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面会交流調停で子どもの手続代理人制度を利用するか

最終更新日:2022年3月12日

お子さんとの面会交流をしたい父親が面会交流調停を自分で進める方法を,弁護士木下貴子(弁護士歴24年)が連載記事「弁護士木下貴子の面会交流調停徹底解説(父親向け)」でお伝えしています。

連載第6回は,子どもの手続代理人制度について解説します。
お子さんが小学校低学年以下の場合には利用できない制度ですので,読み飛ばしてください。

子どもの手続代理人とは

面会交流調停では,父親と母親が裁判所で話し合って,最終的に,面会交流をするかどうかと,面会交流の回数・方法を決めます。
子供は調停に参加しないのが通常ですが,子供にとって調停で決まったことの影響は大きいです。子供にとっては,自分が参加しない手続きで,父親に会えるかどうかが決められ,いつどのように会うのかも決められてしまうことになります。

そこで,平成25年施行の家事事件手続法では,次の2つの制度が設けられました。

  1. 子供が利害関係人として面会交流調停(審判)に参加できる制度
  2. 利害関係人として参加した子供に代理人弁護士を付ける制度

この2つの制度を使って,子供の代理人となった弁護士が,「子どもの手続代理人」です。

ただ,実際にはあまり利用されていない手続きです。

子どもの手続代理人の弁護士の立場

父親,母親,子どものそれぞれの手続代理人の説明

父親の代理人弁護士,母親の代理人弁護士とは別の弁護士が,子どもの手続代理人となり,父親や母親の味方ではなく,子供の利益のために行動します。

子供が複数いる場合,子供全員の代理人というわけではなく,依頼者となる特定の子供の代理人です。
調停・審判手続の代理人ですので,調停・審判手続が終了したときには,代理人としての業務が終了します。

子どもの手続代理人の弁護士がすること

子どもの手続代理人は,子供の利益の実現のために,次のような業務をします。

実情把握
子供からの聞き取り,両親からの聞き取り,調停の記録の閲覧をして,実情を把握します。
子供の意思形成支援

子供本人に情報提供をし,手続きの見込みを説明し,子供の相談にのって,子供の意思形成を援助します。
(弁護士は,公務員ではなく民間人ですので,決められた方法はありません。弁護士それぞれが適切な時間帯・方法を考えて対応します。同居家族の影響の少ない場所で子供に直接会って話をすることは不可欠でしょうが,それに加えて,電話・メール・LINEを用いるなど,弁護士それぞれが工夫します。)
調停期日参加

調停期日に出頭して,子供の意向を父母や裁判所に伝え,子供の意向に沿った形での面会交流が実現されるようにします。
その他
必要に応じ,家庭裁判所調査官の調査に立ち会うなどの援助もします。

何歳の子供が利用できるか

子供が利害関係人として参加するためには,それができるだけの能力「手続行為能力」が必要とされています。法律には年齢の明記はなく,裁判所の判断となります。
おおむね小学校高学年であればその能力が認められ,中学年でも認められることがあると言われています。

子どもの手続代理人制度が有用な場合

次のような場合に,子どもの手続代理人制度の利用が有用と言われています。

  • 家庭裁判所調査官による調査ができないとき
  • 子供の言動が場面によって異なるとき

日本弁護士連合会「子どもの手続代理人の役割と同制度の利用が有用な事案の類型」を参考にしました。)

そのような場面でなくても,次のような効果が期待できるでしょう。

  • 子供にとって,自分の気持ちも聞いて決めてほしいという手続き参加の要求が満たされる。
  • 父母の離婚紛争の中で不安を抱えた子供に,適切な情報提供がなされ,子供の心情の安定につながる。
  • 父母が対立しているときには,子供の代理人からの提案があった方が話がまとまりやすい。
  • 父親にも母親にも忖度しない子供の本当の希望を知ることにより,子供が喜ぶ面会交流の計画を作ることができ,面会交流が充実して長続きする。
  • 子供の気持ちを知ることで,適切な接し方ができるようになる。
  • 子供にとって,自分の意向を親が尊重してくれたという,親に対する信頼感が生まれる。

子どもの手続代理人制度を利用する方法

面会交流調停手続に利害関係人として参加するという仕組みですので,父親が面会交流調停の申立てをした後に利用できることになります。

子供自身が裁判所に申立てをすることもできますし,親が裁判所の職権発動を促すこともできます。
別居親である父親からは,子供に対して制度を教えるか,裁判所の職権発動を促すことになるでしょう。
ただし,裁判所の職権発動は,裁判所が「相当と認めるとき」しかできません。

具体的な手続きについては,父親の立場で,依頼している弁護士などに相談されると良いと思います。

どのように弁護士が選任され,弁護士費用はいくらで誰が負担するのか

選任される弁護士

子供自身が弁護士を選んで弁護士と契約する場合と,子供が契約することなく裁判所が弁護士を選任する場合があります。

裁判所が選任する場合

裁判所が決定する場合でも,候補者(子供が法律相談で出会って相談した弁護士など)がいる場合には,その候補者を裁判所が代理人と決定することがあります。

子供から相談を受けた弁護士を子どもの手続代理人に選任する

候補者がいないときや,裁判所が候補者以外から選ぶべきと判断したときには,裁判所がその地域の弁護士会に推薦を求め,弁護士会の推薦に従って選ばれることが多いです。

弁護士の推薦

弁護士費用の額と負担者

子供自身が弁護士と契約した場合

子供自身が契約する場合には,契約するときに,弁護士の報酬額も決めるということになります。子供が契約するのですから,子供が支払うという理屈になります。
子供自身に支払能力がなく(子供本人について,大人並みの月収や多額の資産がなければ当てはまります),弁護士が法テラスの契約弁護士であるときには,報酬額22万円で契約をして,その全額を日弁連のお金(寄附金や,全国の弁護士から集めた会費が財源です)で支払ってもらう制度(日弁連委託援助事業)を利用できることがあります。

子どもの手続代理人法テラス委託援助事業

裁判所が弁護士を選任した場合

裁判所が弁護士を決めた場合には,調停(審判)終了後に,弁護士が,裁判所に金額と負担者を決める申立てをし,裁判所が決めるという流れになることが通常です。裁判所は多くの場合,子供ではなく,父母に負担させることにし,金額と父母それぞれの負担割合を決めます。金額は裁判所が決めるものですが,父母間の負担割合については,調停成立のときに,父母が合意をすることもできます。

参考文献

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アドバイスを手に入れる

(弁護士 木下貴子)

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この記事を書いた弁護士

著者木下貴子

弁護士 木下貴子

多治見ききょう法律事務所所長

岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり25年目。
離婚事件を中心的に取り扱い,これまでに受けた離婚のご相談件数は1300件を超えます。ご相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーに対応しています。
離婚・夫婦に関する講演の講師も務めています。
著書の「離婚調停は話し方で変わる」(ききょう出版)はAmazonランキング法律部門第1位を獲得しました。

木下貴子の詳しいプロフィールはこちら

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