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最終更新日:2023年8月27日
お子さんとの面会交流をしたい父親が面会交流調停を自分で進める方法を,弁護士木下貴子(弁護士歴24年)が連載記事「弁護士木下貴子の面会交流調停徹底解説(父親向け)」でお伝えしていきます。
まずは,面会交流調停の流れのイメージをつかみ,何からどのように準備するかという準備手順を知ることで,不安をなくしましょう。
連載第1回「面会交流調停とは?ー面会交流調停の流れと準備手順」では,次の項目を解説します。
面会交流調停は,子供を養育・監護していない親(別居親,非監護親と言ったりします)が, 子供を養育・監護している親(同居親,監護親と言ったりします)との間で,子供と面会交流をするかどうか,面会交流をする場合の回数・日時・場所などの具体的な方法について家庭裁判所で話し合う手続きです。直接会う面会だけでなく,インターネットを利用したテレビ電話方式での面会,手紙,写真をやりとりするなどの間接的な交流(間接交流)の可能性・方法も含めて,話し合います。
離婚前の別居期間中に申立てをする場合と,離婚後に申立てをする場合があります。
面会交流を希望する別居親が申立てをすることが一般的です。面会交流をさせる側の同居親が,面会交流の方法について別居親と直接の話合いでは解決できないため,面会交流の方法を決めてもらうためなどに申立てをする場合もあります。
面会交流調停は,家庭裁判所の調停(家事調停)の中の「子の監護に関する処分調停」の一類型ということになっています。
岐阜家庭裁判所多治見支部の「家事調停のご案内」では,家庭裁判所の調停(家事調停)について,次のように説明されています。
家事調停とは,夫婦,親子,親族などの間のもめごとについて当事者が話し合い,合意によって紛争を解決する制度です。裁判官と調停委員で構成される調停委員会が主催します。
調停委員は,公平,中立な立場で双方からお聴きした事情等について,話合いを進めるために,双方に対し,必要な事項をお伝えしますので,相手の意見等を踏まえて,各自の意見を十分に検討していただくことが重要です。
家事調停は,訴訟のように公開の法廷ではなく,非公開の調停室で行いますから,調停室でのやり取りを正当な理由なく外部に伝えることは認められません。また,調停委員には守秘義務がありますから,当事者から聴いた内容について,話合いのために必要な事項を相手に伝える以外に,外部に公表することはありえません。
岐阜家庭裁判所多治見支部「家事調停のご案内」より引用
調停では,調停を申し立てた人のことを「申立人」,申し立てられた人のことを「相手方」といいます。
この連載では,母親と子供が同居していて,父親が面会交流調停を申し立てる場合の解説をしていきます。
面会交流調停は,調停を申し立てる側が,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てて,その裁判所で調停手続が開始されるのが原則です。
面会交流調停を申し立てると,調停期日が繰り返され,最終的に,調停成立・調停不成立(「不調」といいます)・取下げで終了になります。
調停不成立となったときには,自動的に審判の手続きに移行し,裁判官が,面会交流を認めるかどうか,どのように認めるかを「審判」の形で判断します(手続きも「審判(手続き)」,最終的な裁判官の判断も「審判」と言います)。審判の手続きに移行した後でも,裁判官の判断前に合意ができることがあり,そのときにはその合意内容での調停成立で終了となります。
調停の申立てがなされると,裁判所は,調停を行う日を決めて,申立人と相手方を呼び出します。申立てからだいたい1〜2ヶ月先の日が指定されます。
(年末年始,お盆といった裁判官が休暇を取る時期や,裁判官の転勤の時期にかかると,日数がかかります。)
面会交流調停は,裁判官(または「家事調停官」という非常勤裁判官)1名と調停委員2名の調停委員会が主催して行います。調停委員は男女1名ずつという運用です。
裁判官は,事前打合せをした上で,実際の調停の進行を2名の調停委員に任せています。
裁判官の人数は少なく,ずっと調停の席にいる時間的余裕もないので,調停が成立する場面,不成立で終わらせる場面といった手続の最終場面のほか,裁判官自ら調整する必要があるときにのみ,裁判官が現れることが多いです。
また,面会交流調停では,家庭裁判所調査官(調査官)が,裁判官から命じられて調査活動に関与することが多いです。調査官が,調停の席に立ち会うことも多いです。
詳しくは連載第12回「面会交流調停に関わる裁判所関係者-調停委員と調査官の役割」の記事で解説しています。
面会交流調停では,通常,父母が別々の控え室に待機し,調停委員が呼びに来て,交代で調停室に入って話をします。父母間の暴行のおそれがあるときは,父母を通常の控え室ではない別々の部屋(調停室)に待機させて,調停委員が移動するということがあります。
