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最終更新日:2022年11月19日
お子さんとの面会交流をしたい父親が面会交流調停を自分で進める方法を,弁護士木下貴子(弁護士歴25年)が連載記事「弁護士木下貴子の面会交流調停徹底解説(父親向け)」でお伝えしています。
面会交流調停の調停成立時には調停条項を定めることになります。
せっかく面会交流調停で調停条項を定めて合意ができても,そのとおりに面会交流を実施できないことがあります。また,面会交流が子供に負担となって,父子関係が悪化していくこともあります。
条項をどこまで追い求めるべきか判断ができるようにするため,調停条項の限界を知っておきましょう。
あなたと(元)妻が合意しても,子供が承諾・納得したことにはなりません。
子供の意思に関係なく,あなたと(元)妻の間で,面会交流の頻度・方法などを合意することができてしまいます。そのため,面会交流調停の手順や合意内容が,子供の心情・意向への配慮を欠くものになることがあります。子供をつらい気持ちにさせる場合もあります。
調停条項そのものには,子供の気持ちを面会交流に積極的な気持ちに変える効果はありません。
面会交流調停では,調停の成立までの間に,面会交流を難しくしている事情(阻害要因)を見つけ,その対策を考え実行して,軽減・解消していきます。
しかし,調停手続の成り行きにより,阻害要因の発見・軽減が不十分なまま調停成立に至り,阻害要因が残ったままになることがあります。
面会交流を実施できる程度にまで軽減していた阻害要因が調停成立後に再度強まること,調停成立後に新たな事情が阻害要因として発生することがあります。
調停後,子供の成長に伴い,子供にとって適切な面会交流の頻度・方法は変化していきます。
そうなると,調停で合意した面会交流が,子供の利益に合致しないものになっていくことがあります。
調停が終了すると,家庭裁判所調査官や調停委員の関与がなくなります。
弁護士に面会交流事件を依頼していた場合,通常は,調停成立で弁護士業務終了となります。
このようにして,仲介者・援助者がいなくなり,あなたの側にも,(元)妻の側にも,冷静な立場でなだめてくれる人,いさめてくれる人がいなくなります。(元)妻があなたに対して配慮不足の言動をしたり,あなたが(元)妻に対して配慮不足の言動をしたりすると,エスカレートしていきやすく,そうなると,子供にとっても,面会交流時やその前後に父母の対立を見せられることが苦痛となります。
この事態は,調停条項によって予防することが難しいものです。
面会交流の実施を難しくする事情(阻害要因)が生じたとき,阻害要因を取り除く努力をしたり,子供の利益に合致した形に面会交流の方法を見直すのであれば良いのですが,調停が成立すると,調停での合意内容に従わなければならない,従わせようという判断で行動する方が多いです。阻害要因への配慮・対策のないまま,子供,別居親,同居親のうちの誰かが苦しむ面会交流が無理に継続されることがあります。
調停条項どおりの面会交流を続けることが子供や(元)妻にとって苦痛となったとき,次の可能性が想定できます。
子供にとって,同居親である(元)妻が,悩み,塞ぎ込んでいるようでは,安心して生活できません。あなたに対する怒りを抑えきれない態度を見せられるときも同様です。
(元)妻の就労が難しくなって収入が減る,(元)妻の家事育児のレベルが低下するといったことになれば,子供の生活環境が悪化し,健全な成長の妨げになります。
子供が成長し,中学生ぐらいなったとき,子供があなたと会いたくないと言うようになれば,会えず,話をしたくないと言うようになれば,話もできなくなります。子供の態度が,そのまま一生続くこともあります。
面会交流の無理な実施が子供に苦痛となって,親子関係の断絶を招いてしまう失敗事例は,少なくありません。
調停条項どおりの面会交流ができないとき,(元)妻から,調停条項の変更を求めて再度の面会交流調停を申し立てることが可能です。
また,あなたも,(元)妻から面会交流を拒否されたときに,再度の面会交流調停を申し立てることが可能です。
そのときには,当初の面会交流調停で約束された調停条項が守れるような環境調整をするだけではなく,再度,その時点の「子の利益」を最も優先して考慮し,面会交流調停の可否・頻度・方法等の調整が行われます。そのとき,調停条項を守ってもらえなかったことを強く言いたいとしても,調停条項を守った親にボーナスが与えられたり,違反した親にペナルティを課したりする手続にはなっていません。
当初の面会交流調停で,面会交流の頻度・時間の多い調停を成立させることができても,実施が難しい事情が発生したときには,再度の調停の費用・手間の負担が生じた上で変更されることもあるということになります。
調停条項で,面会交流の実施内容が具体的に特定されているにもかかわらず,(元)妻が面会交流実施を拒否するときには,間接強制の強制執行の手段を取れる場合があります。
(元)妻が子供を調停条項どおり会わせないときに制裁金をあなたに支払うよう命じてもらうものです。1回会わせないと5万円の制裁金というようなものになり,このプレッシャーで面会交流を実施させることになります。
そのような調停条項を定めることによって,(元)妻の不当な拒否を防ぎやすくすることができます。
調停条項の定め方により,間接強制の可否が決まります。詳しくは別記事「面会交流の間接強制」を参考にしてください。
別居親の(元)妻に対する言動,子供に対する言動,面会交流時の失敗が面会交流を難しくしていることもよくあるのですが,強制力という手段を持つと,こうした阻害要因を軽減・除去する努力が不十分なまま,強制力をふりかざそうとしがちです。
また,面会交流の方法が子供の利益に反していても,約束どおりに硬直的に面会交流を強行しようとすることになりがちです。
(元)妻が,間接強制を怖れて,嫌がる子供を無理に言い聞かせて面会交流に送り出す状況が続くこともあります。(元)妻があなたに相談ができる状況にないと,あなたがその事情を知らないままということもあります。
あなたが間接強制の手続を用いたときに,子供が,あなたをどのように捉えるかも想定しておく必要があります。子供は,「僕(私)のために面会交流を実現しようと頑張ってくれている良いお父さん」と考えず,「お母さんを苦しめ,制裁金で私たちの生活費も奪うひどい父親」と考えることが多いようです。
無理な面会交流が続くことになれば,「無理に調停条項に従い続けたときに生じうる悪影響」に記載した影響も生じえます。
このように面会交流調停の調停条項は,限界やリスクがあります。調停条項が,あなたの希望に近づくほど良い,強制力が強い方が良いというものでもありません。
調停条項が持つリスクも理解して,あなたと(元)妻と子供の状況に適切な調停条項を考えるようにすると良いでしょう。
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(弁護士 木下貴子)