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面会交流調停における家庭裁判所調査官の調査とその対策

最終更新日:2022年7月30日

お子さんとの面会交流をしたい父親が面会交流調停を自分で進める方法を,弁護士木下貴子(弁護士歴24年)が連載記事「弁護士木下貴子の面会交流調停徹底解説(父親向け)」でお伝えしています。

面会交流調停では,家庭裁判所調査官が,面会交流調停期日の立会い,主張整理,子の監護状況調査,子の意向・心情調査,試行的面会交流などで関与することがあります。
試行的面会交流については次回の記事で解説していますので,今回は,試行的面会交流以外の家庭裁判所調査官の関与について解説します。

家庭裁判所調査官の関与の種類

面会交流調停期日の立会い

調停室で話をする

裁判官の期日立会い命令により,調査官が,面会交流調停期日に立ち会います。

調査官は,専門的見地から,調整的役割を果たします。具体的には,面会交流の調整のために必要な質問をしたり,提案をしたりすることがあります。

政府インターネットテレビの動画「徳光・木佐の知りたいニッポン!〜気持ちに寄り添う 家庭裁判所調査官」の開始13分45秒のところからの調査官が離婚調停に立ち会っている様子の映像を見るとイメージできるでしょう。

調査官は,調査報告書を作らず,裁判官や調停委員との間では,話合い(評議)で意見を伝えたり,「調停の進行に関する意見メモ」を作成したりすることにより,情報共有がなされます。
調停の当事者は,この意見メモを見せてもらうことができません。代理人弁護士も見せてもらえません。

主張整理

裁判官の「主張整理」の調査命令により,調査官が,調停の当事者である申立人・相手方それぞれと面談して,主張を整理して明確にします。

調査官は,結果を調査報告書としてまとめます。調停の当事者は,調査報告書を閲覧・謄写することができます。

調査官は,主張を整理して明確化するだけでなく,当事者の不満や不安を受け止めて感情の沈静化を図る,子供の利益の観点から紛争の解決を考えられるよう過去の出来事,(元)夫婦の関係性,親子の関係性を子供の視点(子供がどのように受け止め,子供がどのような心情であったか)から振り返らせるということもします。

子の監護状況調査

裁判官の「子の監護状況調査」の調査命令により,調査官が,子供の生活状況,健康状態,発育状況などの調査をします。面会交流調停ではこの調査の実施自体が少ないです(離婚調停で親権争いがあるときに実施されることの多い調査です。)。面会交流調停では,面会交流の実施のために把握しておくべき子の監護状況に関する事情の調査が行われます。

調査官が,必要な範囲で,申立人・相手方から事情聴取をします。また,家庭訪問,保育所・学校・医療機関等への調査をすることもあります。「子の監護状況」の調査ですから,子供を監護していない別居親には,協力・関与できることが少ないです。
別居親の方の中には,子供が劣悪な環境に置かれていることを調べてもらいたいという希望をされる方がいらっしゃいます。調査結果として,子供の養育環境が分かることはありますが,そのような目的のために子の監護状況調査を実施してもらうことは期待できません。別居親との面会交流を,劣悪な生活をしている子供にひとときの安らぎを与える目的で実施するものとは考えていないからでしょう。

調査官は,結果を調査報告書にまとめます。調停の当事者は,調査報告書を閲覧・謄写することができます。

子の意向・心情調査

裁判官の「子の意向調査」「子の心情調査」の調査命令により,調査官が,面会交流に関する子供の意向や心情の調査をします。子供が10歳未満のときは「心情調査」,10歳以上では「意向調査」とされることが多いと言われています。「意向調査」であっても,調査官は,子供の発言を言葉どおりに採用するのではなく,発言の背景にある心情も調査します。そのような心情になっている背景事情も調査します。

この調査は,面会交流の実施の可否や実施にあたっての留意点(どのような配慮が必要か)を把握する目的で行われます。
別居親の方の中には,自分の疑問を子供に尋ねてもらって,同居親の養育を非難したいと考えている方がいますが,そのような目的で実施されるものではありません。

調査官は,通常,子供と会う前に,当事者である申立人・相手方との面談により,子供に関する情報(発達状況,生活状況,性格など),これまでの親子関係の情報の収集をします。同居親との面談は,調査官による子供との面談実施の事前調整の目的もあります。別居親との面談が実施されないこともあるようです。
当事者との面談で,調査官は,主張整理の場合と同様に,子供の利益の観点から紛争の解決を考えられるよう,過去の出来事等を子供の視点から振り返らせるということをすることがあります。

調査官による子供との面談は,家庭訪問で行われることもあれば,同居親に子供を裁判所に連れてきてもらって行われることもあります。調査官は,できるだけ同居親の影響を受けない方法を選ぼうとします。調査官は,通常,面会交流の実現を目指す方向性で子供と面談し,面会交流の実施が可能になる方向の発言はしますが,難しくする方向の発言を避けます。

調査官は,結果を調査報告書にまとめます。調停の当事者は,調査報告書を閲覧・謄写することができます。

政府インターネットテレビの動画「徳光・木佐の知りたいニッポン!〜気持ちに寄り添う 家庭裁判所調査官」の開始14分40秒のところから家庭裁判所庁舎で行う子の調査の解説があります。

別居親の対策

調停期日では,調査官が立ち会ったとしても助言的立場であり,当事者は主に調停委員と話をすることになります。その対策は,連載第14回「面会交流調停で話をするときに意識しておきたい3つのこと」をご確認ください。

