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最終更新日:2020年8月11日
裁判所HPより詳しい離婚調停解説・補遺
平成28年ころから,家庭裁判所が,子供のいる親の離婚調停で「親ガイダンス」を実施するようになってきました。日本最大の家庭裁判所である東京家庭裁判所でも,平成30年10月から「親ガイダンス」が始まりました。
そこで,このページでは,「裁判所HPより詳しい離婚調停解説」の連載終了後に始まった新しい手続きである「親ガイダンス」について,解説します。
名古屋家庭裁判所のパンフレットでは,親ガイダンスについて,次のように説明されています。
親ガイダンスは,離婚調停で,子供のいる親を対象にして,家庭裁判所が実施するプログラムです。
法律で決まっているものではなく,それぞれの家庭裁判所の独自の取り組みです。
そのため,実施している家庭裁判所と,実施していない家庭裁判所があります。形態もさまざまです。
始まってからの期間も浅く,試行錯誤で行われていますが,大きく分けて次の4つの形態があります。
集団講習形態ですと,実施日(平日の昼間です)に,家庭裁判所へ行って受講することになります。平日に仕事がある方は,離婚調停の日に休みを取る他に,親ガイダンスの日に休みを取って受講することになります。
子供がいる方は,親ガイダンスの受講対象となるのかどうか,どの形態の親ガイダンスを受講することになるのか,気になるところだと思います。
公開情報が少ない上に,公開情報があっても変更されている可能性があるので,家庭裁判所に問い合わせて尋ねると確実です。
子供がいる親が対象ですが,何歳までの子供がいる場合を対象としているかは,家庭裁判所により様々です。
法律で決まっているものではないので,受講義務はありません。しかし,受講した方が良いでしょう。
離婚紛争に子供をさらすと,深刻な悪影響を及ぼすことがあります。親の言動次第で,影響の程度は大きく異なると言われており,私の実感としてもそう思います。できるだけ子供への影響を軽減したいと思う方でしたら,正しい知識を得て,それに沿った言動をするのが良いでしょう。
家庭裁判所は,特に大切な知識を,短時間で身に付けてもらうとプログラムを作っていますから,効率よく学ぶことができます。専門家向けではなく一般の方向けに作られたプログラムですし,受講にお金もかかりません。
わかりやすかったという感想を持つ方が多いようですが,「映像のクオリティが低い」「自分の子供の年齢に合わなかった」などの感想もあるようです。
一般に,離婚紛争では,親が,子供に様々な悪影響を及ぼしていることに思いが至らなくなりがちと考えられています。そのため,親への働きかけが大事であると理解されています。
こうした理解の下に,家庭裁判所は,手間をかけて親ガイダンスのプログラムを準備し,親に受講してもらおうとしています。
家庭裁判所の調停委員も,離婚調停の当事者である親に,親ガイダンスの受講を勧めるようにしています。受講していない親に受講を勧める必要から,受講したかどうかが記録されています。
調停委員にとって,親ガイダンスを受講してくれないのに,親権を取りたい,沢山面会交流したい,養育費が沢山ほしいと言われても,そんな親を応援したいという気持ちにはなりにくいと思います。
また,親権が争われているときには,子供への影響に関心を持って学ぼうとしているか否かも,考慮されるでしょう。
仕事の都合で受講できないこともあるでしょうが,そのときには,放置せず,裁判所のプログラムの代わりに民間団体の親ガイダンスを受講する,本を買って学ぶなどして,受講しないことのマイナスを補っておいた方が良いでしょう。
また,親ガイダンスの際,調査官からお話があり,配布された資料にも記載のあった子どもの年齢ごとの特徴,対応方法,離婚のことについて伝える場合の注意点などについては,裁判所のビデオ『子どもにとって望ましい話し合いとなるために 子どもの年代別説明編動画』にも詳しくアドバイスされていますので,親ガイダンスに行けない場合には,この動画を見ておくのも良いでしょう。
親ガイダンスの講義には,家庭裁判所の考え方が反映されています。
家庭裁判所によっては,冊子(資料)の配布もあります。子供に配慮した話合いのポイント,離婚紛争にさらされた子供の反応やその対応法などが記載されています。
