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婚姻費用分担請求調停を離婚調停と同時に申立てるか?

これさえ読めば離婚調停が自分でできる「裁判所HPより詳しい離婚調停解説」連載の第7回
今回のテーマは「離婚調停前に確認・検討すること〜その4:婚姻費用分担請求調停を離婚調停と同時に申立てるか?」です。

「婚姻費用の分担請求」は,要するに離婚成立までの生活費の請求です。 (結婚式の費用ですか?と聞かれることが多いですが,そうではありません。)

「私は十分な収入があるので,離婚までの生活には困りません」という方は,読み飛ばして下さい。(子連れ別居の場合は,児童手当などに関する部分だけお読みください。)

離婚が成立するまでは,例外的な場合を除いて,相手方の収入も合算して保育料の計算をしますし,児童扶養手当ももらえず,医療費の免除などの制度も利用できません。(詳細は,別記事「別居後離婚後の児童手当・児童扶養手当・保育料等の扱い」をご覧ください。)
そのため,離婚ができるまでの生活を維持するのに,生活費(婚姻費用)の請求をした方が良い場合があります。

以下に当てはまる方は,特に申立を検討する必要があります。

  • 専業主婦,パートなどで相手方(夫)よりも収入が少ない方
  • 別居してから,相手方から生活費を一切もらっていない,という方
  • 相手方が離婚を希望しておらず,離婚の成立までに時間のかかりそうな方
  • 未成年,就業していない子どもを育てている方

反対に,ご自身の方が収入がある場合,子どもを相手方が引き取っている場合などは,こちらが婚姻費用を負担しなければならない場合もあります。
現実としていくらか婚姻費用(生活費)を負担してもらっている場合には,そのまま生活費をもらっていた方が,婚姻費用の分担請求調停をして決めてもらうよりも金額が多いこともよくあります。

婚姻費用の分担請求ができるのか,した方がいいのか,疑問に思った場合には,弁護士へのご相談をお勧めします。婚姻費用の分担請求の相談や,弁護士への依頼の方法については,別記事「別居中の生活費(婚姻費用)の請求手続と弁護士サービス」もご覧ください。

婚姻費用の分担請求の権利

生活費が不足して困っている妻

民法760条は,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めています。夫婦は,別居していても,離婚するまで夫婦であることに変わりありませんので,婚姻から生ずる費用を分担する必要があります。

衣食住の費用(家賃,食費,光熱費など)のほか,出産費,医療費,衣料費,未成熟子の養育費,教育費(保育料,学校の費用など),相当の交際費などのおよそ夫婦が生活していくために必要な一切の費用がこれに含まれます。(養育費は「離婚後」の「子ども」の生活費,婚姻費用は「離婚するまで」の「妻(配偶者)も含めた家族全体」の生活費です。)
資産,収入その他に一切の事情を考慮してなすべき分担がなされないときには,分担するように請求することができることになります。
現在の実務では,双方の収入でどちらがどれだけ負担するのか決められています。
浮気を原因に家を出た妻に婚姻費用(生活費)を支払わなければならないのですか?と聞かれることも多いです。事情によっては例外的に請求できないとされた事例もありますが,少なくとも,子どもさんがいる場合,別居する理由にかかわらず,なんらかの生活費の負担は免れないのが原則です。

婚姻費用の分担請求の方法

婚姻費用の分担請求調停の申立て

婚姻費用を支払ってもらうには,婚姻費用の分担請求調停の申立をする必要があります。
離婚調停をするときでも,離婚調停の申立書とは別の申立書を出す必要があります。
申立書には申立手数料として収入印紙1200円分を貼る必要がありますし,連絡用の切手をあらかじめ予納する必要もあります。必要な切手の額は,裁判所によって違いますので,提出する裁判所に問い合わせして下さい。

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婚姻費用の分担請求調停が不成立となったとき

裁判官が「毎月末日限り5万円を支払え」との審判

離婚調停は,調停が不成立ですと,改めて離婚訴訟を提起しなければなりませんが,婚姻費用の分担請求調停は,合意に至らず調停が不成立となったとき,自動的に審判手続に移行します。そして,裁判官が審判という形で婚姻費用の額を決定します。
つまり,離婚そのものは改めて離婚裁判(離婚訴訟)をおこして,裁判(訴訟)を続けていくことになりますが,通常は離婚裁判(離婚訴訟)の方が長くなりますので,その間のいつかの時点で先に婚姻費用の額が決まり,離婚が成立するまで,これを支払ってもらうよう請求できる状態となります。
審判に不服があれば高等裁判所に対して即時抗告ができますが,不服申立期間内に不服申立が無かったり,高等裁判所で抗告が棄却されれば,審判で判断された通りの支払をしなければならなくなります。