1回の調停の時間は概ね2時間です。ただ,長引くこともあり,特に午後には,午後1時30分ころ開始で午後5時すぎまでかかることもあります。
30分程度を目安に交代して調停室で話をし,これを2往復程度することが多いですが,話の内容などによっては片方の当事者に長く話を聞くこともあります。
調停は,1ヶ月半〜2ヶ月に1回程度のペースで手続きが進みます。
調停の日とは別に,調査官による調査(面接による主張整理,子の意向・心情・状況調査,試行的面会交流など)が行われることがあります。
こうした調査が挟まる場合には,調停の間隔が2〜3ヶ月になることも多いです。
裁判所は,面会交流を禁止・制限する事情の有無の見極めに1〜2回,その後面会交流を阻害している要因の把握に2〜3回,その後に3〜4回を使って面会交流方法の調整助言という進行を考えているようです。
審判で終わった場合も含めた統計上の平均審理期間は9.3ヶ月(令和元年)となっています(新型コロナの影響のある令和2年は10.3ヶ月)(最高裁判所事務総局「子の監護に関する処分事件の事件動向について」)。
早くても3〜4回程度(4〜6か月),標準的には5〜6回程度(8か月~1年)で面会交流の取り決めをする手続きと理解しておくと良いでしょう。
面会交流することと面会交流の方法に合意ができれば,調停委員会の3人,双方当事者,裁判所書記官が立ち会って(同席して),合意内容を確認します。暴行事件のおそれがあるときは,別のやりかたで合意内容の確認がなされることがあります。双方が,その内容で調停を成立させることに間違いないと確認して,調停成立です。
合意内容は,裁判所書記官が,調停調書という公文書に記載します。
この調停調書には,裁判所の判決に近い効力があります。調停調書で,同居親がなすべき内容が特定されている場合には,強制執行もできます。
「親に面会交流を求める請求権はない」というのが,裁判所の立場だとされています。別居親にあるのは,子の監護のために裁判所に適正な措置を求める権利だと考えられています。
面会交流調停を,「親だから子供に会う権利がある」,「会う権利があるから会わせて欲しい」と,自分の権利を主張して,自分の権利を実現する手続きだと考えていると,対策を誤ることになります。
自分と面会交流ができるようにするのが,子供にとって適正な措置であることを説明していくことが重要になります。
民法766条1項では,面会交流を定める場合について,「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と規定しています。
「子の利益」は,「子の最善の利益」「子の福祉」「子供の健全な成長」などとも言われますが,分かりやすい言葉で「子供の幸せ」と言い換えて考えれば良いと思います。
面会交流調停は,子供の幸せを考慮しないような両親の勝手な合意を許してくれる手続きではありません。相手の同意を得るだけでなく,裁判所に子の利益となることを説明し,理解してもらう必要があります。
面会交流調停の流れがイメージできましたか?
次に面会交流調停に向けて,あなたが準備すべきことを,もう少し具体的に確認しましょう。
面会交流調停の申立書の作成をするにあたり,予め次の項目については調査し,決めておかないと作成に支障が生じます。
そのため,次の項目について,予め調査し,方針を考えましょう。
面会交流調停申立書本体の書式は全国共通ですが,付属書類の書式が裁判所により異なります。
また,弁護士の事務所から裁判所への移動時間が長いほど,弁護士に依頼を受けてもらいにくくなり,依頼を受けてもらえる場合でも弁護士費用が高くなります。
そのため,まず,管轄裁判所を確認しておくことが必要になります。
連載第3回「面会交流調停の場所(裁判所)と日時」の記事も活用の上,確認してください。
離婚するときには子供の親権者を定めることになりますが,離婚していない別居中の夫婦では,妻と子供が同居しているけれども,父親である自分が子供を育てていきたいということがあります。
面会交流を超える結果をめざす場合には,対策が異なります。弁護士に依頼するときに,その方針での弁護士費用を合意して受任してもらう必要があります。
そのため,離婚に伴って,子供の引渡しや親権を求めるかどうかを,決めておくことが必要となります。
連載第4回「親権を取りたい父親が面会交流調停をするときの注意点」の記事も参考にして,検討してください。
弁護士に依頼をすれば,弁護士が,依頼者と打ち合わせた上で,面会交流調停申立書の作成・提出を行います。
そのため,弁護士に依頼するかどうかを早めに決めておくと,申立て準備の無駄を省くことができます。
連載第5回「面会交流調停を弁護士に依頼するメリットと弁護士費用」の記事も参考にして,検討してください。
