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面会交流を拒否すると訴えられるか

離婚のときに取り決めた子どもとの面会交流をさせていないので,夫から訴える,と言われていますが,訴えられるのでしょうか?

というご質問がよくあります。

そこで,この記事では,面会交流を拒否した場合に生じうる不利益をお伝えします。

強制執行(間接強制)

調停や審判で取り決めた面会交流の取り決めを守らない場合,裁判所を通じた強制執行の手続をされることがあります。

強制といっても,裁判所職員や執行官が子どもを家から連れ出して会わせるという「直接強制」は認められていませんので,そのようなことはありません。

その代わり,調停・審判に違反して会わせないことについて金銭(制裁金)支払を命じて強制するという「間接強制」の手続きがあります。
具体的には,裁判所が,1回会わせない度に相手方(会わせてもらえない側の親)に5万円支払えというような命令を発します。

間接強制により面会交流させるよう命じられているのに,面会交流を拒否した場合には,実際に制裁金を支払う義務が生じます。制裁金の回収については,不動産・給料などの財産の差押えによって強制的な回収もなされます。

そして,近年は,裁判所も面会交流を重視しており,制裁金の金額が高額化している傾向が見受けられます。

これまでは,拒否1回の制裁金は5万〜10万円程度が多く,間接強制を命じられても,制裁金を支払うことで済ませて,面会交流を拒否し続ける親もいました。
しかし,最近のニュースによると,平成28年10月4日,別居している長女との月1回の面会交流が裁判で認められたのに,長女と同居する夫が応じないとして,妻が1回の拒否につき100万円を支払うよう求める間接強制を申し立て,東京家裁が認める決定を出していたとされています。その後,平成29年2月8日,東京高裁では,「面会拒否を続けた)夫の態度を考慮すると理由がないものではないが、相当ではない」として,支払う金額を30万円に変更していますが,それでも,養育費が月2〜4万円程度のことも多いことを考えると,その10ヶ月相当の金額であり,金額としては高額化していると言えるでしょう。(報道によれば,東京家裁の決定後面会は再開しているようです。)

したがって,面会交流を拒否すると,間接強制がなされて,それでも拒否し続けると,多額の制裁金を支払わなければならない場合があることになります。

相手方が裁判所に間接強制の命令を求めるためには,「調停調書」「審判書」「判決書」など裁判所が関与した書面が必要です。当事者間の「離婚協議書」「公正証書」では,この「間接強制」はできません。

裁判所での面会交流の合意(決定)でも,全ての場合に,「間接強制」ができるわけではありません。調停条項や判決主文の「文言」によります。詳しくは,別記事「面会交流の間接強制」に記載しましたので,ご覧ください。

慰謝料請求

会わせないことによる慰謝料請求を受けることも考えられます。

金銭の請求という点では「間接強制」と似ていますが,こちらは,子どもと面会ができないことによる精神的な苦痛の賠償請求の形になります。苦痛に対する賠償ですので,苦痛の程度に応じた金額になります。

相手方が,「会わせてくれないのなら訴える」と言っている場合の多くで,このような形式が考えられます。

面会交流を,調停や審判のように裁判所の関与のある形で取り決めた場合に限らず,当事者間の「離婚協議書」「公正証書」で取り決めた場合であっても,このような訴えをすることは可能です。

間接強制手続は,裁判所の間接強制の命令が先行し,その命令に違反して初めて金銭支払義務が生じるものですので,命令の後に面会交流を行えば,支払をせずに済みます。
これに対し,慰謝料請求手続には,裁判所の命令の先行がありません。面会交流の取り決めに違反したとき,いきなり慰謝料請求の訴訟を起こされることがあり,その後に面会交流をさせたとしても,敗訴すれば慰謝料を支払う必要があります。

では,訴訟で,いくらぐらいの慰謝料が認められているのでしょうか?また,誰が慰謝料請求をされる可能性があるのでしょうか?

