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現在の日本の民法では,両親が夫婦として婚姻しているときは共同で親権を行使することになっています。
両親が離婚したときには,離婚時に,親の一方(父または母)が単独で親権を行使するか,父母が共同で親権を行使するかを定めます。
親の一方(父または母)が単独で親権を行使する(単独親権)と決めたときの単独親権者は,離婚後,子供と同居して一緒に生活していくことになります。
共同親権としたときは,共同親権者となったとしても,子供と同居するとは限りません。共同親権者の間で話し合って,合意により,子供が住む場所を決めます。
親権の中身は,大きく,監護権(身上監護権)と財産管理権に区分できると言われています。もっとも,令和8年4月施行の民法改正後は,監護権,財産管理権,身分行為の代理権の3つに区分した方が理解しやすいと思います。
単独親権の場合は,単独親権者がこれらの権利・権限を有し,義務(責任)を負います。
共同親権の場合は,共同親権者が2人ともこれらの権利・権限を有し,義務(責任)を負うことになります。もっとも,2人で全て何もかもを話し合って決めることは現実的ではありませんし,2人の意見が一致しないこともありますので,民法はそのための規定を置いています。後ほど詳しく解説します。
共同親権者は,子供と離れて暮らしている場合(別居親)であっても,親権者としての義務・責任を負担しています。子供と一緒に暮らしている側の親(同居親)が病気などで監護権の行使ができなくなったようなときには,監護権(監護の権利と義務)全般を担当することになります。
共同親権者の一方が死亡すると,自動的に,残された親権者が,単独で親権者としての権利・権限を有し,義務を負うことになります。単独親権者が死亡したときには,親権のない親に自動的に親権が移ることはありませんので,違いは大きいです。
親子交流(面会交流)権は,親権者でない親にも認められます。
養育費(子供の生活費)の支払義務は,親権者でない親も負担します。
監護権の中でも日常的な行為は,子供のそばにいる親が単独で決定することが認められています。
日常生活のことは子供と同居している親が決定することになり,子供と離れて暮らしている親は親子交流中の食事などを決定することになります。
その他の権利・権限は,共同親権者である父母の協議で決定して行使し,共同で義務を負います。
予め分担を決めておくことができる事項と,できない事項があり,分担がなされているときには,その事項を分担している親が単独で決定し行使します。
協議していられない急迫の事情がある場合には,例外的に単独での親権行使が認められる場合があります。
分担もなされておらず,例外にもあたらない場合で,父母の意見が一致しないときは,決定・行使ができないことになってしまいます。そのため,そのままでは子供の利益を害するときに,親権の行使を進めるための家庭裁判所の手続きが用意されています。
相手の反対があっても自分の意見どおりに親権を行使すべきと考えるときには,家庭裁判所の手続きを利用することになります。
予め分担を決めておく方法は,親権行使について父母の意見が一致しない問題が発生した後でも用いることができる方法となっています。
そのため意見が一致しない問題が発生したときには,以下に説明する「監護者の指定」「監護の分掌」も,選択肢となります。
父母は,協議で「子の監護をすべき者」(「監護者」と呼んでいます)を定めることができます(民法766条1項)。なお,監護者を定めることと,子供と同居する親を決めることは別のことであり,子供と同居する親が監護者となるとは限りません。
監護者の権限について,民法824条の3は,「単独で,子の監護及び教育,居所の指定及び変更並びに営業の許可,その許可の取消し及びその制限をすることができる」(民法824条の3)と定めています。
つまり,上で解説した監護権,財産管理権,身分行為の代理権の3つのうちの1つである監護権について単独で決定・行使することができます。
監護権の中身には,日常的な行為と重大な行為があり,日常的な行為は,監護者でなくても子供のそばにいる親が単独で決定して実行して良いことになっていますが,重大な行為は共同親権者が共同で決定するのが原則となっています。
重大な行為には,居所の決定(転居),心身に重大な影響を与える医療行為,進学先の選択,入学,留学,休学,退学などがあります。
そのため,重大な行為について子供と同居している親が単独で決定して実行できるようにしておくのが子供の利益に合致するというときには,離婚で子供と同居することになる親を監護者と定める合意をすべきことになります。
