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これさえ読めば,離婚調停が自分でできる〜「裁判所HPより詳しい離婚調停解説」まとめ編
テーマは「離婚調停の前日準備や心得〜流れまとめ」です。
離婚調停で押さえておくべきポイント,準備しておくと効率良く調停が進むポイントは,ご自身がどの場面にいるかによって違います。
つまり,離婚調停申立前なのか,申立後第1回の調停までの間なのか,2〜3回の調停が終わったところなのか,によって違います。
時間がない場合,何を中心に準備したらいいでしょうか?
そこで,この記事では,まず①全体の離婚調停の流れを大まかに把握し,②それぞれの場面で押さえておくべきポイントをお話しします。
離婚調停の大まかな流れは,
(調停前の準備期間)
①離婚調停を申し立てる(離婚調停を申し立てられる)
②第1回調停期日
③第2〜3回調停期日
④第4回調停期日(成立・不成立見込みの調停期日)
(調停成立後の手続き)
となります。
誰が,どのように離婚調停を進めていくのか,
第1回の調停期日はいつころになるのか,
調停時間がどの程度になるのか,
などもう少し詳しいイメージを把握したい場合は,
「離婚調停手続の概要」をお読み下さい。
離婚調停の申立前は,「この調停で何を決めたいのか洗い出すこと」がポイントです。
離婚調停で決めることの基本は,
①離婚すること
②離婚する際の条件です。
申し立てる側は,
①については,離婚したい理由をひとこと,短い言葉で言えるよう準備しましょう。
②については,離婚に伴って,どんなことを決めてもらいたいのか,洗い出すことが大事です。
子どもがいない場合は主に金銭の清算となります。
財産分与,慰謝料,年金分割について,どのような条件を希望するのか,まとめましょう。
子どもがいる場合,これに加えて,親権者,養育費,面会交流などの条件が考えられるでしょう。
離婚そのものの条件ではありませんが,離婚成立までの間の生活費(婚姻費用)についても,希望するのかどうか,決めましょう。
さらに,離婚の条件について,なぜその条件を希望するのかの「理由」を短い言葉で言えるように準備しておくとよりよいでしょう。
離婚調停を申し立てられる側は,申立をされるかも知れない,と分かった時点では,同じように離婚するかどうかとその条件について,どう対応するかを考えてまとめておきましょう。
離婚調停申立前の心得1
離婚するかどうか・離婚条件を整理する 話したいことではなく,話すべきことを話す
申し立てる側(申立人側):申立に必要な書類の作成・準備をすることがポイントです。
自分で,申立てをする場合には,家庭裁判所で書類をもらったり,必要な書類の準備をして申立てをしましょう。
申立書は相手方に送付されるのが原則です。
相手方が読んだときにどのような感情になるのか考え,感情的になって話合いが進みにくくならないよう,書きすぎには注意しましょう。
後で振り返られるよう,申立書はコピー(控え)を取って,提出しましょう。
詳しくは連載第14回「第1回離婚調停期日までの準備,調停期日の持ち物・服装」も参考にして下さい。
申し立てられた側(相手方側):申立書に記載された内容をよく読みましょう。
申立人が,①なぜ離婚を希望するのか,②離婚条件が何かを把握します。
その上で,①,②についての自分の立場,その理由をまとめて,準備をしましょう。
離婚調停申立時の心得2
争いになりそうな点を意識する・争いのある点を中心に相手の感情に配慮した申立書を作成する
申立書を読み直し,離婚の意思,離婚の条件を振り返りましょう。
調停委員は,通常,申立人から話を聞き,その後,相手方から話を聞きます。
調停委員から詳しく聞かれた場合でも答えられるよう,さらに以下の詳しいメモを準備すると良いでしょう。
調停には,メモを持ち込めます。
緊張して話すことを忘れてしまったときに思い出せるよう,準備したメモを持ち込んで話すと良いでしょう。
また,最近は,第1回調停では,相手方も同席で裁判官,調停委員から調停についての説明がされることがあります。
どうしても,同席したくない場合には,同席したくないこと,とその理由を言えるようにしましょう。
相手方は,申立人の話を聞いて,それに対して答えることになります。
予め,申立書に記載されていることについては,再度詳しく話すことができるよう離婚してもいいのかどうか,離婚するとしたら申立人の希望の中で,どの点は了解でき,どの点は了解できないのかをまとめましょう。
その理由もメモに書いておくといいでしょう。
申立書に記載がない事情についても,申立人から言われるであろうこと(離婚理由・離婚の条件)について,予測し,それに対する回答を準備しましょう。
もっとも,第1回調停期日で申立人が話すこと全ては予測ができません。
予測していないことを話され,すぐにうまく答えられない場合には,少し考えてから返事しますと答えておくこともできます。調停委員が再度申立人の話を聞いている間,待合室で返事を考えて準備しておきましょう。
それでも,考えがまとまらない場合には,次回までに考えておきます,と回答することもできます。
第1回離婚調停期日前の心得3
相手が合意できない点を正確に把握する。
離婚そのものが合意できないと,離婚条件には進めないことを意識する。
現在は,多くの裁判所で第1回の調停の終了時に,次回までに申立人,相手方がそれぞれ考えてきてほしい内容,提出してほしい資料について確認があります。
申立人側,相手側共に,この第1回目に「次回までに準備してきてほしい」と言われたことについて,準備をして話せるようにしましょう。
提出してほしいと言われた資料について,提出したくないと感じる場合もあるでしょう。このような心配がある場合には,本当に提出する必要があるのか,提出しない場合にはどうなるのか弁護士に相談して決めても良いでしょう。
