相続税法の小規模宅地の課税の特例の改正

（注：この記事では，節税対策について記載していますが，一般論があてはまらない事例もありますので，実際に節税対策をする際には，専門家にご相談ください。）

最近税制改正を受けて，雑誌などでよく目にする「相続税対策」ですが，弁護士目線でみると，本当に役に立つのかな？と思うことがあります。

相続税法の改正を含む「所得税法等の一部を改正する法律」が平成２５年３月２９日に成立し，平成２７年１月１日以降の相続に適用されています。

特定居住用宅地の評価減の特例が利用できる面積が増えていますし，特定事業用宅地との面積の調整がなくなりましたので，こうした要件を満たすことができれば，相続税の節税となります。もっとも，居住場所や事業のやり方を変更してまでも節税をめざす必要がある場合は限られてきます。

土地建物を買ってきて飲食店・小売店を始めれば，土地について８０％の評価減になる（適用面積も広い）のですが，設備投資をして人を雇ってというのでは現実的な話ではありません。
既にある更地の有効利用としても，借金をして建物を建てた場合，原則は相続人の相続分に応じて借金を分割して負うことになるので，借金(負債)をだれか一人の相続人だけが引き継ぐためには，債権者との間でその調整が必要になるなど，遺産分割方法が複雑化して，話合いも長期化することが多いものです。現金，預金があまりなく，主な遺産が不動産だけ，という場合には，不動産をだれがどのように取得するのかを決めなければなりませんが，経験上非常に困難を極めます。売却可能な更地があれば，これを売却して金銭で支払って残りは一人が取得する，なども考えられますが，建物が建っている土地となると売却も難しくなります。
・・かといって，なんの対策もしない，できない，というのでは，淋しいでしょうか(笑)？
もし，やってみるのであれば，賃貸不動産の家賃，修繕などの管理をどのようにしていくのか，負債のある場合は，どのような返済計画となるのか，固定資産税に支払いはどのように変動するのか，相続人への承継の仕方までを見越して遺言書を作っておくべきではないか，など残された相続人の不安も考えた長期的な視点が必要です。
弁護士目線で考えると，そもそも「相続税対策」も，究極的には相続税を減らすことによって相続人への円滑な遺産相続をさせる＝「相続対策のうちのひとつ」のため，のはずなので，本末転倒となるような安易な「相続税対策」は注意が必要だと感じます。

まだ手軽でリスクの少ない方法として，自宅の他に土地を買ってきて駐車場業を始めるとしても，多治見市や可児市の市街地で２００㎡１２００万円の土地を買って駐車場事業を始めて５０％の評価減をしてもらって６００万円の評価減です（時価と相続税評価額は異なるというような話は捨象しています）。税率３０％で１８０万円の節税ですが，土地を買うときに，仲介手数料が４２万円（＋消費税），登録免許税１８万円，不動産取得税１８万円（もっともこれらを支払った分の遺産が減るので相続税額も減ります）。将来相続人が土地を売るときの仲介手数料が４２万円（＋消費税）。
多額の相続税がかかるほどの財産を持っている方が，手間をかけてまで行うような話ではなさそう……と思いますが，どうでしょうか？岐阜県の東濃や中濃地区でなく，名古屋，東京などの都会の土地ならメリットがあるかもしれませんね。

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