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最終更新日:2022年7月2日
お子さんとの面会交流をしたい父親が面会交流調停を自分で進める方法を,弁護士木下貴子(弁護士歴24年)が連載記事「弁護士木下貴子の面会交流調停徹底解説(父親向け)」でお伝えしています。
連載第15回は,面会交流調停で(元)妻に子供との面会交流を拒否されているときの対策について解説します。
裁判所では,面会交流がうまく行われていると,どちらの親からも愛されているという安心感を得ることができるとしており,その限りで面会交流の実施が子供にとって有益であるとの考えから,面会交流を推進しています。
面会交流調停では,裁判官,調停委員,調査官も,面会交流が実施できるよう,できるだけの調整をしてくれます。
これらの人々は,多くの家族の面会交流紛争に向き合い,対処してきた経験がありますし,研鑽も積んでいます。あなたが自己流の方法で面会交流実現をめざすよりも,裁判官,調停委員,調査官の知識・能力・経験で,面会交流実現へと導いてもらうのが,成功確率が高いはずです。
裁判所の手順にはスピードが遅いなどの問題もありますが,基本的には,裁判官,調停委員,調査官が,面会交流実現に向けて何をしてくれているのかを理解するようにし,力を借りる方が良いでしょう。
当事者であるあなたができること・すべきこともありますので,あなたの取り組みは必要です。
調査官が(元)妻の不安をなくそうと調整してくれているのに,あなたが不安を与える言い方をするなど,裁判官,調停委員,調査官の行動の効果を,横からつぶすようなことはやめましょう。
連載第1回でも記載しましたが,「親に面会交流を求める請求権はない」というのが裁判所の立場だとされています。裁判官,調停委員,調査官は,子供の利益のために面会交流の実施を推進しているのであって,あなたの権利を実現しようと協力するのではありません。裁判所の立場と違う「親だから子供に会う権利がある」などの考えに基づいて面会交流実現をめざすと,協力関係が築きにくくなります。
あなたご自身がする対策は,(元)妻の態度に対応した適切なものである必要があります。まずは,(元)妻の態度を正しく把握しましょう。
面会交流の拒否にも種類があり,面会交流を拒否する(元)妻の意見は大きく4つに分かれます。
最近では少なくなりましたが,一般論に反対する人もいます。
調停委員は,面会交流が子供にとって有益であって,面会交流を実施すべきことをわかっているわけで,(元)妻にも理解をしてもらおうと説得活動をします。
しかし,調停委員も,(元)妻に不信感をもたれては調停を進められませんし,調停委員の公平中立の立場上,(元)妻の意見をあなたに伝えないままにするということができません。
そのため,調停委員から,(元)妻の「面会交流を実施する必要がない・意味がないから実施しない」との意見を伝えられどうするかを尋ねられることがあります。このとき,あなたは,面会交流の有益性を既に知っている調停委員に対して,知ってもらう努力をする必要はありません。しかし,調停委員に,あなたの話を(元)妻に伝えて,(元)妻を説得するという手順を取ってもらうため,あなたから面会交流が子供にとって有益であると考える理由を話す必要はあります。
(元)妻の「面会交流を実施しない」という希望をあなたに伝え,あなたがその希望に応じられないという回答をするというのは,調停手続上避けられない手順ですから,(元)妻の希望を伝えてきた調停委員の行為を批判してはいけません。(元)妻の考え方が裁判所の方針と違っていて,調停委員も困っているはずです。(元)妻に面会交流の有益性を理解してもらう方法を,調停委員と一緒に考えるようにするのが良いでしょう。
もっとも,(元)妻の意見の間違いを(元)妻に認めさせればすぐに面会交流ができるということにもなりません。なぜ一般論に反対するという態度になっているのか,その理由を見極めて,面会交流実現に向けた次の対策を進めることも必要となります。
「(元)夫が子供を○○して虐待していたので,会わせると子供が危険である」などです。