第1回の期日で相手方の離婚するかどうかについての意思,その条件についてもはっきりしますので,どの点が譲ることができるかを具体的に考えましょう。
その際,どの点を譲った方が得策なのか,譲らない場合にはどうなりそうか,など不明な点がある場合にも,弁護士に相談して回答を準備すると良いでしょう。
離婚調停途中期日の心得4
調停委員が争点を整理して,離婚調停を成立させるために必要と考えていることを理解する。
争いのない点は,細かいことにこだわりすぎない。
相手が何を合意できないのか,その点を中心に準備して話す。
2〜3回調停の間に,申立人,相手方の離婚に対する意思(離婚してもいいか,離婚したくないのか)とその条件に関するそれぞれの考え方,主張が分かります。
そして,
双方譲れるところがないか(相手は離婚したくないと言っているが,離婚しかないのか,
相手は離婚したいと言っているが,どうしても離婚は了解できないのか,
離婚するとしたら,○○という条件を希望しているが,○○の点について譲れるか,
など,調停委員から,話をされます。
このような調整を経て,おおよそ,調停が成立しそうか(合意ができそうか),調停が不成立(合意ができずに終了)になりそうか,調停委員は予測します。
裁判所,調停委員も取り扱える調停の時間には限界があり,時間を有効に使うべきと考えていますので,
およそ調停が成立する見込みがない場合には,延々と調停を続けることはしません。
そのため,第2〜3回の調停が終了する際,
調停委員から「相手方の気持ちは変わりませんので,次回までに○○の点(相手方が離婚したいと思っている,または,離婚したくないと思っている,相手方が言っている離婚の条件)について,考えてきてください」と言われることがあるでしょう。
あなたが,このように言われた場合,調停委員会としては,相手の主張で譲れる点は分かってきたので,次回この点が譲ってもらえれば,調停成立となるけれど,譲れない場合には調停を不成立にすべき時期と考えているということになります。
このように言われた場合に注意すべきポイントは,言われた条件を譲って調停を成立させるべきか,譲らずに調停を不成立にしても良いか,どちらが自分にとって得策かを考えてくるということです。
つまり,この内容・条件なら調停が不成立になる,その後に裁判になっても仕方が無い,という限界の条件を改めて考えるということです。
その限界の条件を考えるためには,これで調停が不成立になり,もし,裁判になったらどういう結果になりそうか,という予測が必要になるでしょう。
その結果の予測が難しい場合には,弁護士に予測を尋ねてみるといいでしょう。
そして,相手方がこれ以上譲れないと言っている条件でも,多少の範囲であれば,再度考え直して,合意ができるケースもあるので,自分自身が譲れる限界を考えていくことが大事です。
申立人の場合,調停が不成立になってしまうと,離婚すること,離婚条件を決めるためには,(その後急に話合いでの解決ができる,ということがない限り)裁判を起こすしかなくなります。
そのため,本当に裁判でいいのか,その場合の時間,精神的負担,金銭的負担なども考え,最終的な条件を考えることが必要になるでしょう。
離婚調停を申し立てられた相手方である場合,離婚したくない,という気持ちが変わらなければ,調停は不成立になるでしょう。
この場合,申立人が,その後裁判をしてくるかも知れない,ということになります。
その結果,どのようになりそうか,予測して,最終的な主張をまとめてくることが大切です。
調停が不成立になってしまってから,弁護士に相談されるケースでは,裁判にするのはこちらにとって得策ではなかった,離婚調停でもう少し譲っておくべきであったというものも少なくありません。
これまでに弁護士に相談をしていなかった場合には,この時点では一度弁護士に相談して,最終的な考え方をまとめるのが良いと思います。
調停が成立する見込みの場合には,細かい点ですが,どちらが届出をするのかなど,調停成立後に必要となることを見越して,決めておきましょう。
健康保険の切り替え,引越の荷物の運び出し,携帯電話の名義変更,郵便物の転送,その他,財産分与で決まった財産を現金化するために必要な資料(証券等)の引継ぎなどが必要になることもあります。
調停成立後には,相手方と話をする場所がなくなります。
離婚後もメール,電話などで話をしながら調整ができるケースであれば良いのですが,離婚調停をしたような場合には,直接のやりとりで調整をすると揉めてしまう,うまく連絡が取れない,ということも多いです。
調停成立後に具体的に自分が何をすることになるのかをイメージし,予め相手方に頼んでおくべき事,引き継いでもらいたい物がある場合には,最終の調停期日で話ができるよう準備しておくことがお薦めです。
(調停成立後に必要な準備の詳細は,連載第16回「離婚調停はいつどのような形で終わるのか?」を参考にして下さい)
最終回の離婚調停期日の心得5
不成立になった場合を予測する。生活費(婚姻費用),子どもとの面会はどうなるか・・など。
何を譲ることで合意ができるのか?譲らないことで不成立になった場合でも,後悔はしないか? 考える。
成立になった場合,どのような手続きが必要になるか?そのために相手に頼んでおくべきことは無いか?考える。
調停を申し立てるための準備から,第1回目までの準備,その後の調停での具体的な話し方の準備などは,「裁判所HPより詳しい離婚調停解説」連載(全25回)に記載しています。
必要な場面で,読んでいただき,より詳しい内容をして準備することで,安心して調停に臨むことができます。
参考にして下さい。
このページでは,おおまかな離婚調停の流れと各期日・場面での準備・心得のポイントをつかむことで,離婚調停全体のイメージを持っていただけたら嬉しいです。
(弁護士 木下貴子)
弁護士木下貴子が,このページ「離婚調停の前日準備と場面毎の5つの心得」をYouTubeでお伝えしています。