再現！女性紫崎恭子の養育費相談

最終更新日：2020年2月15日

紫崎恭子（むらさききょうこ）と申します。

素敵なお名前ですね。
弁護士の木下貴子です。多治見ききょう法律事務所にご相談にお越しいただきありがとうございます。
本日は，どのようなご相談でしょうか。

夫の浮気が原因で，夫婦げんかになって，子供を連れて家を出ました。
夫と離婚しようと思っているのですが，養育費のことがよくわからないので，相談に来ました。

養育費の相場

具体的には，何をお知りになりたいですか？

養育費の相場は１ヶ月４万円ぐらいと聞いたのですが，本当なんでしょうか？

４万円と決まっているわけではなくて，状況によりけりです。
裁判所では，ご夫婦の年収や，お子さんの人数と年齢で計算する算定表を使って決めていますよ。

そうなんですか。

紫崎さんのお子さんの場合で，計算してみましょうか。
お子さんは，何人いらっしゃるんですか？

２人です。

何歳と何歳ですか？

上の子が１１歳で，下の子が８歳です。

これが，裁判所が計算に使っている「養育費算定表」です。裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。

状況別に表が分かれていますので，離婚後の養育費を計算するときには，「養育費」という表を使います。そして，お子さんが１１歳と８歳ということですから，「子２人表（第１子及び第２子０〜１４歳）」という表を使うことになります。

ご主人は，自営ですか，お勤めですか？

会社員です。

ご主人の年収はおいくらですか？　手取りではなくて，税金や社会保険料を差し引く前の額の年収なんですが。

６００万円ぐらいですね。

恭子さんの年収はどうですか。

パートで１００万円ぐらいですね。

「義務者の年収」と「権利者の年収」を当てはめます。
義務者というのが養育費を払う側で，紫崎さんのご夫婦ではご主人ですね。権利者というのが養育費をもらう側で，恭子さんですね。
「義務者の年収」の「給与」の６００万円のところから横にたどり，「権利者の年収」の「給与」の１００万円のところから上にたどって交わったところ，「８〜１０万円」という結果になります。

子供１人分ですか２人分ですか？

２人分の金額になります。

「８〜１０万円」ということですと，だいたい９万円ということでしょうか・・・

表を見ていただくと，「８〜１０万円」の中でも上のランクの「１０〜１２万円」に近いところですから，９〜１０万円になりやすいですね。
もう少し細かく金額を分析してみましょうか。

そんなことができるんですか？

これが，うちの事務所オリジナルの数字入り養育費算定表です。裁判所の算定表を分析して作ったものです。
これによれば９万５６９２円ですね。

細かいですね。

実際には，算定表を参考にしながら，夫婦で決めていくことになります。実際には，お子さん１人あたり４万８０００円という合意のやり方をすることになります。この場合ですと，お子さん１人あたり４万円で合意してしまうと，相場よりも少し低い合意ということになりますね。

養育費が低くて生活していけない

１ヶ月９万６０００円もらっても，子供２人と，とても生活していけそうにないんですが・・・

みなさん，そう言われますよ。養育費はお子さんの生活費だけなので，離婚すると恭子さんご自身の生活費の援助はなくなりますので，どうしても生活が厳しくなります。

離婚は夫の浮気が原因なのに，納得いきません。

ご主人の浮気の責任は，離婚するときには慰謝料の形で解決することになります。
ご自身の生活費も補ってほしいというのでしたら，離婚せずに，夫婦別居を続けるならば，法律上は夫婦のままですから，ご主人が妻である恭子さんの生活費も補わなければならなくなります。

それでも，離婚したいですね。

１カ所に住んでいた家族が別居するわけですから，全体で，２軒分の家賃がかかったり，電気・ガス・水道の基本料金やNHKの受信料も倍になるのに，給料収入は変わらないので，他のことに回せる余裕は少なくなりますね。

児童扶養手当などの福祉も利用して，生活をやりくりしていくことになります。

やはり，生活が厳しくなってしまうのでしょうか。

ご主人と話し合って，相場よりも高い養育費を払ってもらうという方法もあります。
希望する養育費を支払ってもらうための「話し方」については，アドバイスブックの無料ダウンロードをご案内していますので参考にしてください。離婚調停用のアドバイスブックですが，夫婦間の交渉でも役に立ったというご報告をいただいています。

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養育費の取り決め方

どうすれば，養育費を払ってもらえるのでしょうか。

まず，ご夫婦で話し合って，養育費の金額を決めて，支払う約束をしてもらってください。

口約束でもいいんですか。

書面に残した方がいいですね。

どのように書けばいいですか？

法務省がインターネットで公開している「子どもの養育に関する合意書」のひな形をダウンロードして使うのが簡単です。

公正証書というものもあると聞きましたが・・・

公証人役場の公正証書で取り決めると，約束通り支払われなかったときには，差し押さえの手続きができます。しかし，公正証書にしようとすると，手間と費用がかかりますし，忙しい公証人役場だと完成までに期間もかかります。

