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離婚裁判で,自分が依頼している弁護士や,裁判官から,陳述書を作成するよう言われた方から,次のようなご質問があります。
離婚裁判を弁護士に依頼している場合には,あなたの代わりに弁護士が裁判所に出廷します。そして,裁判が進むと,裁判官から弁護士に対して「○月○日までに陳述書を出してください」と言われる段階が来ます。(弁護士を依頼していない場合には,裁判官から直接に言われることになります。)
このとき,弁護士の対応は,次のいずれかになります。
当事務所には,他の弁護士に依頼している方が,陳述書(の原案)の書き方が分からないと相談に来られています。
そこで,この記事では,あなたが陳述書(の原案)を作ることになったときの書き方を,次の順序で解説します。
陳述書は,自分が経験したり認識したりした事実を書いて,署名・捺印する書面です。
あなたが経験した出来事(客観面)と,それについて自分がどのように捉えているか(主観面)を記載します。
「陳述書」は,裁判所に提出し,裁判の証拠として扱われます。
離婚裁判では,あなたの主張を認めてもらうために,これまでにあった出来事(事実)を「証拠」で証明しなければなりません。「私は,○○ということを見ました」というような,あなたの体験したことをまとめた「陳述書」が,その証拠の1つとなります。
裁判では,当事者本人が出廷して直接話を聞く「当事者尋問」がありますが,そこで述べる内容を「陳述書」という書面にして予め出しておくという意味もあります。
素人の方が自作する陳述書には,次の失敗がよくあります。同じような失敗をしないようにしましょう。
「許せません」「悲しい気持ちになりました」「とてもつらかったです」「ひどいと思いました」など,苦しい・つらい感情が並んでいるばかりのものです。
何があったのかという客観的事実が伝わりません。感情的な人と誤解されるおそれもあります。
「いつも怒っています」「子どもに関心がありません」「侮辱されました」「馬鹿にされました」など,事実が抽象的にしか書かれていないものです。
裁判官に読んでもらっても,シーンをイメージしてもらえません。
裁判の勝訴につながるような大事な体験を書かなければ,敗訴につながります。
相手の主張には反論したくなりますが,勝訴につながる体験・事実を記載しないまま,反論ばかりをしてしまう失敗もよく見られます。
離婚裁判の結論を決めるのに必要のないことや争いのないことが長く書かれているものです。
裁判官にとって興味のないことが大半の長い文書ということになります。読む気の起こらない長文の中に重大な事実が混じっていても,印象に残りにくく,効果が薄くなります。
必要なことは漏らさず書く必要がある一方,必要のないものは削る意識が必要です。
何の整理もないまま,帰宅が遅い,暴言,浪費,セックスレスなど不満な出来事が並んでいるバラバラなものです。
何が言いたいのか伝わりません。それらの経験,事実を通じて何を裁判官に伝えたいのか,項目ごとの整理が必要です。
日時と子どもの年齢・学年が合っていない,転居の時期が合わないなどの間違いがあるものです。
人の記憶はあいまいで,思い込みにより間違いが生じることもありますが,明らかな誤りが混じると,本当のことまでも信用してもらいにくくなります。
こうした失敗の原因の多くは,陳述書を書く目的をそもそも知らず(考えず)に作っているか,目的を見失っていることにあります。
なぜ「陳述書」を書くのか,その目的が分からないために,何をどの順番で記載したら効果的な「陳述書」になるのか分からず,大事なことを記載し忘れたり,整理が不十分になったり,無駄に長くなってしまったりする失敗をしてしまうのです。
そこで,失敗しない陳述書を作成するためには,まずは「陳述書」を作成する目的を理解しておくことが大切になります。
陳述書は,「裁判官に気持ちをわかってもらう」目的や「意見を伝える」目的で作るものではありません。
離婚の陳述書は証拠です。証拠は,事実を証明するものです。
つまり,陳述書を作る目的は,事実(出来事)の証明をすることです。
陳述書で証明することがありうるものは,たとえば次のことに関する事実です。
どの離婚裁判の陳述書にもこれら全部を書くということではありません。書くべきことは,あなたの離婚裁判の争点になっていること(争いのある事実に関すること)だけです。
