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社長借入金・社長の貸付金で相続税が生じるときの対処法

中小企業の社長の相続の場合,社長の会社に対する貸付金(社長借入金)がある場合には,相続税の負担が生じえます。
社長の妻が会社にお金を貸している場合にも,子どもにとっては同じ問題が起こります。
数千万から億円単位の多額の社長借入金(社長の会社に対する貸付金)が発生していることも少なくありません。

通常は,会社から返してもらうのが難しくても,額面どおりに相続財産として評価されますので,相続税負担も大きくなります。

そこで,この記事では,社長借入金を解消したい場合の4つの対処法を,次の順序で解説します。

  1. 役員報酬を減らして借入金返済を行う
  2. 社長借入金(社長の会社に対する貸付金)を免除してもらう
  3. 社長借入金(社長の会社に対する貸付金)を株式に替える
  4. 貸付金を贈与する

役員報酬を減らして借入金返済を行う

社長や社長の妻からの借入金が膨らんでいるとき,会社の決算は赤字ということが多いです。

その場合には,まずは役員報酬(給料)の金額を減らして,その分を貸付金の返済として渡すことで,借入金の金額を減らす方法が最もシンプルです。

もっとも,借入金の返済は経費にならないので,役員報酬(給料)を減らした分だけ会社の利益が増加することになります。税務面については,税理士と相談しながら計画的に進めていくことが大切でしょう。

社長借入金(社長の会社に対する貸付金)を免除してもらう

次にシンプルな方法は,社長が会社に対する貸付金の全部または一部を放棄すること,つまり,社長借入金(負債)を免除してもらう方法です。

もっとも,この場合,会社に「債務免除益」という利益が発生するので,その結果大幅な黒字決算となって税金を納税する必要が生じえます。

黒字決算になっても,繰越欠損金(税務申告で損金算入できる過年度の赤字)がある場合には,繰越欠損金を充てることで課税を免れることができます。繰越欠損金の額をふまえて貸付金の放棄の額を調整することが適切です。

もっとも,社長借入金を免除した結果1株当たりの株価が増加すると株主への贈与として,他の株主に贈与税が発生することがあります(「みなし贈与」と言います)。

これは,社長(借入金を放棄する役員)が全ての株式を持っていないような場合に起こりえます。
例えば,株主が,社長と妻,子供の3人だったとします。
このとき,社長が会社に対する社長貸付金を放棄しますと、会社の財務状況は良くなります。その結果,妻と子供が持っている株式の価値は上がります。
そうすると税務署は「間接的に社長から妻,社長から子に利益を贈与されている」と考えて,妻と子らに贈与税がかかることがあるのです。

この場合も税理士と相談しながら,進めていくのが良いでしょう。

社長借入金(社長の会社に対する貸付金)を株式に替える

「デット・エクイティ・スワップ」という手法で,頭文字を取ってDESと呼ばれています。

社長借入金(社長の会社に対する貸付金)=負債を,現物出資の形で,資本金=株式に振り替える方法です。

DESを実施すると,「貸付金」が株式に変わりますので,相続財産としての評価も「株式」として評価されます。

社長の会社に対する貸付金(社長借入金)の相続財産としての評価は,貸付金額の額面どおりです。

これに対し,「株式」の相続財産としての評価は,会社の配当額,利益額,純資産額などによって計算されます。経営が悪化しているような会社であれば,振り替えた後の株式の評価が,振り替える前の貸付金額より低く評価されることが通常なので,メリットがあるでしょう。

過去には,DESの実行には裁判所の選んだ検査役の検査を経る必要があるなど,手続きが面倒でした。現在は,この面倒な制度はなくなって,使いやすくなっています。ですから,社長借入金を一気に解消したいという場合には,DESを選択しても良いでしょう。

もっとも,資本金が増加しますので,法人税の均等割額が増加する,外形標準課税の対象になるなど増税の可能性があります。
また,中小企業基本法や法人税法の「中小企業」には,さまざまなメリットが与えられていますので,資本金増加で「中小企業」にあてはまらなくなるときには,そのメリットを失うことになります。