監護者を定める合意は,離婚のときにもできますし,離婚後にすることもできます。
離婚のときには,子供の進学,手術などの医療行為について円滑に適切に話し合って決めていけるのかを考慮し,また子供と同居することになる親の仕事の都合や子供の進学により今後転居がありうる場合を想定し,そのときに転居の合意ができない可能性も考慮して,子の利益の観点で支障が生じそうな場合には,監護者を決めておく必要があるでしょう。
監護者を定めるかどうかについて意見が一致しないときの家庭裁判所の手続きも用意されています。
離婚のときには,離婚調停,離婚訴訟で監護者を定めるかどうか,どちらを監護者に定めるかについても決定していきます。離婚調停,離婚訴訟では,離婚後単独親権とすることとなって監護者指定が不要になることもありえます。
裁判所の判断で共同親権にした上で,監護者を指定する場合は少ないと思われます。
裁判所は,まず,子の利益の観点から,共同親権とするか単独親権とするかを判断するので,父母が子の監護権全般について子の利益のために協力して適切に決定・行使することが難しいような父母の性格・関係・親子関係があるときには,子の利益のために単独親権にすることが多いからです。
離婚後には,監護者指定の調停・審判で,監護者を定めるかどうか,どちらを監護者に定めるかについて決定します。
監護者には大きな権限が与えられることになり,監護者に指定されなかった共同親権者の権限が大きく制限されることになるため,監護者を指定する以外の裁判所手続き(特定事項に係る親権行使者の指定,監護の分掌)で対応できるときには,監護者指定は認められません。
監護者を指定する場合には,裁判所が,父母のどちらが監護者に適切かを判断します。この場合には,令和8年4月の民法改正前の監護者指定と同様の判断がなされると言われています。司法研修所編「子の監護・引渡しをめぐる紛争の心理及び判断に関する研究」(令和6年8月・法曹会)に書かれている考慮要素が参考とされるでしょう。
父母は,協議で「子の監護の分掌」を定めることができます(民法766条1項)。
監護の分掌には,期間の分掌(交替監護。期間によってどちらが子供を監護するのかを合意する)と事項の分掌(教育について,医療行為についてなど,決める内容によってどちらが監護の権限を決定・行使かを合意する)の2種類があります。
例えば,父母が,1週間毎に交代して子供と一緒に生活するというものです。
どちらの親が子供のそばにいるかということが時期毎に定まり,子供のそばにいて日常的な監護をする権限・義務のある親,監護をする権限のない親の立場が交代することになります。
監護権の中でも日常的な行為は,子供のそばにいる親が単独で決定することが認められおり,その他の権利・権限は,共同親権者である父母の協議で決定して行使し,共同で義務を負うことに変わりはありません。
たとえば,子供の手術が必要になったような場合には,期間の分掌の定めと関係なく,共同で決定することになります。
監護の期間の分掌をする合意は,離婚のときにもできますし,離婚後にすることもできます。
離婚前に父母とも同程度に子供の養育に積極的に関わってきて,離婚後も子供の養育を分担することが子の利益になるという場合には,監護の期間の分掌の利用を考えることになります。
監護の期間の分掌について意見が一致しないときの家庭裁判所の手続きも用意されています。
監護の期間の分掌をした場合,子供と主として一緒に生活している親(同居親)が子供と一緒に過ごす時間が,親子交流で想定している場面よりも少なくなり,他方の親と子供が生活する時間が増えることになります。
養育費を支払う側の親は,子供と一緒に過ごす期間について,子供に関する費用を負担することになります。
したがって,この場合には,養育費の計算で,算定表をそのまま用いることが不相当になることがあり,養育費の減額の方向となるでしょう。
例えば,「教育に関する事項」を分掌する者を母親とするというものです。
分掌により権限を与えられた親は,他の共同親権者の同意なしに,単独で,その事項を決定し,行使することができます。
たとえば,「教育に関する事項」を分掌している親は,他の共同親権者が公立幼稚園への進学を主張していても,単独で,私立の幼稚園に進学することを決定することができます。
監護者指定とは異なり,監護権の一部のみについて,単独で決定する権限が与えらえることになります。
監護の事項の分掌をする合意は,離婚のときにもできますし,離婚後にすることもできます。