裁判所は,このようなことを言われると,リスクを把握せずに面会交流実施を推し進めるわけにはいきません。
そこで,あなたは,面会交流実施が子供に身体的にも精神的にも有害でないことを説明する必要が生じます。主に次の説明をすることになります。
精神的にも有害でないことの説得的な説明もできるとよいのですが,なかなか難しく,あなたと子供の具体的関係をふまえて何とか説明するしかありません。
また,この連載の前回にも説明しましたが(元)妻の視点をふまえて話をすることも必要です。大切な子供を傷つけられたことや家庭を壊されたことによる(元)妻の怒り・悲しみ,現在の単独子育ての苦労への配慮もなく,「○○という方法で面会交流をすれば危険がないから面会交流させるべき」とだけ言っているようでは,合意が得られにくくなります。
(元)妻の虚言であることは少なく,実際に,子供が,(元)妻の前では,「お父さんに会いたくない」「お父さんに会うのは嫌」「お父さん嫌い」などと言っている事実があることが多いです。
このときに,「(元)妻が子供に言わせているだけで,本当は私に会いたいはず」など,本心なのか本心でないのか,言わせているのかそうでないのかということを直接議論しても,解決につながりにくいです。
子供が,面会交流自体に危険を感じているわけでもないのに,父親に会いたくない,会うのは嫌だと言っている状態は,「お母さんが嫌がっているなら,お父さんに会いたくない」「お母さんの前でお父さんに会いたいなんて言えない」「お父さんは怒ってばかりだから会いたくない」「お父さんは遊んでくれず楽しくないから会いたくない」などのどの理由であったとしても,子供にとって不幸な状態です。
この状態で必要なことは,子供が面会交流を拒否している原因を解明し,原因を取り除くことであり,裁判所もそう考えることが多いです。
そのため,あなたも,原因を解明し除去していくべきという観点から次のような説明をする必要があります。
「面会交流実施時に自分が(元)夫から暴力を受けるおそれがある」「DV被害から回復できていないので自分が面会交流の調整・実施のために(元)夫と接することが有害である」「遠いから難しい」「再婚したので難しい」などです。
別居親(あなた)側が悪いのか,どの程度悪いのかという問題ではなく,現時点で存在している支障を解消できないと,面会交流が実施できないという問題です。
あなたは,その観点で対応する必要があります。
「家庭を壊しておいて面会交流を要求してくるなんて都合が良すぎる」などです。
審判になれば,面会交流が認められる(拒否できない)結果となることが多いです。
裁判所は,(元)妻に対し面会交流を拒否する理由にならないことを説明して説得するだけでなく,(元)妻の拒否する感情を軽減できるよう調整することが多いです。
あなたには,親同士の問題と親子の問題は別であるから,(元)妻が我慢して(自分で解決して)面会交流実施に協力すべきであるという態度を取り続けるという選択もありえます。ただ,(元)妻が面会交流を拒否したい気持ちになっていることにあなたの責任があるのであれば,あなたの態度に裁判官・調停委員の共感が得られにくく,調停を打ち切って審判に進めてもらうまでに時間がかかることを覚悟する必要があります。
裁判所任せにせずに,あなた自身も,(元)妻が面会交流に前向きになれるよう,(元)妻の怒り・悲しみ・不信の軽減に向けた努力をするという選択もあります。その努力によって,早く円滑な面会交流が実現できるようになる可能性があります。
もっとも,その方針で進もうとしても,男性側がそもそも(元)妻の怒り・悲しみ・不信の程度・原因を正確に理解できていないことも多いです。調停委員の協力を得て聞き出し,真摯に受け止めることが必要となります。
また,(元)妻の気持ちは理解しても,面会交流不実施の希望を受け入れるわけにはいかないという態度を示すことになりますので,話し方にも工夫が必要になります。
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(弁護士 木下貴子)