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「裁判所HPより詳しい離婚調停解説」連載の第18回。
とのご質問がよくあります。
相手も離婚することを了解している場合,「離婚の理由」は問題とされず,離婚することができます。
同様に,解決金,今後の生活費というような気持ちで「慰謝料」を支払うことを了解している場合も「離婚の理由」を問いません。
しかし,相手が離婚を了解していない場合,離婚裁判で「離婚」を認めてもらうには,「不貞行為があったこと」「悪意で遺棄(放置)されたこと」など,民法770条1項に記載された「離婚原因」が相手にあること,これを立証できることが必要です。
また,離婚裁判で慰謝料を認めてもらうためには,この「離婚原因」を裁判所で認めてもらえることが前提となります。
離婚調停は話合いの手続きですので,「離婚原因」がなくても,離婚調停を申し立てることはできます。
しかし,離婚したい理由が離婚裁判の「離婚原因」にあてはまらないような理由であるとき,理由があっても説明が下手で伝わらないときには,調停委員も離婚したくないという相手に説得的に離婚を勧めづらいものです。調停委員に「それなら離婚も仕方ないよね」「このケースなら,慰謝料を請求するのも当然だよね」と共感すらしてもらえないようでは,なおさらです。
離婚したい理由を説明して,離婚の原因が相手側にある(相手のせいで夫婦を続けられなくなった,相手の方が悪い)ことを調停委員にわかってもらえば,調停委員が,相手に離婚に応じるよう説得し,慰謝料を支払うよう説得してくれる可能性が高くなります。
離婚調停では,申立人が最初に調停委員から尋ねられることが,離婚したい理由であることが多いです。
調停委員は,離婚したい理由の説明を,離婚させる方向で調整すべき事案か否かの判断の参考にします。慰謝料を支払う方向で調整すべき事案か否かの判断の参考にもします。
離婚調停申立書に「申立ての動機」欄に離婚調停申立をした理由を選択して裁判所に提出してあります。また,付属書類で詳しい理由を書いて提出していることもあります。
申立て段階でこのように書面説明がしてあっても,確認的に,あるいは詳細な経緯の説明を求められることになります。
離婚調停を申し立てられた相手方も,離婚をしたい理由を説明することがあります。離婚には異論が無いが,申立人の言い分とは夫婦関係破綻の理由が違うというときです。慰謝料を請求されているけれど,支払いたくない,または,支払ってもいいけれど,金額を下げたい場合には,相手方が積極的に離婚理由について反論することになります。
離婚理由によって,説明が容易なものと,説明が難しいものがあります。
民法770条1項1号〜3号に記載された離婚原因(不貞行為,悪意の遺棄,3年以上の生死不明)に該当する理由は,説明が比較的容易です。しかし,不貞行為を除き,この事例に該当する事案は多くありません。
なお,4号の強度の精神病は,時々ご相談がありますが,病気の原因や,病気になったこと自体を責められるのか,といった問題があり,説明が容易な類型とは言えません。
まずは,調停委員の納得を得やすい「説明が容易な離婚理由」と,納得を得にくい「説明が難しい離婚理由」とを分けて,対処の方法をお伝えします。
離婚したい理由が,
であれば,調停相手の方が悪いということを理解してもらいやすいでしょう。 これらは,正当な言い訳が成り立ちにくい離婚理由です。
などの言い訳は通りません。(もっとも,これらの事情が慰謝料を軽減するかどうかに反映されることはあります。)
したがって,不貞行為(不倫・浮気),身体的暴力,浪費,過度の飲酒の詳しい事実関係を説明するだけで済みます。
離婚したい理由が,
などの場合には,上手に説明しないと,相手の方が悪いということを理解してもらえません。
これらは,背景事情次第で,別に相手が悪いわけではなかったり,悪いとしても離婚すべきほどのものではなかったりすることが多いからです。
また,あなた自身にとって離婚したいと思うような理由であっても,調停委員の価値観と合わないような説明をしているときや,男性特有・女性特有の価値観で説明しているときには,理解をしてもらえないことになります。
「調停委員に自分の気持ちをわかってもらえない」,「調停委員が,相手のことばかり聞いて,相手の味方になっている」というご相談は多いですが,その原因が,実は,「伝わるような説明ができていない」からであることも多いです。