社長借入金を株式に変更する方法によっては,会社に債務免除益が生じます。
会社に対する貸付金の額面額そのものを出資金とできるのではなく,回収可能額をふまえて貸付金の時価を評価して,その額を出資金とすることになります。例えば,社長に6000万円の会社に対する貸付金があったとしても,1000万円しか返済が見込めない状態と考えられる場合には出資金としては1000万円しか計上できません。6000万円の社長借入金が1000万円の出資金として置き換わったときの差額5000万円が債務免除益となるのです。
このときに,債務免除益に繰越欠損金を充てることができない部分があると,課税所得(法人税)が生じますので注意が必要になります。

また,債務免除益が発生する場合には,債務免除をしてもらう場合と同様に,他の株主に贈与税が課税される可能性もあります。

こういう問題を避けるために,先に,会社で社長からの貸付金(社長借入金)と同額の増資決定をし(例えば6000万円),その後,社長が自己資金(あるいは社長個人が銀行からの借り入れで調達したお金)6000万円を実際に会社へ出資金として払い込み,会社が社長からの借入金(社長の会社に対する貸付金)6000万円を返済する(社長個人が銀行借入をしたときは,さらにそのお金で返済をする)という流れで社長借入金を解消して,資本金に振り替える方法もあります。

この方法だと「現金6000万円」を実際に払い込んで増資するため,時価で評価する必要がなく,債務免除益や贈与の問題を避けられます。「疑似DES」といわれ,実務で利用することも多い手法のようです。

社長借入金(社長の会社に対する貸付金)が全て株式に振り替えられ,「株式」として相続財産評価されることになります。

もっとも,税務上のリスクはありますから,これも税理と相談しながら進めていくことが大切でしょう。

貸付金を贈与する

「繰越欠損金がなくて社長借入金を免除(社長の会社に対する貸付金を放棄)してもらったときの債務免除益に課税されてしまう」「貸付金はやはりいつかは返してもらいたいから放棄したくない」「会社を続けている間は返すのは難しいし,相続税の負担を減らしたいのも確かだが,会社を清算して資産売却をすれば返済可能」という場合もあります。

そのときには,貸付金債権を,子ども,孫などに贈与していく方法があります。毎年,贈与税の基礎控除額110万円を考慮して子や孫に贈与することで,税負担をせずに(あるいは軽い税負担で)将来の相続財産を減らしていくことができます。
たとえば,子・孫合計5人に毎年110万円ずつ贈与することを10年繰り返せば,相続財産を5500万円減らすことができます。

しかし,この場合には,贈与がなされた事実を証明できるよう,契約書を作成したり,債務者である会社へ債権譲渡通知したりし,会社の決算書上の借入先の名義も変えるなどの対応が必要です。

また,この贈与された貸付金は相続人から見ると,遺産の先渡し(特別受益)として計算され,相続分から差し引かれてしまうことで,もらった相続人が思わぬ不公平感を感じてしまうことがあり得ます。
例えば,本来は遺産3000万円の3分の1である1000万円の遺産をもらえるはずの子が,すでに1000万円の貸付金債権をもらっているから,あとは何ももらえない,となってしまうことがありえます。会社に現預金の余裕がなくて,返済が難しい場合には,1000万円の貸付金債権があっても,形だけであって,損に感じます。
この対策としては,各相続人に同じように渡しておくなどの対策が考えられます。

また,贈与により貸付金債権を取得した子・孫は,会社に対して,貸付金の返済を求める権利があります。
将来,子・孫が返済を求めてきたときには,会社の資金繰りが悪化するリスクがあります。

この方法を行うときには,将来生じうる問題を意識して行う必要がありますので,弁護士と相談しながら進めていくのがよいでしょう。

この方法の場合,一気に社長の貸付金を減らすことはできません(貸付金をや孫に一度に贈与すると多額の贈与税がかかります)ので,対策に時間がかかります。

贈与税の申告の問題などもありますし,贈与の事実を反映させて会社の経理を行い決算書を作る必要もありますので,事前に税理士と相談し,計画的に進めていくことも大切になります。

相続対策で,弁護士をお探しなら,多治見ききょう法律事務所(弁護士木下貴子)にご相談,ご依頼ください。


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