裁判官・調停委員・家庭裁判所調査官から良い評価を得られる行動をし,悪い評価となる行動を避けることで,裁判官・調停委員・調査官を味方に付けることができるでしょう。
DVの被害者には,つらい内容のプログラムだという意見もあります。
子供に配慮できることが理想といっても,DV被害によりご自身が精神的に落ち着いていない状況では,そこまでの配慮が難しいことも多いと思います。
ご自身が離婚調停をする家庭裁判所の親ガイダンスが,DV被害者への配慮がなされているかどうかわかりませんので,DV被害を受けた方は,家庭裁判所に相談してみる方が良いでしょう。
調停期日と異なる日に行われるガイダンスですと,受講率は25%ぐらいのようです。
男性2割・女性3割というデータ(大阪家庭裁判所の平成28年データ),25%程度という感覚だという平成29年の名古屋家庭裁判所担当者の説明があります。
調停期日の待ち時間に行われている東京家庭裁判所では,受講率80%程度のようです。
名古屋家庭裁判所の親ガイダンスに私が参加したときの体験談を,ブログ「家庭裁判所が望む『子の幸せのために考えて欲しいこと』」に書いていますので,参考にしてください。
平成29年10月から試行されている。
子供の年齢に関係なく受講対象となる。
調停の待ち時間を利用した20分程度のプログラム。
(情報元 「旭川地方裁判所委員会・旭川家庭裁判所委員会議事概要」)
「子供を考えるプログラム」という名称で行われている。
基本は夫婦別席で,第1回調停期日終了直後の受講が多い。
個別事情への対応もしている様子。
(情報元 「第30回盛岡家庭裁判所委員会議事概要」)
平成30年10月から実施されている。
第1回の調停期日の待ち時間に,対象者が集められ,20分程度のDVDの視聴をする。
説明の内容は,調停で話し合うべきこと(親権,養育費,面会交流など),夫婦の紛争下にある子の心理状態,親として配慮すべきこととなっている。
(情報元 「東京家庭裁判所委員会議事概要」,相原佳子「東京家裁における親ガイダンスの取組について」(東京弁護士会LIBRA2019年4月号)など)
平成29年8月から実施されており,次の2種類がある様子。
(情報元 「横浜家庭裁判所委員会議事概要」)
初回の調停前にDVDの視聴をする。
(情報元 「静岡家庭裁判所委員会議事概要」)
平成29年4月から実施されている。
名古屋家庭裁判所本庁では,集団講習形態で,「お子さんに配慮した話合いに向けて」という名称で行われている。
名古屋家庭裁判所一宮支部・半田支部でも,個別面談方式の親ガイダンスが行われている。
(情報元 「名古屋家庭裁判所委員会(第28回)議事概要」)
第1回の調停期日前に,自分で,裁判所ウェブサイトの動画「子どもにとって望ましい話し合いとなるために」を観る。調停期日に,調停委員が感想をきく。
対象は,18歳未満の子がいる離婚調停・円満調停。
(情報元 岐阜家庭裁判所配布資料)
「第29回津家庭裁判所委員会議事概要」によれば,実施されているようですが,詳細は不明です。
「金沢家庭裁判所委員会(第29回)議事概要」によれば,「父母ガイダンス」という名称で実施されているようですが,詳細は不明です。
「京都家庭裁判所委員会(第27回)議事概要」によれば,DVDの視聴のようです。
「大津家庭裁判所委員会議事概要」によれば,1歳以上10歳未満の子供のいる親を対象に実施されていて,DVDの視聴があるようです。
平成28年1月から本格実施されている。
第1回の調停前から受講を案内される(案内チラシ)。
90分で,DVD視聴と講義が内容となっている。
集団講習形態で,1週間に,男性会1回,女性会1回が開催されている。
(情報元 https://www.courts.go.jp/osaka/vcms_lf/281201_p2.pdf)
調停の待ち時間に,オリジナルDVDの視聴とパンフレット交付。
15歳未満の子供がある親が対象。
(情報元 「平成30年度6月期福岡家庭裁判所委員会議事要旨」)
「平成30年度宮崎地方・家庭裁判所委員会(第1回)における議事概要」によれば実施されているようですが,詳細は不明です。
「鹿児島地方・家庭裁判所委員会議事概要(地裁第28回/家裁第29回)」によれば実施されているようですが,詳細は不明です。
(弁護士 木下貴子)
弁護士木下貴子が,このページ「親ガイダンスに行くべきか-講義内容と受講の必要性」をYouTubeでお伝えしています。