最近のニュースによると,熊本県内の40代男性(父)が離婚後に別居した長男(12歳)と会えないのは元妻とその再婚相手が拒んでいるためとして,2人を相手にして慰謝料の支払を求めた裁判で,平成28年12月27日,熊本地裁が,事前の調停で義務づけられた面会の日程調整に関する連絡義務を怠ったとして元妻(長男の母)の再婚相手に元妻と連帯して30万円を支払うよう命じ,元妻には70万円の支払いを命じた事例があります。
この事案では,男性(父)は長男と面会交流できるよう熊本家裁に調停を申し立て,元妻(長男の母)の再婚相手を連絡調整役として面会交流することで合意したようです。しかし、元妻や再婚相手から連絡が滞り,日程を調整できないまま約3年5カ月間,長男と面会できませんでした。(元妻側は,自身の体調不良や再婚相手と長男との父子関係の確立のために面会できなかったと主張していたようです)。
裁判官は「被告(長男の母と再婚相手)の主張は面会日程を調整する協議を拒否することを正当化するものではない。長男が7歳から10歳に成長する大切な時期に交流できなかった原告(長男の父)の精神的苦痛は相当大きい」として,元妻(長男の母)と再婚相手のいずれの賠償責任も認めました。

そうすると,面会交流を拒否していた期間,その事情などにもよりますが,100万円前後の慰謝料請求が認められる可能性はありそうです。
また,面会交流の合意の内容によっては,面会するための調整役となった方(再婚相手,両親,兄弟,友人等)も,合意に反して面会するための調整を怠ると慰謝料の支払義務を負うことになりえますので,注意が必要です。

これまでは,再婚した後は,生活感覚やしつけの違いによる子どもの精神的安定への悪影響を防ぎ,新しい家族との間での信頼関係を構築するため,面会交流が制限されることも比較的多くありました。しかし,最近は,面会交流は子どもにとって良いもの,という基本的な考え方があって,個別具体的に「子どもの福祉」に悪影響がある場合に限って面会交流を制限するという運用が徹底されていると感じます。「再婚」を理由にした「面会交流の拒否」にも注意が必要です。

親権者の変更

面会交流を拒否したことによって,裁判所により,親権者の変更がされることもあります。

ニュースで,福岡家裁は,平成26年12月4日,離婚の際に親権者になった母親が,父親に子どもを面会させないということで,父親を親権者に変更する,とされた事例が報道されています。
離婚して長男(7歳)と別居した40代の父親が,親権者の母親が拒むため長男と会えないとして,親権者の変更を申し立てた家事審判で,家裁は「父親と長男の関係は良好だった。円滑な面会交流実現のためには親権者変更以外に手段がない」と判断して,親権者を父親に変更する決定を出しました。

この事案では,東京家裁に離婚調停を申し立てた際,双方が長男の親権を求めていました。別居して,調停中は1週間交代で長男と同居して世話(監護)することで合意していましたが,途中からは母親が長男と住み,父親は月3回,長男と面会できるよう協議で変更しました。その後,月1回の面会交流を条件に母親が親権者となり調停離婚が成立したけれども,面会ができなかったため,離婚から約1年後に父親が親権者変更を申し立てた事例のようです。

したがって,面会交流を拒否し続けた場合,親権者が変更されてしまう可能性もある,ということになります。

まとめ

以上のように,面会交流を拒否した場合には,3つの不利益が生じる恐れがあります。

現在では,裁判所が「面会交流」を子どものため,また,相手方の親のために,とても重要なものだと考えていることが分かります。

なお,離婚後だけでなく,離婚の協議中,離婚調停中であっても,別居している場合には面会交流の問題が生じます。
この場合にも,別居期間中の面会方法を合意すれば,間接強制,慰謝料発生がありえますし,親権の取得にも影響があります。

実際に,私自身,離婚調停中に調査官から「面会交流させないことは,親権者として適切ではない」という事情になり得ると言われたことがありますし,父親が子を連れて別居したけれども,別居中に子を母親と一切面会をさせなかったことも判断の一つとして,子を母親に引き渡すよう命じられた事例(母から離婚調停中に,子の引き渡し調停をされていた事例)もあります。

相手方が,一方的に面会方法を押しつけてきたり,面会時のルールを守らなかったりして,面会を拒否したくなる,というご相談は非常に多いです。この点は,面会交流を希望する側も,子どもが気を使わず,相手方も快く応じられるよう注意すべきでしょう。
面会交流をさせる側にとっては,離婚原因が相手方の不貞行為やモラハラにある場合には,相手方に会うことを感情的に許せない,会うこと自体がつらい,というために拒否したくなることも多いと思います。
しかし,面会を拒否する場合には,自分がつらい,相手方が許せない,ということだけでなく,「なぜ面会交流を拒否するのか」,「面会を拒否することが,子の福祉に資する(子どもの心身にとって良い影響がある)」と言えるのか,注意深く検討して,裁判所にも「正当」と認めてもらえるものかを考えて,対処すべきでしょう。

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