調停・審判が守られないとき

調停で調停条項として合意された内容や,審判で決定した内容については,判決と同じ効力があって,守られない場合には,強制執行(財産差押え)をもすることができます。

婚姻費用の分担請求調停の同時申立のメリット

1 安心して別居生活を送ることができる

離婚すれば受けられるであろう児童扶養手当の受給もなく,医療費免除などの優遇もない中で別居生活を続けるのは,生活費がかさんで苦しくなりますが,相手方に安定収入があり,生活費をもらえる場合には,離婚不成立になっても別居中の生活費のルールが定められ,安心して別居生活を送ることができます。

2 離婚調停の不成立後に改めて婚姻費用の分担請求調停を申し立てるのと比べて,調停の回数・期間が短縮でき,支払ってもらえる期間・額も多くなる

裁判所は,生活費を実際に支払ってくれなくなったとき(例えば別居時)からではなく,婚姻費用の分担請求調停を申立てした時点からの生活費しか認めない場合も多いので,申立が遅くなれば,認めてもらえる婚姻費用の額,期間が少なくなることがあります。

3 離婚を希望していない相手方が真剣に離婚を考えるきっかけとなる

このまま別居生活を続けても,元に戻る可能性が低い中,妻の生活費だけは負担しなければならない(離婚すれば子どもの養育費だけとなります)という点に気づき,相手方が真剣に離婚を考えるきっかけともなります。

婚姻費用の分担請求調停の同時申立のデメリット

1 申立が無駄になることがある

調停の限られた時間内で話し合いをすることになるため,離婚が合意ができそうなとき,離婚条件の調整が優先され,婚姻費用の分担請求調停の申立が無駄になることがあります。

2 離婚成立が遅れることがある

反対に,婚姻費用の調整に時間が取られ,離婚するしないの調整,離婚条件の調整に充てられる時間が減り,離婚調停が長引く可能性があります。
結果的に調停で離婚できず離婚訴訟をする場合,離婚が遅れることがあります。

夫と別居して私が子どもと一緒に暮らしているのに児童手当が夫の口座に入るという場合

婚姻費用の分担請求調停をしなくとも,児童手当を確保する方法があります。
離婚を求める内容証明郵便,または離婚調停中であることを証明できる書類を用意し,役所で手続きすることによって,自分の口座に児童手当を受け取ることができます。
また,保育料の計算についても,市町村によっては,離婚調停中であることを前提に相手方の収入を加えず算定してもらえる場合もあるようです。市役所に必要書類や手続きを尋ねて進めてください。
分からない場合には,弁護士にご相談下さい。
児童手当や保育料については,別記事「別居後離婚後の児童手当・児童扶養手当・保育料等の扱い」に詳しく書いてありますので,ご覧ください。