夫と話し合うと，養育費を値切られそうなんですが・・・

そういうときは，裁判所の離婚調停で話し合って，決めるという方法があります。離婚調停ならば，第三者である調停委員が，話し合いの間に入ってくれます。

養育費を取り決めれば支払ってもらえるか

養育費を約束してもらえば，大丈夫ですか。

約束しても支払わない方がいるのが現実ですね。

約束しても養育費を支払ってくれないときは，どうしたらいいんですか。

公正証書や裁判所の調停での取り決めであれば，違反があったときには，裁判所に差押えの申立ての手続きをして，ご主人の財産を差し押さえて強制的に回収することもできます。
給料を差し押さえて，毎月，勤務先から払ってもらうこともできます。

給料を差し押さえたりなんかしたら，会社にいづらくなりませんか？

会社に余計な手間をかけさせるのは間違いありませんので，出世に響いたり，退職せざるをえなくなったりすることは考えられますね。会社をやめてしまったら，次の勤務先を調べて，差し押さえの手続きをやり直すことが必要となります。

なんか，大変そうですね。

そのとおりでして，支払われなくなった養育費を回収しようとすれば，手間も費用もかかりますし，回収できないこともあるというのが現実ですね。

養育費を相場よりも多くもらいたい

できたら，養育費を１２万円ぐらい払ってもらいたいんです。月１２万円だったら，余裕で払えると思うんです。

ご主人も，弁護士に相談したり，インターネットで調べて，養育費の相場はわかっているでしょうね。

そうだろうと思います。

９〜１０万円が相場だと知っている相手に，１２万円を払ってもらおうということになりますね。

そうですね。無理そうですね。

難しい交渉になりますが，最初から諦めることでもないでしょう。
さきほど，ご主人が月１２万円を余裕で払えるとおっしゃいましたが，どういう計算ですか？

私たちが住んでいた賃貸アパートは，夫の実家に近いので，夫は，アパートを引き払って，実家に帰ると思うんです。

家賃もかからなくなりますから，余裕で払えると思います。

ご主人の自助努力で作った余裕を回してほしいというだけでは，なかなか通りませんので，話し方を考えてみましょうか。

はい。

どうして，養育費を相場よりも多くもらいたいのですか？

月９万６０００円の養育費では，市役所から児童扶養手当をもらっても，やっていけないと思うんです。

普通の家庭よりもお金がかかっているような事情はありますか？

６年生の長男が私立受験のために４年生から塾に通っていて月５万円ぐらいの塾代がかかっているんです。一生懸命勉強していて，成績もいいので，いまさらやめさせるのもかわいそうです。
でも，中学に合格したら，今度は授業料がかかりますのでどうしたら良いか・・・

中学受験は，誰が言い出したことなんですか？

夫が，私立の方がいいぞと言って，長男も，その気になったんです。友達も受験すると言っていて，刺激された面もありますが。

そういう事情なら，その事情をそのままご主人に話してみたらいいんじゃないですか。離婚しても，塾代や私立中学の費用だけは，直接，ご主人から払ってもらうと取り決めてもいいですよ。
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養育費を確実に支払ってもらう方法

養育費を約束通り支払ってくれないか心配です。支払ってもらえる方法はありませんか？

確実というものはないのですが，対策はありますよ。

その対策を教えてください。

「硬」と「軟」をバランス良く織り交ぜることになります。

その「硬」というのは何ですか？

強制力のプレッシャーをかけるということです。
調停や公正証書で決めたものであれば，差押えをちらつかせる。夫婦だけで作った合意書のときは，調停や裁判に持ち込むということになります。

それでうまくいくんでしょうか？

ご主人の性格次第です。効き目のあるときと，ないときがありますね。

「軟」の方は何ですか？

「養育費を支払って良かった」と感じてもらえるようなことをすることです。

そんなことができるんですか？

感謝の気持ちを書いた手紙やメールを送るというのがありますね。養育費のおかげで子供にしてやれたことを報告するのもいいですね。

子供との面会交流をしてもらって，子供の成長を見せるというのもいいですね。

養育費の支払いは，父親の義務ではないのですか？

義務であり，支払うことは当然のことです。でも，現実には，養育費を払わない父親が多いのですから，払ってくれることは喜んでいいことと思いますよ。

それでも，夫に感謝する気持ちにはなれないので，感謝の手紙を出すなんてイヤなのですが。

感謝の手紙は，本心とは違ってもいいと思いますよ。養育費を支払ってもらいたいならば，おすすめしたい対策なのですが，それでもやりたくないということであれば，子供にとっては，お母さんが精神的に安定していることの方が重要だと思いますので，無理をしないようにしてください。

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この記事を書いた弁護士

木下貴子

多治見ききょう法律事務所所長

岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり２５年目。
離婚事件を中心的に取り扱い，これまでに受けた離婚のご相談件数は１３００件を超えます。ご相談は，親身，気軽，自分で決めるをモットーに対応しています。
離婚・夫婦に関する講演の講師も務めています。
著書の「離婚調停は話し方で変わる」（ききょう出版）はAmazonランキング法律部門第１位を獲得しました。