弁護士に依頼するのであれば,弁護士に事情を聞き取ってもらって,申立書や付属書類を作成し,提出してもらうことができます。戸籍謄本などの書類も取り寄せてもらうことができます。
弁護士に依頼しないときには,自分で書式・必要資料を入手し,面会交流が円滑に進むような適切な記載をする必要があります。次の連載記事も活用の上,作成・提出してください。
面会交流調停は,希望が全て通るわけではありません。むしろ,全てが希望通りになるという場合の方が少ないでしょう。調停が決裂すれば,裁判官が審判で結論を出します。
希望通りにならないときに,面会交流調停を決裂させて審判で結論を出した方が良いのか,調停で合意した方がいいのかの判断基準を持って調停に臨むべきです。
(元)夫婦と子供のことを何も知らない調停委員に間に入ってもらい,調整してもらうわけですから,最低限,調停委員の質問にスムーズに答えられるよう準備しておく必要があります。
調停委員に味方になってもらおうと思えば,その場で思いついたことを答えるのではなく,予め,調停委員を味方に付けられる話ができるよう,話す内容・話し方・順序を検討しておく必要があります。
第1回調停期日前に裁判所から「親ガイダンス」の受講を促されることがあります。(親ガイダンスは,実施している裁判所と実施していない裁判所がありますし,第1回調停期日の日に受講することになっている裁判所もあります。)
基本的には受講をした方が良いプログラムですから,日程を調整してできるだけ早く受講しましょう。
裁判所ウェブサイトにあるビデオ「離婚をめぐる争いから子どもを守るために」「子どものための面会交流に向けて」と「子どもにとって望ましい話し合いとなるために」は,比較的短時間の動画で,子供にとって安心できる面会交流の話合いや実施上の注意点,年齢毎の子供への対応の注意事項が分かりやすく説明されています。
面会交流で「子の利益」に反する対応をしてしまって,面会交流継続が困難となったり,制限されたりする結果とならないよう,予めこれらのビデオを観てから面会交流調停に参加するのが望ましいと思います。
必要な持ち物を忘れたり,服装で損をしたりすることのないよう,準備をしておく必要があります。
第1回面会交流調停期日の準備には,次の連載記事も参考にしてください。
岐阜家庭裁判所多治見支部の説明にもあるように,調停では,「相手の意見等を踏まえて,各自の意見を十分に検討」することが大切です。
面会交流調停では,子供の状況,調査官調査の結果も踏まえる必要があります。
次の調停期日に向けて,相手の意見,子供の状況,調査官調査の結果も踏まえ,調停委員に味方になってもらう説明方法・話し方を考えておく必要があります。
次の連載記事も参考にしてください。
争点によっては,整理して書面にまとめることが必要になります。目的意識を持って,必要な事実を書き漏らさないよう記載しましょう。
調査官調査が行われるときには,その準備も必要となります。弁護士に依頼をしているときでも,調査官調査には弁護士が立ち会わない(立ち会えない)ことがありますので,話し方などの準備が必要です。調査官調査の前には,子の監護状況に関する陳述書の作成と提出を求められることが一般的であり,その作成も必要となります。
次の連載記事も参考にしてください。
調停の最終段階になると,「調停を不成立にする」という選択肢もあります。審判手続きやその後のことを理解していないと,不成立にしたことを後悔することになります。
面会交流調停が不成立になった場合にどうなるのか,把握することも重要です。
次の連載記事も参考にしてください。
調停を成立させるときには,合意の内容を調停調書に調停条項として記載してもらうことになります。
自分・相手・子供の状況を踏まえて,円滑に充実した面会交流が続くようにするため,方法を具体的に定めることのメリット・デメリットを知っておく必要があります。また,見落としにも注意する必要があります。
次の連載記事も参考にしてください。
調停が不成立になった後に移行する面会交流審判手続は,調停手続とは異なり,裁判官が,面会交流を認めるか認めないか,認めるときにはその回数・方法等について,判断を下す手続となります。あなたの主張は,書面に書いて,期日前に提出する必要があります。
面会交流を認めないという裁判官の判断が予測されるときや,調停を経ても(元)妻が強く面会交流を拒否しているときには,裁判官に判断をしてもらうより,取下げをして終わらせる方が適切な場合があります。そのようなときには,取下書の提出の要否を検討する必要があります。
次の連載記事も参考にしてください。
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(弁護士 木下貴子)
この連載では,面会交流調停の全体について24回の連載で詳しく解説しています。
連載第2回以降も参考にしてください。