そこで,説明が難しい離婚理由のときに,どのように説明すれば良いかを,今回と次回に分けて,ケース別に解説します。
私がここで説明する「モラハラ」は,肉体的暴力はないけれど,言葉や態度(道徳的に許されない方法で)で相手に精神的ダメージを与えるというイメージのものです。(パワハラの判断で行われるように,正式な定義にあてはめて,あてはまるかどうかの区別をすることを意識していません)
最近は「モラハラ」(モラルハラスメント)という用語が浸透していて,相手の行為がモラハラであるということを強調するご相談者・ご依頼者の方がいらっしゃいます。
しかし,「夫がモラハラなんです」と説明されても,説明を受けた人には,夫婦間で何が起きたのか全くイメージできません。「夫が暴力を振るうんです」という説明を受けた人が,殴られる状況・蹴られる状況をイメージできるのとは違います。調停委員にも「モラハラ」に対する理解がある程度進んできているとは思いますが,調停の当事者が分かりやすく説明する必要があります。
たとえばどんなことか(どんなときに相手が何を言うのか)
を具体的に説明することが必要です。
それでも伝わっていないようであれば,
どれくらいの頻度で発生するのか
を説明します。
それはひどい,言っていいことのレベルを超えている,と理解してもらえればよいのですが,説明方法や調停委員の感性によって理解してもらえないことがあります。
そのようなときには,別の事例に切り替えて,別の事例を説明すると理解してもらえることがあります。またできるだけ,実際の場面を説明した方が,調停委員もイメージすることができます。
「モラハラ」と言われているものの中には,気に障ったときに,興奮状態で起きる態度・発言と,別に気に障っているときに限らない冷静な場面での日常的な態度・発言があります。
「夫婦げんか」の際の発言は,この興奮状態での発言のため,ある程度は許されるのではないかという感覚が社会通念上あります。
気に障ったときに起きる態度・発言のモラハラについては,モラハラの加害者から「普通の夫婦げんかにすぎない」「売り言葉に買い言葉」という反論をされることが多いものです。調停委員にも,このように捉えられてしまうケースが多いと感じます。
例えば,「0歳の子どもを夜中に一人で置いて,出かけていた」というような,こちらが非難されておかしくないような行為がきっかけで「夫婦げんか」になった場合には,「普通の夫婦げんか」ではなく,社会的に許されない「モラハラ」なのだ,ということを説得的に説明する必要があります。
モラハラには,普通の夫婦げんかとは異なり,次の要素が見られます。
このような事実が伝わるように話すと良いでしょう。
気に障ったときに起きるモラハラは,
など,被害者に落ち度のないことや些細なことがきっかけで発生することの方が,むしろ多いものです。
主婦の務めを果たしていないという系統の非難のモラハラ事案も多いですが,箸の並べ方が正しかった(許容範囲であった)ことなどを一生懸命説明するのは方向性を誤っています。
この場合は,その非難の仕方の異常性を主張すると共に,このような些細なことを理由として,非難すること自体の異常性も話をすることになります。この場合には,先ほどの「こちらが非難されておかしくない」とは言いにくい事例となるので,調停委員も「ある程度のことは許されるのではないか……」という感覚は少なくなります。
このように「モラハラ」を受ける場面は色々ですが,モラハラと言われている行為は,被害者側に非難されるべき行為があったら許されるものではない,ということを意識しましょう。
議論をせずに,事例の説明,モラハラに特徴的な要素に該当する事実の説明に徹しましょう。
モラハラの被害者が子供と一緒に暮らしているときには,面会交流のことも話し合われることがあります。
モラハラだけを理由に面会交流をさせたくないという要求をしても,理解してもらえません。面会交流させるのが難しい事情があるときは,別記事「モラハラを理由に面会交流を拒否できるか」も参考にして,準備してください。
(弁護士 木下貴子)
弁護士木下貴子が,このページ「離婚調停時の離婚理由の良い説明方法」をYouTubeでお伝えしています。
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