離婚調停と婚姻費用Q&A

(婚姻費用について)
Q 私の名義の通帳から夫の国民健康保険税が毎月引き落としされていましたが,私が勝手に口座を解約しました。夫は,勝手に口座を解約したから国民健康保険税は支払えないと言います。
この場合,夫に養育費,婚姻費用は請求できるのでしょうか?
A 本格的に離婚の話合いをしたり,別居して離婚調停の申立をした場合,とてもよくあるのがこのような生活費(婚姻費用)の支払の問題です。
離婚するまでの生活費は,婚姻費用と言い,離婚後の子どもさん達の生活費のことを養育費と言います。違いは,離婚するまでは,あなたの生活費も請求できる点です。離婚後は,あなたと夫は他人となるので,生活費を請求することはできなくなり,子どもさん達の生活費である養育費だけが残ることになります。つまり,養育費と婚姻費用とを別々に請求できるのではなく,離婚前は婚姻費用の一部に養育費は含まれている関係になります。
国民健康保険税の引き落としができなくなったからと言って,夫が婚姻費用(離婚後の養育費)の支払をしない,ということはできません。したがって,あなたは婚姻費用(離婚後は養育費)を請求できることになります。
もっとも,国民健康保険税(または国民健康保険料)については,世帯毎に課税されますので,あなたと夫が同居している場合(住民票の住所が同じ)は,世帯主が夫であれば,夫に支払義務があることになりますし,別居中(住民票の住所が異なる)場合には,あなたの世帯の世帯主が納付する義務を負います。
市町村に納付しないといけないのは誰なのか,という第三者に対する問題(外部に対する問題)と,生活費を請求できるかというお二人の間での問題(内部での問題)は別に考えることになります。ただ,あなたが夫の分の国民健康保険税も支払っている場合と,夫が自分で支払う場合とでは,実際の金銭負担は違うので,婚姻費用を請求する場合は,こういった家計の費用を誰が負担しているのかも考慮して決めることになります。
(離婚するか,別居して婚姻費用をもらい続けるか)
Q 私はすぐに離婚をしたいわけではなく,離婚を急いでいるのは夫です。離婚は子供たちが大きくなるまでしません,婚姻費用をずっと払ってくださいと言おうかと思いますが,離婚した方がいいでしょうか?また,婚姻費用の調停もしていますが,いつ,審判にしてもらったらいいのでしょうか?審判にするデメリットはありますか?
A まずは,今回の離婚調停を通じて,達成したい「ゴール」を明確にすると良いでしょう。その視点として,多治見ききょう法律事務所では,「時間」×「お金(経済的負担)」×「心(精神的負担)」の3つの視点が重要と考えています。
今回のご質問である,離婚すべきかを考える場合,具体的には,
  1. すぐに離婚調停→ 経済的には難,かかる時間は中,精神的には離婚に進めて中
  2. ずっと別居→ 経済的には良,精神的には夫婦の義務が続くので,負担高い
  3. しばらく別居→ 経済的には当面良なので中,その後離婚手続きをすると長期化,精神的負担は中
というようなイメージで,自分の望む状態(ゴール)を考えることになると思います。

このメリット・デメリットの程度は,人により違いがあります。

  1. 離婚裁判では,離婚できない可能性があるか
  2. ご相談者自身の経済力の程度
  3. 離婚に伴う慰謝料・財産分与の支払が期待できる状況かどうか
  4. 離婚すると児童扶養手当などの福祉サービスが見込める状況かどうか
など,状況が様々であるからです。

もし,婚姻関係が破綻した理由が,夫の浮気(不貞行為),暴力(DV)などのような場合であれば,離婚裁判で夫からの離婚請求が認められにくいことになりますので,婚姻費用を支払い続けてもらう,というのも一つの方法かも知れません。あとは,精神的負担などを考えて, 「ゴール」を明確にしましょう。
(「3つの視点の詳しい説明」については,このページに詳しく書きましたので,参考にして下さい。)

自分が最も望む効果,複数の望みがあるときはその「バランス」などを考え,自分にとってよいと思うゴールを選ぶことになります。

婚姻費用の分担の調停から,審判に移行するタイミングは,ひと言で言うと,話合いでは婚姻費用(離婚までの生活費)の金額が決まらないとはっきりした時点です。つまり,夫が一切婚姻費用を支払わない,もしくは,支払うと言っているけれど,その金額の差がひらいているような場合です。審判にした場合のデメリット(注意点)としては,審判では,裁判所の裁判官が,原則として婚姻費用算定表の基準に基づいて決めてしまうということです。もし,自分が望んでいる婚姻費用の金額が,裁判官によって認められる可能性が低い場合,夫が現在提示している婚姻費用の金額で調停による合意をした方がいいかもしれません。審判になったら,どのような結果となる可能性があるか,「見込み」を考えながら,審判に移行してもらうかどうかを考えましょう。また,審判で裁判所に決められるよりも,調停による合意によって自分で了解した婚姻費用の金額(調停による合意金額)の方が,強制執行などをしなくとも,支払ってくれる可能性が高いです。このようなことも考えて,審判にするかどうかを決めると良いと思います。

離婚すべきか,別居のまま婚姻費用をもらい続けるか,婚姻費用の審判に移ってもよいか,など判断に迷う場合は,弁護士に相談すると良いでしょう。

(弁護士 木下貴子)

動画解説

弁護士木下貴子が,このページ「婚姻費用分担請求調停を離婚調停と同時に申立てるか?」をYouTubeでお伝えしています。

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この記事を書いた弁護士

著者木下貴子

弁護士 木下貴子

多治見ききょう法律事務所所長

岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり24年目。
離婚事件を中心的に取り扱い,これまでに受けた離婚のご相談件数は1000件を超えます。ご相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーに対応しています。
離婚・夫婦に関する講演の講師も務めています。
著書の「離婚調停は話し方で変わる」(ききょう出版)はAmazonランキング法律部門第1位を獲得しました。

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