子供が慢性の病気にかかっていて,長期的に投薬,手術などの医療行為について決めていかなければいけないような場合,そのたびごとに共同親権者の間で協議するよりも病状を把握している親が迅速に決定する方が良いが,監護者指定をして教育も含む監護権全般を単独で親権行使する必要はないというような場合には,医療に関する事項の分掌をすべきことになります。
監護の事項の分掌について意見が一致しないときの家庭裁判所の手続きも用意されています。
離婚のときには,離婚調停,離婚訴訟で監護の分掌を定めるかどうか,どのような監護の分掌をするかについても決定していきます。
離婚後には,監護の分掌の調停・審判で,監護者を定めるかどうか,どちらを監護者に定めるかについて決定します。
監護の期間の分掌(交替監護)では,どちらの親も,定まった期間において全般的な監護を担当することになりますので,裁判所に監護の期間の分掌を認めてもらうには,どちらの親にも監護者としての適性が備わっていることが必要になります。
また,父の家と母の親の家を決められたとおりに行ったり来たりするというのは,子供にとって負担になる場合もありますから,監護の分掌をする方が子の利益にかなうと言える必要もあるでしょう。
そのため,監護の期間の分掌が定められるためには,以下のような点が必要でしょう。
主として一緒に生活する親(同居親)を決めた上で,離れて住む親(別居親)と定期的な交流をするものは,「監護の分掌」ではなく,親子交流ということになります。
離婚調停・訴訟で監護の分掌を定める請求をした場合,監護の分掌の調停・審判の申立てをした場合でも,「監護の分掌」が必要ない,相当でないという場合には,裁判所から,親子交流の請求・申立てをするように促されることがあるでしょう。
イメージとしては,月に1,2回程度,離れた親が子供に会うような場合には「親子交流」,1週間毎に交代して離れた親が子供と暮らすような場合には「監護の分掌」のイメージになるかと思います。
例えば,父母で私立の幼稚園に行くのか公立の幼稚園に行くのか意見が一致せず,監護の分掌の調停・審判が申立てられた場合に,教育に関する事項全てについて権限を与えると,他方の親の権限が必要以上に制約されることもあります。
そのため,自己に監護の事項の分掌が認められるためには,以下のような点が必要でしょう。
親権の行使について父母の協議が調わないときで,子の利益のために必要があるときは,家庭裁判所に,協議が調わない事項についての単独での親権行使者を決めてもらうことができます(民法824条の2第3項)。
具体的には特定事項に係る親権行使者の指定の調停・審判の申立てをすることになります。離婚調停・離婚訴訟で,離婚と同時に指定を受けることもできます。
父母の協議で決めたとしても効力はなく,公正証書で決めることも許されず,家庭裁判所の手続きによる必要があります。
監護権(日常的な行為を除く),財産管理権,身分行為の代理権に該当する「特定の事項」が対象となります。
監護権の中の日常的な行為が除外されていますが,日常的な行為は,裁判所の手続きをするまでもなく,子供のそばにいる親が単独で決定できます。
監護権(日常的な行為を除く),財産管理権,身分行為の代理権に該当する事項であっても,「子の利益のため急迫の事情があるとき」は,例外として単独行使が認められています。この場合は,子の利益のために速やかに単独での親権行使をすべきですので,この手続きは利用できません。
「特定」の事項に関するものであることが必要であり,特定性を欠いている場合には裁判所に判断してもらえません。
例えば, 「教育に関する事項」に関して親権行使者を指定してほしいというのは「特定」されていないと判断されます。「進学に関する事項」に関してというのも,広すぎるため,不十分でしょう。「高校との在学契約の締結及びこれに付随する事項」というような形であれば,「特定」されていると言えるでしょう。
もっとも,あまりに絞りすぎて「○○高校との在学契約の締結及びこれに付随する事項」としてしまうと,この○○高校以外との在学契約ができなくなってしまいます。特定しすぎにも注意が必要でしょう。
「父母間に協議が調わない場合であって,子の利益のため必要があると認めるとき」に利用できるものになっています。
申立てをする時点で,意見が一致せず決められないという問題が顕在化していて,子の利益のために決めなければいけないような場合に利用することができる一方,未だ問題が顕在化していない場面では利用できません。
裁判所は,問題となっている「特定事項」について,父母のどちらが子の利益にかなう親権行使ができるかという基準で親権行使者を指定します。
具体的に私立の幼稚園がいいのか公立の幼稚園がいいのかというような父母の選択内容そのものの優劣・適否について判断をするわけではありません。
