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最終更新日:2022年2月19日
お子さんとの面会交流をしたい父親が面会交流調停を自分で進める方法を,弁護士木下貴子(弁護士歴24年)が連載記事「弁護士木下貴子の面会交流調停徹底解説(父親向け)」でお伝えしていきます。
連載第4回は,別居中の夫婦で,子供と別居状態になっている父親が,子供との面会を求めたい,親権も取りたいと考えているときの注意点について解説します。
親権取得をめざしていない方,離婚後の方は,読み飛ばしてください。
子供の親権者を決めるときには,「子供の環境を変えるよりは,変えない方が望ましい」という考慮も働き,長期間継続している環境であるほど考慮されることになります。離婚時まで別居状態が続くと,親権争いは不利になっていきます。
別居中に面会交流の調停で合意するということは,通常,母親と子供が同居を続け,父親が別居している現状を変えないことの合意(監護者を母親とすることの合意)を含みます。調停で合意する条項は,例えば,次のようなものとなります。
1 申立人と相手方は,離婚または別居解消に至るまで,当事者間の長女○○(平成○年○月○日生。以下「長女」という。)の監護者を,母である相手方と定める。
2 相手方は,申立人に対し,以下のとおり,申立人と長女が面会交流することを認める。
(1)……
(2)……
裁判所の手続きとして,子供の引渡しを求める手続きがありますが,夫婦の合意により子供が妻(母親)と同居している場合には,合意がないときよりも,子供の引渡しが認められにくくなります。
さらに,裁判所という場所で,上に記載したような明確な合意をしているとなれば,変更を認めてもらうのはとても難しくなります。
そのため,面会交流調停での合意は,離婚前に子供を自分と同居させることにより親権争いを有利にするという手段を取りにくくしてしまうことになるので,注意が必要になります。
夫婦間で争いがあっても,子供にとって望ましいのは,別居親である父親からも愛されていることを感じてもらうために面会交流を実施して交流を続け,離婚時において,子供の親権者として適切な方を親権者とする(裁判所に,適切な方を親権者として決めてもらう)ということになります。
母親としての正しい姿は,親権の争いの有無に関係なく,子供の利益のためになるのであれば,離婚前であっても,父親との面会交流をさせることです。
しかし,全ての母親が,理想通りの行動ができるわけではありません。
母親の中には,「子供を奪われたくない」という感情がとても強く,
という心配をして,面会交流を強く拒否する方もいます。
「フレンドリーペアレントルール」といって,他方の親との関係に寛容な親の方を親権者として適格とすべきという考え方があり,外国ではこの点を大きく考慮して親権者(監護者)の決定をしているところもあるのですが,日本では,考慮すべき事情の1つとする程度となっています。そのため,なかなか,これが,面会交流をさせようという動機付けにはなりません。
(なお,フレンドリーペアレントルールにも問題があるとして,オーストラリアなどでは見直しがなされています。このルールを用いると,親権(監護権)獲得に不利になることをおそれて,(元)配偶者からの暴力や虐待について訴えを起こすのを躊躇せざるをえなくなる,子の利益や心身の安全上の懸念があっても無理に面会交流を実施させることになりやすいという問題が指摘されています。)
面会交流の実施には,父母の協力が不可欠です。
父親が親権を取得しようとするときには,自分が親権者にふさわしいことを主張することになります。そのとき,母親が父親よりも劣っている点や,母親が親権者としてふさわしくないといえる事情を見つけ,主張することも必要となります。
しかし,自分を批判するような人に協力しようという気持ちにはなりにくいものです。
そのため,親権争いをしていると,次のような影響が生じやすいです。
面会交流が難しくなるだけでなく,子供に,両親の争いに巻き込まれて傷つき,気を遣わなければならない不幸な状況をもたらすことになりやすいのです。
最終的に親権を取得できなかったときには,親権も取得できない,面会交流もうまくいかない,子供を長期間争いに巻き込んで苦しめるという結果となります。
裁判所は,父親に問題がなければ,面会交流を実施するよう母親を説得してくれるのが通常です。また,最近では,裁判所も,「親ガイダンス」で,同居親に対し,子供への適切な接し方を教えることもしています。
しかし,理屈通りの行動ができる人ばかりではないうえ,理屈で感情を制御し,子供に対して平静を装い続けるというのは,誰でもできるような容易なことではありません。
別居親である父親としては,自分の態度は変えられても,相手の態度は変えるのは難しいという前提に立ち,現実をふまえて,どのような行動をするのか決断する必要が生じてきます。
親権取得と面会交流の両方をめざしたいと考えている父親が決断すべきは次の2項目です。
面会交流が円滑に進むことをめざして,親権の主張を取りやめるかどうかを決めることになります。親権を主張し続けることにデメリットもあることを理解した上,後悔のないよう,決断してください。
離婚成立前の子供の引渡しをめざす場合には,面会交流調停をせずに,「子の監護者指定」と「子の引渡し」の審判手続きを行うことになります。簡単に認められるわけではなく,紛争を大きくして母親の面会交流への拒否態度が強化されてしまう可能性がありますので,デメリットも意識して,決断する必要があります。
選択肢は,次のとおりとなります。
面会交流調停での合意は,離婚前の子供の引渡しが認められにくくなるというデメリットはありますが,離婚前の子供の引渡しをめざさない場合や,子供の引渡しの手続きをしても認められないような場合には,このデメリットを回避する必要がありません。
親権争いが続いて,調停で解決せず,裁判に進んだようなときには,解決まで1年以上かかることも多いものです。裁判官が,その間子供との面会すらしていない父親を親権者に定めて,子供を引き取らせるという判断をする可能性は低いです。
親権取得の可能性を少しでも高めるためには,面会交流を実施して子供との関係を維持・構築する方が良く,そのために面会交流調停を行うことも必要となります。
また,子供の立場からも,父親と長い間会えないのは不幸なことです。
面会交流調停も取りやめるという選択は,不適切ということになります。
親権や,子供の引渡しが認められる可能性の程度について,弁護士に相談した上で,決断するのも大事でしょう。
弁護士に面会交流調停を依頼する場合には,決断したご自身の方針を伝えて,理解してもらい,その方針で手続きを進めてくれる弁護士に依頼をしましょう。
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(弁護士 木下貴子)