため,別居期間が長引くほど,「子供は今の親との生活(別居後の生活)に馴染んでいる。現在,一緒に住んでいる親は子供の面倒をしっかり看ていて,特別な問題は無い。何度も環境を変えるのは子供の利益にならない」という判断から,同居親が,親権者として有利である,という判断になりやすいのです。
子供と離れて暮らしている親に,別居前に主に養育していて監護実績があり,経済力もあるとしても,不利になっていきます。もともと親権者として有利な立場にあったのに,不利になっていくのを防ぐには,「子の引渡しの審判・審判前の保全処分」を素早く行うことがとても重要になります。
この場合も,親権への影響は,
の2つに分けて考える必要があります。
妻(夫)が子供を連れ去った行為が妻(夫)に不利に評価されれば,相対的に有利になるはずです。
妻(夫)に不利に評価されるのかどうかを検討する必要があります。
通常,連れ去りは,全く必要性のない行為です。
また,別居した場合,子供は同居している親との生活環境に馴染んでおり,他方の親とは完全に離れた生活を送っています。連れ去りにより,それを突然変えることは,子供の不利益も大きいです。
そのため,このような連れ去りは,相手方の同意が無い限り,原則として違法とされ,親権者としては不利に働きます。
子供を連れて家出されたときと同様になります。
不利になっていくのを防ぐには,「子の引渡しの審判・審判前の保全処分」を素早くすることがとても重要になります。
裁判所がこのようなケースでの連れ去り行為を認めてしまうと,子供の奪い合いなどが繰り返され,自力救済を認めることになりかねません。そうなれば,子供は,親が自分を奪い合う様子を見せられたり,短期間に何度も環境を変えられるたりするため,心への悪影響があります。
そのため,子の引渡が認められる可能性が高いと思われます。
既に説明したとおり,子供を連れて別居しても不利にならないことが多いですが,不利に評価されるようなことは避けるべきです。冷静な話合いが可能な状況であれば,まずは話合いをしてから別居をするのが適切です。
他方で,離婚の話を切り出すと,相手方が準備し,反対に子供を連れて家を出ることもあるのが実態です。離婚の話をした際に,相手方が子供を連れて出ていく可能性がどの程度あるのか,もし,そうなった場合には,子供にとってどんな問題がありそうか,など,どんなことが予測されるか考え,「子供の利益」のため,どのような手順を踏んだら良いのかを検討しましょう。
双方共に冷静に話し合え,同居しながら話合いを継続することの負担感が少ない場合には,「話合いで決まるまで,無断で子供を連れて出ません」というような合意を書面で作成し,進めていく方法もあるでしょう。
親権者として不利にならないよう,一刻も早く,子の引渡しの審判・審判前の保全処分をする必要があるでしょう。
その別居に至った状況,連れ去られた際の状況によっては,これらの申立が認められない場合もあり得ますが,それでも,早期に子供との交流ができるように,子の引渡の手続きの中で裁判所に求めていくのがよいでしょう。
子の引渡の申立をした場合,すぐに子供を戻してもらえるようにならなくとも,早めに面会交流だけでもさせてほしいなどと裁判所で伝えていくこともできます。
場合によっては,別途,面会交流調停の申立をすることも良いでしょう。
子供との交流,つながりが全く無い状況が続けば続くほど,親権者として不利になっていきます。
子の引渡しの審判・審判前の保全処分の詳しい手続きは,別記事「妻(夫)に連れ去られた子供を取り戻す手続きとその注意点」をご覧ください。
面会交流の不当な拒絶は,親権を取るのに不利に評価されます。相手方(夫,妻)から求められれば,できる限り,面会交流をさせることが必要です。
実際に私の知るケースでは相手方(夫,妻)の不貞行為のために,子供を連れて実家に帰って別居したような事例で,1年以上の別居期間があり,子供と一緒に生活していた場合であっても,家を出た状況に問題があり,その後に面会交流も拒否していたことなどから,相手方からの子の引渡請求が認められ,親権についても不利になってしまった事例があります。
そのため,子供と一緒に住むことになった親は,子供の利益を常に配慮し,相手方との面会交流に積極的な姿勢を示すことが必要でしょう。
別居後に子供を連れ去った場合には違法と判断されることも多いので,子供の意思や連れ去り状況なども考え,早急に戻した方が良いと判断する場合には,戻すことも考えましょう。
弁護士木下貴子が,このページ「妻(夫)に子供を連れ去られると親権を取るのに不利となるのか」をYouTubeでお伝えしています。
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