調停期日外の調査官面談には次の2種類がありうることになります。

  • 主張整理
  • 子の意向・心情調査

実施目的と調査協力の必要性を理解する

調査官との面談前に,まずは,何が行われているのかを,正しく理解しましょう。

主張整理の実施目的

主張整理の調査の対象者は親です。

調査官が別居親に面談する目的
主張の整理と明確化
子供の利益の観点から紛争の解決を考えられるようにするためのカウンセリング
調査報告書の内容と作成目的
同居親と別居親の主張がまとめられます。調停委員会がその後の調停の進め方を考えるため,当事者に状況を理解させるために作成されます。

子の意向・心情調査の実施目的

子の意向・身上調査の調査の対象者は子供です。

調査官が別居親に面談する目的
背景事情と,子供の意向・心情判断に役立つ事実の把握
子供の利益の観点から紛争の解決を考えられるようにするためのカウンセリング
調査報告書の内容と作成目的
子供の意向・心情とその原因となっている事実がまとめられます。面会交流の実施の適否や留意点の判断のため,当事者に子供の意向・心情を理解させるため,調停委員会がその後の調停の進め方を考えるために作成されます。

調査協力の必要性

あなたと子供と面会ができない状態が続いているときには,調査官が,あなたよりも先に子供に会って話をすることになります。面会交流実現に向けて子供にうまく働きかけてもらいたいならば,あなたも調査官にできる限りの協力をする必要があるでしょう。
また,合意ができずに審判になったときの裁判官の判断は,調査官の意見どおりになることが大半です。そして,調停中にあなたが調査官に対して示した態度は,最終的な調査官の意見に影響します。あなたが調査官の調査に協力しないということは,あなたに子供の利益を考えようとする姿勢が足りず,面会交流実施は時期尚早という意見につながりやすい事情となります。

正しく役立つ調査結果を得るための説明をする

調査官は,行動科学の知識や技法を学んでいる専門職ですが,人間ですし,調査に費やせる時間の限界もありますから,判断の誤りは生じえます。不正確な情報の混在や情報不足にがあれば,判断の誤りが生じやすくなります。
間違った調査結果によって,面会交流を禁止・制限する方向に調停が進められたり,調停の進行が停滞・混乱したりするのでは困ります。そうならないよう,あなたは,必要十分で正確な情報を提供するような説明をする必要があります。

主張整理で説明すべきこと

調停の早い段階で行われる主張整理では,子供の安全,同居親の心身の不調の有無,その経緯が強い関心事となります。
特に,面会交流時の子供の安全が疑問視されているときに,あなたが危険性がないと考えているのであれば,その根拠となる事実を適切に説明する必要があります。

子の意向・心情調査で説明すべきこと

子の意向・心情調査では,これまでの親子関係,子供の性格・行動傾向・発達状況が関心事となります。具体的なエピソードを伴う話の方が,正しく伝わりやすいです。
また,調査官に,子供に対して「○○に行ったのを覚えてる?」「お父さんと○○してたのかな?」などと,楽しかったエピソードを聞き出す材料を持っておいてもらうためにも,具体的な話を伝えておくことが大事です。
子供が両親の紛争をどう理解しているのかも大事な事情です。夫婦の紛争の経過,子供が何を見たか,夫婦の紛争を子供に対してどのように説明したか,そのとき子供がどのような反応を示したかについても,説明できるようにしておきましょう。
子の意向・心情調査の結果で面会交流の可否が全て決まるわけではありません。子供が別居親に会いたいという心情はそのまま尊重されますが,会いたくないという心情は,根拠のある強い拒否でない限り,どうすれば会っても良いという気持ちになるかの検討対象とされるというのが実情です。そのため,「会いたくない」という結果になっても,適切な対策を立てることができる結果を得ることが必要となってきます。同居していたときから子供との関係がぎくしゃくしていたのに,仲が良かったかのような嘘をつくと,調査官に考えてもらった対策も,前提が間違っているので有効でないということになってしまう可能性があります。

カウンセリングの効果を高めるための行動をする

面談のときには,調査官の質問について,謙虚に,広い視野でよく考えましょう。
調査官の意図に沿って努力する態度は,面会交流を実施させてもよい親と見てもらえることにもつながります。

調査報告書を有効活用する

調査報告書(調査報告書の様式(PDF))の宛名は裁判官になっていますが,調査報告書は,調停の当事者のためにも作成されているものです。必ず読んでください。

調査報告書が出来上がったら,謄写手続をして(弁護士に依頼をしている場合には,謄写手続をしてもらって)手に入れ,熟読してから,次の調停期日に出席しましょう。
また,調査報告書で提供された情報をふまえて,あなたが何をすれば面会交流が実施できるようになるか,あなたが何をすれば面会交流が子供にとって有益なものになるかを考え,実行しましょう。

参考文献

  • 小泉道子『元家裁調査官が提案する 面会交流はこう交渉する』(民事法研究会,2017年)
  • 津山明博ほか「面会交流調停事件における効果的な家裁調査官関与の在り方について」家裁調査官研究紀要第26号32頁
  • 小澤真嗣ほか「子の利益に資する面会交流に向けた調査実務の研究」家裁調査官研究紀要第27号1頁
  • 市村ちぐさほか「子の意思把握の調査に関する先行研究の実践的検証」家裁調査官研究紀要第28号1頁
  • 片岡武ほか『実践調停 面会交流』(日本加除出版,2018年)

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(弁護士 木下貴子)

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この記事を書いた弁護士

著者木下貴子

弁護士 木下貴子

多治見ききょう法律事務所所長

岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり25年目。
離婚事件を中心的に取り扱い,これまでに受けた離婚のご相談件数は1000件を超えます。ご相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーに対応しています。
離婚・夫婦に関する講演の講師も務めています。
著書の「離婚調停は話し方で変わる」(ききょう出版)はAmazonランキング法律部門第1位を獲得しました。

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