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最終更新日:2020年1月13日
多治見ききょう法律事務所では,裁判所の算定表を分析して得られた結果を用いて,子供が4人の場合の養育費算定表を作成しました。
公開しますので,ダウンロードの上,活用してください。
裁判所が算定表を公表していますが,
などの問題があります。
そのため,このような場合でも使える算定表があるとよいと考えました。
養育費算定表の基礎となる「算定方式」は公表されていて,基にされた数値も大半が公表されています。そこで,これを基に子供4人の場合の算定表を作ろうと考えました。
そこで,まず,公表されている数値・算定方式を,公表されている「算定表1〜19」(子供が3人までのもの)にあてはめて,一致するかどうかを確認しました。しかし,一致しませんでした。
途中でデータのバランスを取るなどの加工がされていることが原因と思われました。
そこで,公表されている「表1〜19」と連続性のあるものを作成するため,まず,公表されている「算定表1〜19」(子供が3人までのもの)の数値分析を行いました。
そして,その分析結果を基に,子供が4人の場合の算定表を作りました。
この結果,公表されている「表1〜19」と連続性のあるものが完成しました。
つまり,
詳細は,以下の経緯のとおりとなります。この点を踏まえて賢く活用するようにしてください。
裁判官4人が研究員となって平成30年度になされた司法研究「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」による養育費・婚姻費用算定表が,令和元年12月23日に報告・公表され,裁判所で用いられています。(この公表前は,東京・大阪養育費等研究会が発表した論考「簡易迅速な養育費等の算定を目指して−養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案−」(判例タイムズ1111号285頁掲載)の養育費・婚姻費用算定表が用いられてきました。)
この司法研究報告では,年収の一定割合を「基礎収入」として,その基礎収入を「指数」に基づいて分配して養育費・婚姻費用の額を算定する方式が示されています。
この司法研究報告の報告書は出版されており,概要が裁判所のウェブサイトで公表されています。
指数は,1人あたり,次のとおりとされています。
義務者の基礎収入をX,権利者の基礎収入をYとしたとき
義務者の基礎収入をX,権利者の基礎収入をYとしたとき
上記の司法研究報告では,
給与所得者の基礎収入の総収入(年収)に占める割合は,「おおむね54%〜38%(高額所得者の方が割合が小さい)となる」
と説明されています。
自営業者の基礎収入の総収入(年収)に占める割合は,「61%〜48%程度(高額所得者の方が割合が小さい)の範囲内となる」
と説明されています。
算定表では給与年収と自営年収が1対1対応しており,たとえば,給与年収2000万円と自営年収1567万円が同じ扱いになっています。
そのため,算定表を作るときには,
という金額が基になっているはずなのですが,この「?」の額は公表されていません。
ただ,司法研究報告では,基礎収入割合表が付いています。
給与所得者(万円) | 割合(%) |
---|---|
0〜75 | 54 |
〜100 | 50 |
〜125 | 46 |
〜175 | 44 |
〜275 | 43 |
〜525 | 42 |
〜725 | 41 |
〜1325 | 40 |
〜1475 | 39 |
〜2000 | 38 |
試しに,この基礎収入割合表の割合で基礎収入を計算し,養育費・婚姻費用の額を計算してみましたが,司法研究報告書に付いている「算定表1〜19」の結果と一致しませんでした。
小数点以下四捨五入で38%となるとすれば,37.500%〜38.499%まで1%の幅があります。2000万円の1%は20万円にもなりますので,最終的な計算結果が合わないのは当然です。
多治見ききょう法律事務所では,コンピュータプログラムに詳しい弁護士と,メルマガ読者様の協力を得て,算定表の基礎収入はいくらなのか,つまり,
の「?」の部分の金額の解明をめざしました。
ただ1点問題がありました。
裁判所の算定表の「(表10)婚姻費用・夫婦のみの表」の
の3か所の婚姻費用が「〜1万円」となっているのです。(325万円・450万円のあたりを拡大すると,次のようになっています。)
年収が同額であれば,基礎収入は同額となります。子どもがいない夫婦の場合,算定方式にあてはめれば,婚姻費用は0円となるはずです(別居している夫婦が,同じ年収を得ているのであれば,婚姻費用のやりとりは不要なはず。)。実際,この3か所以外は全て「0円」に区分されています。
この3か所の理由は不明ですから,「『〜1万円』には0円ジャストも含む」ものとしました。
算定表は,表1から表19まで19種類,各表が41マス×81マスの3321マスでできていますので,全部で3321×19=63099マスあります。
コンピュータプログラムでの分析の結果,63099マスについて,算定表の結果と一致し,小数点以下を四捨五入して基礎収入割合が基礎収入割合とも一致する基礎収入組み合わせがあることがわかりました。
養育費算定表は2万円区切り(2万円以下の部分は1万円区切り)になっています。算定結果が8〜10万円(「8万円以上10万円未満」なのか「8万円超え10万円以下」なのかという問題はありますが)のときに「8〜10万円」となるようにできています。
たとえば,「表4 養育費・子2人表(第1子15歳以上,第2子0〜14歳)」を例に表を見てみましょう。
オレンジ色の□と,黄緑色の□の印を付けました。
これらの位置を縦で見ると,どちらも,「8〜10万円」の枠の最も下にあります。
弁護士などの専門家に,養育費の額がいくらが妥当かを相談すると,次のような答えが返ってくるのではないかと思われます。
算定表を見ると,確かにそのような位置にありますから,回答に違和感はありません。オレンジ色にあてはまる場合も,黄緑色にあてはまる場合も,同じような答えが返ってくるものと思われます。
多治見ききょう法律事務所では,分析結果の中から適正な基礎収入組み合わせを選び出して計算し,数字を入れた養育費算定表(非公開)を作りました。その算定表を見てみましょう。
オレンジ色と黄緑色は,実際には4800円ほどの差があることがわかります。
養育費をもらう側(権利者)が,黄緑色の場合に8万円が相場だと思って,8万円で合意してしまうと,4800円の損とも言えます。1年間で5万7600円,10年分にすると57万6000円も違ってきます。
逆に,オレンジ色の場合に,養育費を支払う側(義務者)が8万3000円で合意してしまうと,3000円の損とも言えます。
公表されている養育費算定表を見ただけでは,この違いはわかりません。ほとんどの専門家は,この違いに気付かないままアドバイスをしていることでしょう。
分析結果をふまえた数字入り養育費算定表を用いることで,きめ細かなアドバイスができるようになりました。
数字入りの算定表がなくてもできることがあります。左右(横)にも算定表を見るのです。黄緑色の□は,左右で見たとき,「8〜10万円」の枠の右から2番目です。一番右が,ワンランク下の「6〜8万円」に最も近いわけですから,右から2番目の黄緑色の□の場合は「8〜10万円」の下限ぎりぎりにはならないはずということがわかります。
つまり,上下(縦)に見た場合,「8〜10万円」の枠の一番下になる場合であっても,左右(横)にみた場合に,右端ではなく,同じ金額にあてはまる枠が右隣にもある場合には,8〜10万円の内,やや9万円に近い数字になる,ということです。
子供が4人の場合の養育費算定表には,数字を入れた形で公開しています。以上をふまえて,多治見ききょう法律事務所オリジナル「子供が4人の場合の養育費算定表」をご活用ください。
司法研修所編「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」(法曹会,2019年)
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