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最終更新日:2020年1月11日
こんなとき,どう計算するの?「養育費算定表では分からない養育費の計算方法」シリーズ第4回
現在,裁判所の調停・審判では,「養育費算定表」に年収をあてはめて,簡易に養育費が算定されています。
「養育費算定表」は,ウェブで簡単に手に入るのですが,実際の事例では,養育費算定表を見ても,どのように計算したらいいのか分からない場合があります。
このような場合にヒントとなる考え方を連載してお伝えしています。
第4回のテーマは,「子供の数が多い,子供を一人ずつ引き取った場合など,算定表では想定していない場合の計算方法」です。
子供が4人以上の場合には,
があります。
オリジナル算定表を用いる方法については,多治見ききょう法律事務所において,子供が4人の場合の養育費算定表を作成・公表しています。別記事「養育費算定表子4人表の作成-裁判所の算定表の分析から」をご覧ください。
このページでは,裁判所の養育費算定表を使いながら計算する方法を解説します。
養育費算定表は,子供がどちらの親と同居しているかにかかわらず,裕福な方の親と同レベルの生活ができるような養育費の額が計算されます。大人と子供では必要な生活費が異なりますので,大人である親の必要とする標準的な生活費と子供の必要とする標準的な生活費を考慮して,養育費の計算がなされています。
そして,親(大人)の標準的な生活費を100としたときには,次の数値が,それぞれの標準的な生活費とされています。これを,「親の(生活費)指数」「子の(生活費)指数」と呼んでいます。
例えば,権利者(養育費を請求する側)が14歳以下の子供を4人育てている場合には,まず,算定表で14歳以下の子供が1人の場合の養育費の額を拾います。
例えば,義務者(養育費を払う側)の年収250万円,権利者(養育費を請求する側)の年収0円の場合,14歳以下の子供が1人の算定表を見ると,養育費は月2〜4万円であることがわかります。
義務者(養育費を払う側)は,自分(大人1人・生活費指数100)と同レベルの生活をさせるとき,自分の生活費は取っておいた上で,子供1人(生活費指数62)に月2〜4万円を養育費として支払うべきということになります。生活費指数合計162のときに,子供1人(生活費指数62)への養育費の額が,月2〜4万円ということです。
14歳以下が子供4人のときに,1人分の養育費をそのまま4倍しては,養育費を支払った親の生活レベルが子供よりも低くなってしまいます。
自分(大人1人)(生活費指数100)の生活費を取っておいた上で,子供1(生活費指数62)・子供2(生活費指数62)・子供3(生活費指数62)・子供4(生活費指数62)の分を養育費として支払うべきことになります。
生活費指数合計に占める子供の生活費指数の割合に養育費の額が比例するものとして,養育費の額を計算します。
上の例で,養育費の額が2〜4万円,生活費指数合計348のときの,子供4人(生活費指数合計248)への養育費Xの額を計算すると次のようになります。
(62÷162):(248÷348)=(2〜4万円):X
X×(62÷162)=(2〜4万円)×(248÷348)
X=(2〜4万円)×(248÷348)÷(62÷162)
=3万7241円〜7万4482円
この場合,4人の子供の養育費は,3万7241円〜7万4482円であるということになります。
養育費算定表は,全ての子供が,権利者(請求する)側で暮らしていることを想定して作られているので,子供を1人ずつ引き取った場合のように,義務者(請求される)側にも子供が暮らしている場合には,そのままあてはめることができません。
この場合にも,養育費算定表の基になった考え方に遡って最初から計算することもできますが,養育費算定表と生活費指数を使いながら計算する簡易な方法を紹介します。
例えば,義務者の年収350万円,権利者の年収0円,14歳未満の子供をそれぞれ権利者,義務者が1人ずつ一緒に暮らしている場合を考えてみます。
この場合,2人の子供を権利者が養育していると仮定して,養育費算定表で養育費の額を拾うと月6〜8万円となります。
14歳未満の2人の子供の生活費指数は62+62=124です。
義務者は,権利者が養育している1人分の生活費を支払えばいいので,62/124=1/2を支払えば良いことになります。
(6〜8万円)×(1/2)=3〜4万円
が養育費となります。
養育費算定表は,権利者が子供の監護を負担していることを前提としていますが,月に1〜2回程度の面会交流であれば,そのときに義務者が多少子供のために費用を使ったとしても,一般的には養育費の算定には考慮されていません。
しかし,さらに面会交流が柔軟になされており,子供が父・母の家を行き来しているような場合には,義務者も自分自身が子供のために食費など相当の費用を使うようになりますので,養育費の負担金額を調整する必要が生じてきます。
この場合には,監護を負担している期間,割合などを考えて養育費の金額を調整しています。
例えば,算定表で計算すると養育費相場が月4〜6万円となる場合に,1ヶ月の4分の1程度は相手方(義務者)の家で生活しているような場合には,そのうちの4分の1程度の費用4〜6万円×1/4=1万〜1万5000円は既に負担しているとされることもあります。この場合,(4〜6万円)−(1万〜1万5000円)=3万〜4万5000円が養育費となります。
もっとも,日数だけで見れば,確かに4分の1は相手方と一緒に住んでいるけれど,文房具など日常生活に必要な物は全て権利者が購入しているような場合には,日数の割合だけで負担割合を計算するのが不適切なことも多いので,実際に子供にかかる費用をどちらがどれだけ負担しているか,という「負担割合」を考えて調整されます。
とよく尋ねられますが,面会交流ができているかどうかと,養育費を支払うかどうかは別の問題なので,面会交流ができていなくとも,親の義務として支払わなければならないことになります(反対に,養育費を支払ってもらっていないからといって,面会交流させなくて良い,ということにもなりません)。
実際に,裁判所で,子供に会えないことを考慮して支払う金額を減らしてもよいのか争われた事案があります。一審(家庭裁判所)では考慮して減額する判断がなされましたが,高等裁判所で取り消されています。
やはり,面会交流ができていなくとも,原則としては養育費の「支払う金額」にも影響せず,算定表にあてはめて計算すればよいことになります。
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