親権行使者を自分に指定してもらおうとしての裁判所に申立てをするときには,その特定事項について自分の方が他方の親よりも子の利益にかなう親権行使ができることを伝えていくことが必要となります。
子供の転居について意見が一致しない場合には,その時点の子の居所指定について親権行使者指定をしてもらうことが考えられます。
この場合,将来さらに転居するときに,改めて親権行使者指定手続きをする必要があるのか不明な点がありますので,裁判所に終期を確認していくことも必要でしょう。
離婚後共同親権とした場合,子の氏の変更についても親権の共同行使の対象となります。
子供が15歳以上であれば,子供本人がする手続きですが,15歳の場合には親権者が代理人として手続きをする必要がありますので,共同親権のときには,父母が合意して,手続きをする必要があります。合意ができない場合には,親権行使者指定をしてもらうことになります。
具体的には,「子の氏『甲野』を母の氏『乙川』に変更する手続」に係る親権行使者指定の申立てをすることになります。
母が離婚後も婚氏(甲野)を続称して使い続ける場合にも,母の離婚後の戸籍(甲野)に子供の戸籍を移動する場合も,子の氏の変更の手続きが必要となります。
子の氏の変更(不変更)について父母のどちらが子の利益にかなう親権行使ができるかという観点で判断され,子の氏を父母のいずれの氏にすべきかという親権行使の内容そのものの適否を判断するわけではありません。
そのため,子供の年齢や子供の意向にもよりますが,一般的には、子の氏に関して適切な判断を期待し得るのは同居親であると判断されることが多いと思われます。
離婚調停で離婚後共同親権を選択して離婚する場合に,予め子供の氏の変更を考えている場合には,調停でその旨の親権行使者指定の合意をしておくと,その後の円滑な子の氏の変更手続きに役立つので検討しましょう。
子供の進学について意見が一致しない場合には,進学について親権行使者指定をしてもらうことが考えられます。
既に監護者指定や監護の分掌で教育に関する事項について監護の分掌を受けて,監護権に属する教育に関する事項について単独で決定できる場合でも,親権行使者指定が必要となる場面があると考えられています。
それは,子供が契約当事者となる在学契約をする場合です。この場合,監護権ではなく財産管理権の一内容として,親権者が,子供の法定代理人として契約を締結することになります。実際には,教育機関である学校と厳密な意味での契約書を交わすことが少ないので,その判定も難しいところになりますが,子供が契約当事者と言える場合には「親権行使者指定」が必要です。
他方,親自身が契約当事者(親が当該学校と直接在学契約を締結)と言える場合には,監護者指定や教育に関する事項についての監護の分掌をしていれば,親権行使者指定は不要ということになります。
在学契約について父母のどちらが子の利益にかなう親権行使ができるかという観点で判断されます。
進学するのは子供であることから,子供の意向をふまえた判断が「子の利益」にとって重要な類型であるので,客観的事情の他,子供の意向も重視されることが多いでしょう。
具体的には,客観的事情(同居期間中の父母間の役割分担,子供の進学をめぐる父母間や親子間のやり取りの経過,子供の状況,父母の経済状況,他の兄弟姉妹の進学状況,進学先の学校の状況等),父母の状況把握(子供の状況,進学先の学校の状況,子供の意思・意向,配慮すべき点)の程度,在学契約の締結について子供の利益のために判断する意思・能力,そして,子供自身の意思・意向を考慮して判断されることが予想されます。
子供と一緒に住む親(同居親)の意見が子供と一致していない場合についての親権行使者指定については難しい判断となりそうですが,子供が同居親の元からその後も学校に通い続けるような場合には,弁当の準備なども含めて同居親の協力なく通学し続けることが難しいという事情も含めて,判断される可能性がありそうです。
実際に意見が一致せず決められないという問題が顕在化している場合にしか利用できない制度のため,緊急時には利用できない場面もあるでしょう。その場合には,急迫の事情がある場合として単独で親権行使せざるを得ないでしょう。
もっとも,進路が概ね定まって場合には,早めに話し合うことで意見が一致しないことが判明することもあります。できるだけ早めに申立をすることが望ましいでしょう。
「養育費を多くもらいたい。でも,離婚調停でどのように話したらよいのか。」
弁護士木下貴子が,養育費を増やしたい女性の方へ,離婚調停での話し方をアドバイスしています。
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