あなたの離婚裁判の争点を理解し,その争点に関係する事実を詳細に書く必要があります。
相手方である被告が離婚を拒否しているときは,裁判官は,証拠により,「離婚原因」(判決で強制的に離婚を認める離婚理由)があるかどうかを判断します。
その「離婚原因」は,民法で次の5つに限定されています。
これらのいずれかが証明できれば「離婚請求認容」(離婚を認める)判決となり,証明できなければ「離婚請求棄却」(離婚を認めない)判決となります。
そのため,離婚を拒否されているときには,離婚原因に該当する事実があるかどうかがあなたにとって最も重要な争点となり,これを証明をすることが陳述書の最大の目的となります。
離婚原因のうち1〜4や身体的暴力を理由として離婚を求めているときには,離婚理由の説明はそれほど難しくありません。
他方で,それ以外のことを離婚理由とする場合,例えば,性格の不一致,性的不調和,家族との折合いが悪い,モラハラなどを理由とするときは,離婚理由の説明が簡単ではありません。
なぜかといえば,これらの事実を離婚の理由として説明しても,夫婦間によくあるトラブルとして軽く扱われてしまいやすいからです。裁判官は,夫婦間のよくあるトラブルを「婚姻関係を継続し難い重大な事由」として離婚を命じるわけにはいきません。
ところが,これらの類型の離婚理由では,その状況,つらさが伝わりにくく,「離婚理由が弱い」と言われやすいのが実態です。
そのため,この「離婚理由が弱い」と言われやすい類型の理由で離婚したい場合には,「離婚理由が弱い」で離婚が認められなくなってしまわないよう,陳述書に,「婚姻関係を継続し難い重大な事由」があると言えるまで事実を積み上げられる必要があります。事実の積み上げ不足がないかに注意して,陳述書を作成しましょう。
そして,「離婚理由が弱い」と言われやすい類型の離婚理由で離婚請求をするときには,陳述書が特に重要となります。
不貞行為を離婚原因とする場合には写真・メールなどの物的証拠,身体的暴力には怪我の写真・カルテ・診断書という物的証拠が用意できることが多い一方,「離婚理由が弱い」と言われやすい類型での理由での離婚請求では,物的証拠が見つからないことが多いからです。
そのため,離婚を拒否されているとき,その中でも特に,離婚理由が弱いと言われやすい類型を理由とするときには,唯一の「証拠」として,陳述書が,重要な役割を果たします。
陳述書の出来が悪ければ,十分な証拠が無いということになり,敗訴判決につながります。
陳述書が重要な証拠であることを意識し,必ず,「離婚理由が弱い」とされない(離婚理由を強化した)陳述書を作り上げて,提出しましょう。
以上のことを踏まえて,失敗しない陳述書を作るための3つのポイントをお伝えします。
素人の方が書く陳述書は,抽象的になりがちですので,具体的な事実を書くことを意識しましょう。
第三者が場面をイメージできる程度に具体的に書く必要があります。
どうしていいのかわからないときは,5W1H(「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「なぜ」「どのように」)を意識すると良いとも言われます。次のテンプレートにあてはめてみると良いでしょう。
夫(妻)は,○年○月○日の○時頃,○○(場所)で,○○という発言(出来事)がきっかけとなり,○○の面前で,○○に対し,○○な声で「〜」と言いました。
夫(妻)は,○年○月○日の○時頃,○○(場所)で,○○という発言(出来事)がきっかけとなり,○○の面前で,○○に対し,(○○な声で「〜」と言いながら)○○を用いて○○の勢いで○○しました。その結果,○○が○○になりました。
必要な範囲で,夫(妻)がその言動に至るまでの経過,言動後の経過も書きましょう。
素人の方が書く陳述書は,書いてあることがバラバラで読みにくくなりがちです。
理解してもらいやすくするための整理の方法はいろいろと考えられますが,起こった順序(時系列順)でならべて事実を書くのが良いでしょう。
「婚姻を継続し難い重大な事由」になりうる離婚理由も,さらに,「性格の不一致」「酒の飲み過ぎ」「モラルハラスメント」「浪費」「親族との折り合いが悪い」「セックスレス」「配偶者の病気」といったように類型化できます。これらの類型の中には,離婚理由強化の対策をそれなりに行えば離婚が認められることが多い類型もあれば,対策を十分に行っても離婚が認められにくい類型もあります。
