昨今,「クレーマー」という言葉が使われるようになりましたが,そもそも「クレーム」とはなんでしょうか。
一般に言われる「クレーム」は,「顧客からの不満足の表明」と「何らかの要求」を合わせ持ったものです。
要求は,「正常な商品と取り替えてほしい」,「お金で賠償してほしい」,「謝罪してほしい」,というように,明確に示されている場合もあります。要求内容が明確に示されず,「何とかしてほしい」,「どのように対応してもらえますか」という相談・問い合わせの形での要求になることもあります。
企業活動をしていれば,企業側のミスも起きますし,顧客側の不手際や誤解もありうるわけで,クレームの発生は避けられません。企業が業績を上げ,顧客数,従業員数などがあがれば,それだけ取引数,取引を担当する者も増え,クレーム発生数,種類も増える可能性があります。
企業に落ち度があり,法律上,賠償する義務を負ったり,修理する義務を負ったりするような場合には,企業はその義務を果たす必要があります。企業は,契約は守られなければならないという法制度を利用して利益を上げています。契約の相手方である顧客に法的義務を果たしてもらっているのですから,自らも法的義務を果たす必要があります。
また,クレームを受けても適切に対処すれば,顧客からの信頼が維持でき,「正当なクレーム」を述べただけの大事な顧客を逃がさないことができます。悪い噂によって顧客を逃がす風評被害も防止できます。
さらに,適切にクレーム対応をしていますと,クレーム発生の原因をつきつめ,その原因をなくす対策ができる機会となります。そうすれば,企業の存続を危うくするような重大な事故を防ぐことにつながります。
こうしたことから,正しいクレーム対応が必要になります。
では,「正しいクレーム対応」とはなんでしょうか。
正しいクレーム対応は,社会的に妥当性のある対応をすることです。契約社会のルールは法律になっていますので,法律に当てはめた場合の対応が基準となります。
通常のクレームを受けた場合の正しい対応手順は,以下の順序で行われます。
(1)まず,クレームの内容を顧客から聞き取って,クレームを特定することからはじまります。
(2)次に,企業側では,クレームに該当する事実があるか,原因が何であるか,企業側に責任があるか,といったことを調査します。
(3)そして,企業側に責任がある場合には,社会的に妥当性のある対応案を顧客に提示します。責任がない場合には責任がない事情の説明をします。
顧客側から,対応案について別の案が提案されることもあるでしょうが,妥当性のある範囲内で,合意に至ることが多いと思います。
対応案は,法律にあてはめた場合の責任が基準になります。しかし,必ずしも法律にあてはめた通りである必要はありません。顧客に不愉快な思いをさせたが賠償義務までは無いというような場合に,菓子折を持って行って謝罪することも適切な対応となりえます。
まずは,法律にあてはめた場合,どのような責任が生じるのかを理解した上で,対応方針を決めなければなりませんので,責任の有無,範囲が不明な場合は,弁護士に相談するべきです。
通常は「正当なクレーム」であることが多く,顧客から正当なクレームがなされた場合,上記手順で正しく処理されていくべきですが,クレームの中に「不当クレーム」が混じり込んできます。一般的にはこの「不当クレーム」をする方を「クレーマー」とよんでいます。
先ほど述べたように「正当なクレーム」を言って下さる顧客は,企業にとって歓迎すべき顧客です。他方で,「不当クレーム」を言う「クレーマー」に何の対処方法も示さず,従業員に対処させれば,その対応で通常業務もできず,精神的にも多大な負担となりますので,モチベーションが低下する可能性が高くなります。
したがって,「不当クレーム」と「正当クレーム」の見分ける必要がありますが,「不当クレーム」と見分けるポイントは何でしょうか。
1つ目は,クレームの内容が異常であること。
2つ目は,クレーム行為の態様が異常なクレームです。
内容も行為の態様の両方が異常な場合もあります。
こうした不当クレームに対する対応については,
「不当クレーム・悪質クレーマー対応」のページをご覧ください。
多治見ききょう法律事務所では,クレーム対応体制の構築や,実際のクレーム対応のご相談・ご依頼もお受けしています。