ご自身の類型を理解していないと,全然足りていないのに「これくらい書いておけばいいだろう」との誤った判断で,不十分な陳述書を作ってしまうことになります。
あなたの離婚が,どれくらい認められにくい類型なのか,どの程度の強化対策が必要となるのかを理解しておく必要があります。
また,具体的事実を書くと言っても,類型が異なれば,書くべき内容が異なります。あなたが離婚したい理由の類型に合わせて,離婚理由強化のためのポイントを押さえた陳述書を書くことが必要となります。
無理に長くしたり短くしたりするものではなく,事案に応じて必要なことは書き,不要なことを書かないことが大事です。
離婚理由が弱いと言われやすい類型の離婚では,いくつもの出来事あるいは長期間にわたる出来事について具体的な記載が必要となりますので,離婚原因に関して2000字ぐらいは必要になることが多いでしょう。
逆に10000字を超えるようなものは,無駄な記述で冗長になってしまっている可能性が高いでしょう。
もっとも,離婚原因以外に,財産分与の対象とならない財産(結婚前からの財産など)がある事情や,親権者として自分がふさわしい事情を書くときには,その分長くなるのが当然と言えます。
日付・署名(氏名を自署)捺印の位置は,文章の前でも後でもかまいません。
文章の終わりに「以上」と書くべき(特に,文章の前に署名捺印を置くとき)と言う裁判官もいますが,気にしなくてよいでしょう。弁護士でも,「以上」を書く・書かないが分かれています。
ページ数(ページ下部に記載することが多いでしょう)が書いてあれば,契印(割印)は不要です。
署名の欄に住所は不要です。
文字の大きさ,行数,余白を合わせたWord用の陳述書の様式を用意しました。こちらからダウンロードしてご利用ください。
あなたが丁寧に語っているように文章にします。ですます調が望ましいです。
主語が誤解される可能性のある文では,主語を省略せず,主語を書きます。普通の語り口とは違い,主語がしつこいぐらいでかまいません。
発言を引用するとき以外は標準語で書きます。
あなた自身の表記は,「私」が無難でしょう。
あなたの配偶者である夫(妻)の表記は,「被告」「夫・妻」「相手方」「○○(下の名前)」「○○さん」などがありえますが,「夫」「妻」が適切なことが多いと思います。もっとも,成田離婚のように,夫婦として暮らした年月が短く「夫」「妻」と言うのに違和感があるときには,「○○さん」が良いでしょう。
(弁護士 木下貴子)
著者:木下貴子
平成12年弁護士登録(弁護士歴24年)
多治見ききょう法律事務所所長
岐阜県弁護士会所属
岐阜県多治見市にある事務所には東京からも相談者が訪れ,離婚相談実績は1300件を超える
著書の「離婚調停は話し方で変わる」はAmazonランキング法律部門第1位獲得
離婚を拒否されているときは,離婚理由を「陳述書」に書いて提出することが重要です。特に,離婚を認めてもらいにくい類型の理由で離婚を求めている場合には,裁判官に納得してもらえるような陳述書を書き上げるための準備・対策が必要となります。
また,離婚理由の類型ごとに,書くべきポイントが違います。離婚理由の類型に合わせて,離婚理由強化のためのポイントを押さえた陳述書を書くことが必要となります。
このアドバイスブックでは,離婚理由を11類型に分類し,離婚理由が認められやすい(強い)順序を解説します。そして,離婚理由の11類型の類型別の陳述書の書き方のポイントをお伝えしています。
これまでに1774名の方が手に入れて,利用しています。(1月5日現在)
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弁護士 木下貴子
多治見ききょう法律事務所所長
岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり25年目。
離婚事件を中心的に取り扱い,これまでに受けた離婚のご相談件数は1300件を超えます。ご相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーに対応しています。
離婚・夫婦に関する講演の講師も務めています。
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